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41. 仕掛けた『初めて』のキス
〈 玲視点 〉
6月ー。
俺と暁登さんの出逢いから丸1年が経ち、正式に恋人として交際を始めてから3ヶ月が過ぎたー。
実のところ、恋人になったからといって、何かが変わったという事はなく…。
毎週末の土曜日か日曜日は暁登さんから俺達の家にきてくれて一緒に過ごすし、月に一度は俺と暁登さんの2人で計画して、日帰りで少し遠くまで出掛けたりした。奏音が大好きな電車で。出掛けない週末は家でまったりしたり、天気の良い日は公園に遊びに行ったり、買い物に行ったりする。
特に公園は、出掛けない週末はほぼ毎回行く、奏音のお気に入りスポットだ。ただ遊んでいる様子を見守るだけだった俺と違い、暁登さんは一緒に遊んでくれるから。暁登さんは暁登さんで、どんどん成長する奏音の相手を可能な限り長く続けられるように、時間があればジムに行ったり筋トレをして、体力維持や向上を心掛けているらしい。よく奏音をお風呂に入れてくれるから暁登さんの上半身裸はたまに見るけれど、引き締まってて、腹筋割れてて、好きな人のそんな体見たらドキドキしちゃうよね。すぐ目を逸らす俺…。
暁登さんは約束通り奏音をとても大切にしてくれている。一緒に過ごす時間は奏音優先。ちゃんと守ってくれてる。かといって、俺が放っておかれている訳でもない。暁登さんが奏音と遊んでくれている間に家事をしたりする俺だけれど、いつの間にか傍にいてさり気なく手を貸してくれるし、「奏音、パパのお手伝いしようか」と奏音と一緒に手伝ってくれたりする。
もうね、恋人というより家族だよねぇ。
ある日、
「奏音はわざわざ遠くまで遊びに行かなくても、貴方と居られれば楽しいし、嬉しいんですよ」
と俺が言ったら、暁登さんは、
「そうか。俺は君達に好かれようと必死になるあまり、独り善がりが過ぎたんだな。俺も、肩肘を張らない現在のほうが楽しいよ」
と返しながら笑った。
そうそう、先月、奏音は5歳になりました。
去年までは毎年佑真先輩が来てくれて一緒にお祝いしてくれた誕生日。今年は俺と奏音と暁登さんの3人で。先輩には暁登さんと交際を始めた事を話していたから、遠慮してくれたんだと思う。俺は先輩が一緒でも全然構わないし、奏音が喜ぶから…と言ったけれど、先輩は当日奏音ににプレゼントだけ渡しに来て、そのまま帰ってしまった。
俺と暁登さんからのプレゼントは『自転車』。晴香さんの息子さんの煌星くんが乗ってるのを見てずっと欲しがってたから、「5歳になったらね」と奏音と約束していた。俺1人で買うつもりだったんだけれど、暁登さんが「便乗させてほしい」って言ってくれて、幾つもプレゼントをあげるよりも一つのプレゼントを2人で用意するのも良いかも…と、俺はその申し出を有り難く受け入れた。
初の自転車に奏音は大喜びで、次の週末には早速、暁登さんが来るなり「こうえん!」口撃が凄かった。暁登さんは嫌な顔一つしないで、家に上がらずそのまま奏音を公園に連れて行ってくれた。
俺、確かに「奏音を優先して」とは言ったけどさぁ…。
俺と暁登さんが交際を始めてから3ヶ月が経ったけれど、俺達はいまだプラトニックな関係だ。
奏音の前では性的な言動はしない、と約束したし、当然それは守られているけれど、奏音のお昼寝中や、夜奏音が寝た後の2人きりのリビングでも、俺達の間に性的な触れ合いは無い。お互いの手を握ったりはするけれど、それ以上、暁登さんから俺に触れたり、キスやハグもしない。ちなみに、奏音がいなくなった日の夜以降、遊びに来た日が土曜日でも、一度も泊まって行ったことはない。
『ゆっくり育む恋』、いつまで…?
最近思う俺である。
いや、俺の為に提案してくれたんだという事は解っているけれど、一度やらかしてるから慎重になっているんだろうな、とは思うんだけどね…。
全て差し出すのはまだ少し怖いけれど(初めてだから)、ハグとキス(キスも初めてだけれど)くらいは…と、期待している俺がいる。
だってさ、ゆっくり俺達のペースでって言っても、限度があるって思わない!? 俺達、大人だよ!? 好きな人とはキスしたいと思うのは普通だろ!?
……………。
…俺、欲求不満…なのかなぁ…?
俺から仕掛けてみようか…。経験ないし、超ビギナーだけれど……。
その日の夜、帰る暁登さんをいつものように玄関まで見送りに出た俺。上がり框に立っていた俺は、靴を履いた暁登さんが振り向いたタイミングで少し背伸びをして、暁登さんの唇に自分の唇を重ねた。時間にして僅か2秒ほど。
唇を離して姿勢を戻して暁登さんを見れば、まさか俺から仕掛けられるとは思わなかっただろう驚き顔…と、それも一瞬のこと。すぐさま長い腕に抱き寄せられ、再び重なる二つの唇。
「…んっ…」
しっかり重ねた後は啄むような可愛らしいバードキスの嵐。解放された俺は、へなへなと座り込んだ。そんな俺を暁登さんは屈んで1回だけ抱きしめ、離す時におでこにキスをしてから、耳元で、
「おやすみ」
囁くように言ってから帰った。
「~~~~~~~~」
両手で頬を押さえて蹲る俺。
仕掛けたつもりが思わぬ反撃(?)にあい、暫くその場から動けなかった俺。
この夜をきっかけに、俺と暁登さんの関係は少し進展した…と思うー。
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