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52. 恋人の実家
〈 玲視点 〉
門扉を中心に木の塀で囲まれた平屋建ての家…というか屋敷(?)が、暁登さんのご実家だった。
……………。
いや、大まかな話は聞いていたけれど…。想像していた以上に立派…というか…。
此処で暁登さんは育ったのか…。
と、少々門前で呆けていると、「パパ、いくよ」と奏音に呼ばれて我に返る。奏音は暁登さんと手を繋ぎ、既に門扉を潜り抜けていた。俺と目が合った暁登さんが苦笑している。
は…恥ずかしい…。
俺は慌てて門扉を潜ると、空いている方の奏音の手を取って繋いだ。
「緊張しなくても大丈夫だから」
暁登さんは言うけれど、緊張するな…というほうが無理だと思う。挨拶に伺いたいと言ったのは俺だけれども…。
恋人に子供がいる事は話してあるという。自宅に帰った後、改めて電話して話してくれたらしい。「事前に報せておいたほうが良いだろうと思った。勝手して悪かった。奏音の出自については話していないから」と謝ってくれた暁登さんを責めるつもりはない。いきなり子連れで押し掛けて驚かせるよりはいい筈…だよな…?
暁登さんの誘導で玄関に入った俺達を笑顔で出迎えて下さったのは、彼のお母様。簡単な挨拶を交わし、彼女に案内された部屋に行くと、暁登さんのお父様が待っていらした。テーブルを挟んだお父様の向かいに用意された座布団に俺、奏音、暁登さんの並びで座らせてもらい、一つ頭を下げてから改めて自己紹介をする。
「初めまして。本日はお時間を作っていただき、ありがとうございます。葉月 玲と申します。暁登さんとお付き合いさせていただいてます。
この子は息子の奏音です」
緊張しながらも無難な挨拶をしてから、真ん中に座る奏音にも挨拶を促す。
「はづき かなとです。6さいです。なかよくしてください。おじいちゃま。おばあちゃま」
と、可愛らしく頭をちょこんと下げた奏音。可愛い…可愛いけれど、俺は奏音の言葉にぎょっとして、思わず暁登さんを見た。そこには、どうした?と語るような何食わぬ笑顔の彼。
あ…。これは…確信犯だな…。
昨夜、何やら2人で内緒話をしていたのはこれだったのか…。
それにしても、初対面で「おじいちゃま」「おばあちゃま」なんて失礼な…!
そう思って注意しようとした俺だけれど…。
「あらあら。おばあちゃまだなんて…」
「…?」
声がした方を見れば、片手で口元を押さえてうるうるしているお母様と、優しい眼差しで奏音を見つめるお父様が…。
……………。
これは…感動してる…?
迷惑…じゃない…のか…?
けど、おじいちゃまおばあちゃま…ってどこの坊っちゃんだよ。そこは、おじいちゃんおばあちゃんで良いんじゃない?とは、口には出さなかった俺。まあ、お二人は気にしてないどころか、喜んでるっぽいしな。せっかくの感動に水を差すのもなぁ…。
概ね顔合わせと挨拶は問題なく無事に済んだと思う。
奏音のお陰…かな? それとも、奏音に吹き込んだ暁登さんのお陰?
どちらにせよ、奏音の「おじいちゃま。おばあちゃま」で場はすっかり和み、俺の緊張はどこへやら。お父様の「昼は食べていきなさい」というお言葉に甘え、手料理を振る舞ってくれるというお母様と一緒に台所に立った俺。手伝いながら、しっかりと家庭料理を教えていただきました。
俺が台所にいる間、奏音は暁登さんとおじいちゃまと一緒に庭に出て、お池の鯉に餌をあげたらしい。「こいさん、かわいかったの!」と、お昼ご飯の時に興奮しながら話してくれた。奏音はずっと、おじいちゃまとおばあちゃまの間に座っていた。お父様とお母様は、奏音に何度も「可愛い、可愛い」と言って『孫認定』してくださった。
………。もちろん嬉しいけれど…。
親の俺が言うのも…だけれど、奏音は『天然たらし』だと思う…。
お昼ご飯をご馳走になったらお暇するつもりだったけれど、お父様とお母様があの手この手で引き止めようとするし(主に奏音を)、奏音は平屋の広い家が気に入ったらしく「ぼうけんしたいの!」と言って帰りたがらず…。「おじいちゃま、かな、ぼうけんしたいの」とお父様を従えて家の中の散策を…。さすがに叱ろうとした俺だけれど、暁登さんに止められた。
「好きにさせてやってくれ。父さんも満更でもないみたいだしな」
「……………」
確かに笑顔…だな、お父様…。
溜め息を吐きつつ、俺が折れた。
結局、夕ご飯までご馳走になる事になった俺達。昼と同じように、俺もお手伝いしたよ、もちろん。
そして、今度こそ本当にお暇する時間。
「いつでも遊びに来なさい」
と言ってくださったお父様に俺は頷き、
「おじいちゃま、おばあちゃま、またくるね~」
と、奏音が車の窓を開けて手を振る。
奏音に手を振り返してくれる暁登さんのご両親に見送られ、俺達は帰途についたーー。
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