【完結】家族になろうよ 〜パパが『恋』をしてもいいですか?〜

Kanade

文字の大きさ
37 / 56

37. もしも許されるなら…


 〈 暁登視点 〉

「俺は上手くと思っていた。知らずそう匂わせるような態度を取ってしまっていたのだろうか…」

  俺の言葉に玲は首を横に振った。

「いいえ。貴方からそういう視線や言動を感じた事はないです。ただ、不自然さを感じたんです」
「不自然さ?」
「はい。貴方が本心から奏音を可愛がってくれているのは疑っていません。俺達を大切に思ってくれているのも本当でしょう。でも、『あの日』も言ったけれど、知人や友人の距離感じゃないんです。貴方は独身です。家族ぐるみの付き合いとは言えません。奏音だけが目当てだとは考え難く、俺との友人関係を望んでいるにしても距離が近過ぎる。もしかしたら…と思ったのが切っ掛けです。初めは自惚れ過ぎだな…と思いましたけれど、もし俺に特別な感情を抱いて俺達の家庭なかに入ろうとしているのなら…と、考え出したら落ち着かなくなりました…」
「……………」

  玲の慧眼に脱帽する。皮肉ではなく、本当にそう思う。
  距離感が近いー。
  言い訳させてもらえれば、この歳で恥ずかしい限りだが、指摘されるまで気が付かなかった。学生時代の数える程の交際経験がどれも相手からの告白によるもので、自分からと思ったのは、玲が初めてだったのだ。
  玲に決別宣言されて落ち込んでいる時、「仕事にならないから悩みがあるなら話せ」と秘書に言われて話した時、
   
『それは…引きますね…。やり過ぎ。学生の頃はぐいぐい行くのも有りかも知れませんが、その歳で、しかも相手には子供がいるんですよ?  子供を理由にして距離感を誤れば、余程鈍くなければますし、子供が大切だからこそ子供を口実にされれば、いい気はしないでしょう。怒って当たり前です。そんな状態で何故、受け入れてもらえると思ったのか…』

と、耳に痛い辛辣な言葉を俺にぶつけながら額を押さえていた。頭が痛い…とでもいうように。
  内容はプライベートな事なのに、彼の話し方は幼馴染みのそれではなく、完全に秘書としてのものだったのが、何故か怖かった。
  俺、社長だけどな……。

「本当にすまない。申し訳なかった。恥ずかしながら、言われて初めて気が付いた。自分が如何いかに独り善がりだったか…。奏音と約束をするにしても、まずは親である君にお伺いを立ててからすべきだったと思う。奏音と約束すれば余程でない限り君が断る事はないだろう、と思っていたのは確かだ。軽率だった」

  俺は頭を下げた。謝って赦されるのなら何度だって頭を下げる。

「それは…そうですね。奏音に約束する前に俺に訊いてほしかったと思います」

  玲の言葉に、ゆっくりと頭を上げた。此方こちらを見ていた彼と視線がぶつかる。

「俺は貴方に誘われて3出掛ける事はイヤじゃなかった。ただ、どうして先に奏音と決めてしまうのか。俺の都合は訊かず、毎週のように…。ずっと釈然としなかったんです。俺がインフルに罹った時も、病院に連れて行ってくれたり、奏音の世話をしてくれた事には感謝していたけれど、泊まり込む…というのはどう考えてもおかしい。幾ら頻繁に会っているとはいえ、出逢って半年足らずの相手の家に…なんて有り得ない。身内でも、ましてや恋人でもないのに。あの時の俺は正常な判断が出来なくて、結局、佑真先輩の判断と貴方の申し出に縋る形になってしまったけれど、後になって頭を抱えました」
「…本当に…申し訳なかった…」

  その時々の事を指摘される度、自分がどれほど非常識だったかを思い知らされる。そんな俺の口から出てくるのは謝罪の言葉だけだ。

「でも…初めは俺目当てで近付いたのだとしても、貴方は奏音を邪魔にする事は一度も無かった。いつも3で、それがとても自然で、いつしか俺も受け入れていたんだと思います。本当はちゃんと線引きするべきだったのに…」
「玲は悪くない。俺が最初から入り込み過ぎたんだ。本当はもっとちゃんと段階を踏むべきだった。
  ただ、これだけは信じてほしい。俺は本当に奏音を邪魔だと思った事はない。何度でも言うが、君達父子おやこと過ごす時間が心地良くて失いたくないと思ったのも。一生この想いを告げる事は出来なくても、この幸せな時間を失うよりはずっといい、と思っていた事も。だから俺は、玲にと言われた時、と言った」

  何度も…何度でも…俺は言葉にする。
  君達と過ごす時間は『得難い貴重な時間』なのだ、と。
  許されるのならこの先未来も、『家族』にはなれなくても、それに近い存在として君達の傍にいさせてほしい、と。
  と『恋情』を交わす事は叶わなくてもーー。

感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】君が笑うから、俺は諦められない

Lillyx48
BL
職場の先輩と後輩の恋のお話

【完結】優しい嘘と優しい涙

Lillyx48
BL
同期の仲良い3人。 ゆっくり進んでいく関係と壊れない関係。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 文章がおかしな所があったので修正しました。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……