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4. 出社の理由
〈 玲視点 〉
会社までは自宅アパートから車で20分ほど。
社屋裏の社員専用駐車場に車を停め、これまた社員専用の裏の出入り口から社内に入る。まあ、社員専用といっても使うのは出勤時と退社時だけだけれど。
社屋は2階建てで、1階には男女に別れた更衣室と休憩スペースがあり、この休憩スペースで持参した昼食を食べたり、文字通り休憩したりする。給湯室が完備されているが、自動販売機も設置されている。来客用の出入り口ももちろんある。出入り口が裏と表にあるだけで、ワンフロアだからね。ちなみに、車を使わず営業に出る社員は、普通に来客用の正面玄関から外出する。更衣室はちゃんと部屋になってるけれど、休憩スペースはお客様も使える。自販機しかないけれど。
2階がオフィス。社員の仕事部屋だけでなく、社長室、会議室、応接室も、2階に全部収まっている。
1階には用はないから2階のオフィスに上がる階段を上り、上がって直ぐの所に設置された機械に、壁掛け収納から自分のタイムカードを手に取って通す。わざと通さなかったり忘れたりすると佑真先輩…もとい、社長に怒られるんだ。
俺の出社理由は送ったデータがちゃんと届いているかの確認と、データに不備やミスがないか社長に見てもらい直接OKかやり直しかのサインをもらう事(うちの会社は社長が積極的に働くスタンスだから)。
表向きはね!
本当は、俺が出社したいだけなんだ。データ云々は会社に来る口実。同僚達はみんな、知ってるけれど。
俺、現在は在宅ワークしてるけれど、本当の俺は、出社して働きたいんだ。わざわざ出勤したがるなんて変わってる、と同僚達からは言われるけれど、俺は人と関わるのが好きなんだよ。施設育ちだから友人と呼べる特定の人はいないけれど、それでも俺は、引き篭もるような生活はしたくない。ちゃんと世間に揉まれて生きてるって実感しながら生活したい。人付き合いが苦手で在宅ワークを選ぶ人を否定するつもりはないけれど、だったら俺の「世間に揉まれたい」っていう思いも尊重されていいはず…。変わってる、とは自分でも思うけれど。
そんな変わった理由で月に2、3回は出社する俺。そんで、仕事をする。データの確認だけして帰る…なんて阿呆な事はしない。わざわざ出社した意味ないじゃん。俺は! 会社で! 仕事がしたいんだから! かといって、在宅プログラマーの俺が会社で任されている仕事はないから、雑用をする。資料をまとめたり、コピーを取ったり…。同僚達は「仕事ないですか?」と嬉々として訊く俺に少々引きながら(多分?)も、「申し訳ないけれど…」と言いながら、仕事を預けてくれる。無碍にしない分、優しいよな。
で、話戻るけれど、タイムカードを通さないと怒られる理由がこれ。俺が仕事をするから。雑用とはいえ仕事は仕事。雇用している社員が会社に関わる仕事をすれば給料が発生する。雇い主には支払い義務が生じ、無給で働かせると雇用主が罪に問われる、と。言われてから納得した俺だった。最初に「雑用だから給料は要りません」と言った俺に、「そんな訳にいくか! 雑用でも仕事! 短時間であっても社員に仕事させといて給料払わなかったら、俺が捕まるんだよ!」と思いっきり正論で怒られた…。「給料貰うのが心苦しいって言うんなら、俺が直ぐに対応出来ない時は大人しく椅子に座っててくれ」と、若干お疲れ気味に言われたけれど、「無理です」と即答で返した俺に、「だったら、黙って給料受け取ってくれ…」と溜め息を吐きながらお願いされた。
俺は頷いた。
まあ、貰って困るものでもないし?
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