【完結】家族になろうよ 〜パパが『恋』をしてもいいですか?〜

Kanade

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40. 交際の条件


〈 玲視点 〉

「俺も、貴方と『ゆっくり育む恋』がしたい」
「……………」

  俺がそう告げた時、暁登さんが息を飲むのが分かったー。

  
  暁登さんに「考える時間」をもらってからのおよそ1週間、俺は
  奏音がいる時は思考を一時中断して奏音との時間を優先し、奏音を保育園に送った後の1人で過ごす日中や、夜、奏音が眠りに就いた後も。家事や仕事の合間、俺は自分の気持ちと。 
  俺は暁登さんと…。
  本当は出ていたんだ。
  俺の暁登さんを想う気持ちは、もうどうにもならないくらい大きくなっていて、今更、誤魔化す事も無かったことにする事も出来ない。
  つまり俺は、んだって…。
  俺が向き合うべきだったのは、もし俺と暁登さんが恋人になった場合、どんな風に…どんな事に配慮するべきか…という事。
  2人だけの事なら純粋に恋愛を楽しめるだろうけれど、俺には子供奏音がいるから、常識としても、俺自身の気持ちとしても、常に奏音を一番に考えなければならない。親である以上、恋愛にうつつを抜かして奏音を蔑ろにするなんて論外。暁登さんもそれは解ってくれている。解ってくれているとは思うけれど、出来れば優先すべき事、大切な事は、ちゃんとお互いが納得いくように共有しておきたい。
  たかだか恋愛。もっと気楽に考えて楽しめばいいのに…と笑う人もいるだろう。でもそれは、若い頃や、他に責任が伴う守るべきものがないから言えることじゃないだろうか。人でも物でも。
  暁登さんは絶対に笑わない。俺と同じように、奏音を一番に考えてくれる人だ。俺も暁登さんも言葉が足りなくて一度は誤解やすれ違いをしたけれど、ちゃんと最初に守るべきラインを決めておけば、俺達は俺達らしい『ゆっくり育む恋』が出来ると思う。だって俺と暁登さんは『両想い』なんだから。
  これが俺が数日、自分と向き合って得た『答え』だった。


  朝、暁登さんが訪ねて来ると、予想以上に大喜びだった奏音。
  遠出をしない一緒に過ごす週末。暁登さんと奏音が出逢ってからは初めてじゃないかな。
  午前中は3人で近くの公園に出掛けた。俺と奏音の2人で行くいつもは、パワフルな子供に付き合うだけの体力に自信のない俺は、ベンチに座って奏音が1人…もしくは俺達と同じように遊びに来ていた友達と遊んでいる様子を見守るか、せいぜいブランコを押してやるくらいだけれど、俺よりも歳上の暁登さんは、家からボールを持って行って、奏音と一緒に走り回り、全身を使って遊んでくれた。奏音はとても嬉しそうだった。
  帰宅してお昼ご飯を食べた後は、奏音はお昼寝。いつも以上に体を動かしたからか、ご飯の途中から船を漕ぎ始めていた。
  奏音のお昼寝中は、お茶を飲みながら、奏音の可愛い寝顔を時々眺めて雑談をして時間を過ごした。奏音がいつ起きるか分からないから、には触れなかった。

  そして夜…つまり『今』だけれど…。
  いつもの時間に奏音を寝かし付けた俺は、リビングのソファー…ではなく、床に敷いたラグの上に座り、同じくラグの上に座った暁登さんと、向き合っていた。物理的に。『答え』を告げる為に…。
  そして冒頭の言葉…をしたんだ。

「俺は貴方が好きです。自分の気持ちから目を逸らすのを止めました。俺は貴方と恋愛がしたい。恋人になりたい。
  でも、俺の一番は奏音です。奏音を幸せに出来なければ俺の幸せも有り得ない。
  だから……」

  一度言葉を切り、深呼吸してから改めて口を開いた。

「条件…いえ、約束ルール一線ライン…を、設けさせてもらっても…いいですか…?」
「聞かせてほしい」 

  俺が言い出す事を予想しわかっていたのか、間を置かずに暁登さんが言った。俺は頷く。

1. 毎週末一緒に過ごすのは構わないけれど、遠出をするのは月に一度だけ。その時も必ず双方合意してから奏音に伝えること。
2. 奏音の前では性的な発言(「好き」や「愛してる」など)や、性的な接触(キスやハグなど)はしない。

「3、もしも万が一にも俺と奏音のどちらかを優先しなければならなぃ時は、必ず奏音を優先してください。日常生活においても、…です。俺は必ず奏音を優先します。絶対です。俺は俺を愛してくれる人でも、奏音の事も大切してくれる人じゃないとダメなんです。そして、交際中に俺にがあった時に奏音を守ってくれる人じゃないと……」
「解った」
「…え……」
「全て同意する。遠出は多くても月に一度。奏音の前では性的言動はしない。そして…。出来れば2人にはいつまでも健やかに幸せでいてほしいが、万が一の時には必ず奏音の事を一番に考え、守ると約束する」
「…そ…そんな即決…」

  まさか俺の言葉に被せるように即答されるとは思わなかった。暁登さんなら最終的には受け入れてくれるとは思っていたけれど、少し考えたい…と言われると思っていたから…。

「俺に迷いはない。玲も奏音も大切で大好きだ。2人の傍にいられるのなら、どんな条件でも飲むよ。
  なんなら、紙に書いて誓約してもいい」
「………。誓約…」

  俺はぶんぶんと首を横に振った。

「それでは契約になってしまいます。
  俺は『約束』してくれるだけでいい」
「そうか…」

  頷いた暁登さんが居住まいを正し、俺もそれにならい、正面から向き合い視線が絡む。

「改めて言わせてほしい。
  玲、君が好きだ。愛してる。奏音ごと大切にしたい。付き合ってほしい」

  両手を前に出し、手の平を上に向ける暁登さん。
  俺も両手を出し、手の平を下にして暁登さんの手に重ねる。

「俺も貴方が好きです。愛しています。
  奏音共々、よろしくお願いします」

  きゅ…と暁登さんが俺の手を握る。
  ただそれだけ…。
  ハグもキスもしない、の始まり。 

  俺と暁登さんはこの日、『恋人』になったーー。
  

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