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38. パパが恋をしてもいいですか?
〈 玲視点 〉
「もう…戻れません…」
「…え?」
「俺は貴方の気持ちを知った。貴方も俺の気持ちを知った。何も知らなかった頃には戻れない…」
「……………」
そうだ。知らなかった頃と違う。知らなければ…気付かなければ…、あのまま現在も変わらず、誤った距離感で関係性も曖昧なまま付き合っていたのだろうか…。
それすらも最早分からない。
「…何が正解なのか…解らないんです…。
会う度に惹かれていく自分の気持ちが止められなくて、頭の中ではずっと警告音が鳴っていたんです。これ以上は危険だ。離れなければ…って…。でも、俺も貴方と同じだった。奏音と貴方と3人で過ごす時間が楽しくて、この想いを胸に秘めたまま、3人でずっと一緒にいられれば…って…。相反する2つの思いに葛藤する毎日でした。苦しかった。でも、どうすれば良いか、解らなかった…」
「……………」
「葛藤する日々に漸く終わりを決意したのは、不意に貴方の気持ちに気付いた時です。確信は持てなかったから貴方に直接確認して、もしそうなら終わりにしよう…いいえ、もし俺の片想いだとしても、想いを告げてから決別を…と決めていました。でないと、俺はきっとこの恋に溺れてしまうから…」
恋した人と愛し合う、とはどんな気持ちだろう?
俺は知らない。少年の頃に経験した誰かに恋する気持ちは、思春期に自分の恋愛対象が同性だと自覚したのと同時に、淡く苦い思い出になった。
その後は自分を戒めるかのように恋愛を諦め、本気の恋を知らないまま結婚。奏音が生まれ、桜が亡くなり、桜が遺してくれた奏音を育てる為に、奏音を一番に考えて生きる為に、より一層、絶対に恋はしない…と更に自分を律したから…。
独身だったら…1人だったら、俺が好きになった男性が俺の事を「好きだ」と言ってくれる奇跡に、迷わずその手を掴んだと思う。でも俺は父親なんだ。子供の事を一番に考えなければならない。でも、たとえ一瞬でも子供の事を邪魔だと思ってしまったら…? 奏音は俺の子供だけれど俺の子供じゃない。遺伝子上は何の繋がりもない子供。血の繋がりだけが全てじゃない。そんな事は解ってる。俺と奏音は法的にもちゃんと親子だ。奏音は掛け替えのない宝物なんだ。
そんな事は…解ってるのに…。
もしも…もしも血の繋がりがないという本能が奏音の存在を否定したら…。
考えただけで怖気が走る。
「貴方への恋心を消したいと願いました。一緒に過ごした時間は半年にも満たない。時間が忘れさせてくれると思った。でも、不意に奏音が貴方の名前を口にする度に引き戻される。…ううん。それは卑怯な言い訳ですね。奏音の言葉は関係ない。俺はもうとっくに、貴方の事を忘れるなんて出来なくなっていたんです。寝言で無意識に貴方の名前を口にし、涙を流すくらいには……」
「…玲……」
ねえ暁登さん、教えてください。
「パパが恋をしてもいいんですか…?」
そう問いかけた俺の顔を、暁登さんがじっとみつめる。
そしてーーー。
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