【完結】家族になろうよ 〜パパが『恋』をしてもいいですか?〜

Kanade

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35. 貴方が好きです


 〈 玲視点 〉

「俺は貴方が好きです。でも俺は、奏音が巣立つまでは恋はしないと…父親パパで在り続けると…奏音の事を一番に想うと、そう決意したんです。
  決意…したのに……。…止められないんです。貴方を好きになる気持ちが止まらない…。会う度にどんどん好きになる…。もう手遅れだった…。あの日、一方的に貴方に決別宣言したのに、もう…手遅れ…」

  俺は俯いていた顔を上げると、掴みかからんばかりの勢いで、暁登さんの胸を拳で叩く。泣きながら…。
  何度も胸を叩く俺を、暁登さんは止めない。

「…っ! どうしてくれるんですかっ! 貴方の事をこんなに好きにさせてっ! せっかく離れたのに忘れられないっ! 貴方を想うと胸が苦しい…。
  ねえ、俺は貴方の思惑通りになったでしょう? 貴方は俺がこうなる事を期待して、俺達の生活の中に入ってきたんでしょう!?」  

  解っている。完全な八つ当たりだ。
  暁登さんの思惑も何も、俺は彼に好意を持っていた。暁登さんはそれを知らなかった。確かに初めはと、俺目的の打算で近付いたんだとしても、彼は俺に秋波を送ったり、2人きりの時でも性を匂わせる言動をした事は一度もない。ただ純粋に、俺達と過ごす時間を楽しんでくれていただけなんだ。
  だから、好きが募ったのは俺の心の問題……。
  解ってる。彼は悪くない。悪くないけれど…。

「貴方になんか…出逢わなければ…よかった……」

  そうだ。貴方に出逢わなければ…。貴方が俺達の生活に入り込んでさえこなければ……。
  そんな俺の恨み言にも、暁登さんは何も言わない。
  涙を流しながら叫ぶように吐き出される俺の言葉を、ただじっと俺を見つめながら聞いていた。時折、切なそうな顔をしながら…。

「パパ…?」

  小さく呼ぶ声に振り向くと、俺が見境なく上げた声で目を覚ました奏音が、布団の上に座って此方こちらを向いていた。俺と目が合うとすくっと立ち上がり、駆けて来て俺の膝の上によじ登り、小さな手で俺の両頬を挟み込んだ。

「パパっ! どうしたのっ? どうしてないてるのっ!?」

  言いながら、今度は暁登さんを見る奏音。

「あきちゃん、パパをいじめたのっ? パパをいじめないでっ! あきちゃん、きらいっ!」

  あんなにあきちゃんが大好きな奏音が、パパをいじめるなんて嫌いだと叫ぶ。小さな体全体で怒る奏音を、俺は抱きしめた。

「かな、違うんだよ…。あきちゃんは悪くないから…。かな、嫌いなんて言わないで…。かなはあきちゃんのこと、大好きでしょう?」

   愛しい我が子に 大好きな人あきちゃんに向けてなんて言わせてしまう自分が情けなくて、更に涙が溢れた。そして、奏音の瞳からも涙が溢れる。

「パパぁぁぁ……」
   
  抱き合って泣いている俺と奏音を、暁登さんが長い腕の中に抱え込むように、纏めて抱きしめたー。

      ☆  ☆  ☆

〈 暁登視点 〉

「おやすみ、奏音」

  2度も昼寝したせいか、なかなか寝なかった奏音が寝たのは午後10時。すやすやと眠る奏音の頭にキスを一つ落としてから、俺は寝室から出た。
  リビングに戻ると、玲がコーヒーを淹れてくれた。

「ありがとう」

  お礼を言ってカップを受け取る。
  小さく頷いた玲は、自分の分のカップを持って、俺の隣に座る。


  あの後、奏音が起きた事で話は一時中断。
  パパをいじめた、とお怒りの奏音に頭を下げる俺。玲が「あきちゃんは悪くないんだよ」と何度言っても、「パパ、ないてたもん! あきちゃん、きらい!」と彼の怒りは収まらず…。お怒りはごもっともだ。玲は違うと言うが、玲を泣かせたのはどう考えても俺だろう。 
  頭を下げてもダメなら…と、「どうしたら赦してくれる?」とご本人様奏音に訊いたら、

「パパとかなといっしょにごはんたべて! かなといっしょにおふろにはいるの! そんで、かなといっしょにねんねするの! ぜんぶいっしょなの!」

可愛らしく頬を膨らませた彼からの可愛い要求。
  もちろん、全て実行させていただきました。実行する前に玲の許可を…と玲を見れば、涙を拭きながら笑っていた。笑いながら頷いてくれた。
  そしてさっき、奏音は眠りに堕ちる直前…。

「…あきちゃん、もうパパを…なかせちゃダメ…だからね……。」

  無事、お赦しをいただきました。

  それにしても…。
  奏音は本当に4歳なのか!? もうすぐ5歳になるとはいえ、4歳や5歳の子供とは思えない利発さ。赦す為にを提示するとは…。
  彼は大物になりそうな予感がする…。 
  俺がそう口にすれば、玲が笑う。

「本当に泊まっても良いのか?」

  奏音の最後の要求は。こればかりは流石に無理だろうと思った。幾ら奏音の頼みでも、自分に好意を寄せる男を泊めるなど、玲は嫌だろう。両想いだと判明したとはいえ、恋人でも何でもないのだから。奏音の手前、頷くしかなかったのだろう。…と思っていたのだが…。

「朝起きて貴方がいなかったら、奏音が怒りますよ。意外と憶えているので」

  そう言う玲は割り切っているようだ。よくよく思い返せば前にも泊まった事はあるし、今回は布団一式を持ち込んでいないから父子おやこの寝るダブルベッドの端にお邪魔する事になってしまうが、せっかく奏音にお赦しいただける機会を逃す訳にはいかないので、『無』になるんだ…と自分にい言い聞かせた俺だったー。

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