【完結】家族になろうよ 〜パパが『恋』をしてもいいですか?〜

Kanade

文字の大きさ
4 / 56

4. 出社の理由


〈 玲視点 〉

  会社までは自宅アパートから車で20分ほど。
  社屋裏の社員専用駐車場に車を停め、これまた社員専用の裏の出入り口から社内に入る。まあ、社員専用といっても使うのは出勤時と退社時だけだけれど。
  社屋は2階建てで、1階には男女に別れた更衣室と休憩スペースがあり、この休憩スペースで持参した昼食を食べたり、文字通り休憩したりする。給湯室が完備されているが、自動販売機も設置されている。来客用の出入り口ももちろんある。出入り口が裏と表にあるだけで、ワンフロアだからね。ちなみに、車を使わず営業に出る社員は、普通に来客用の正面玄関から外出する。更衣室はちゃんと部屋になってるけれど、休憩スペースはお客様も使える。自販機しかないけれど。
  2階がオフィス。社員の仕事部屋だけでなく、社長室、会議室、応接室も、2階に全部収まっている。
  
  1階には用はないから2階のオフィスに上がる階段を上り、上がって直ぐの所に設置された機械に、壁掛け収納から自分のタイムカードを手に取って通す。わざと通さなかったり忘れたりすると佑真先輩…もとい、社長に怒られるんだ。
俺の出社理由は送ったデータがちゃんと届いているかの確認と、データに不備やミスがないか社長に見てもらい直接OKかやり直しかのサインをもらう事(うちの会社は社長が積極的に働くスタンスだから)。
  表向きはね!
  本当は、俺が出社したいだけなんだ。データ云々は会社に来る口実。同僚達はみんな、知ってるけれど。
  俺、現在いまは在宅ワークしてるけれど、本当の俺は、出社して働きたいんだ。わざわざ出勤したがるなんて変わってる、と同僚達からは言われるけれど、俺は人と関わるのが好きなんだよ。施設育ちだから友人と呼べる特定の人はいないけれど、それでも俺は、引き篭もるような生活はしたくない。ちゃんと世間に揉まれてって実感しながら生活したい。人付き合いが苦手で在宅ワークを選ぶ人を否定するつもりはないけれど、だったら俺の「世間に揉まれたい」っていう思いも尊重されていいはず…。変わってる、とは自分でも思うけれど。
  そんな変わった理由で月に2、3回は出社する俺。そんで、仕事雑用をする。データの確認だけして帰る…なんて阿呆な事はしない。わざわざ出社した意味ないじゃん。俺は! 会社で! 仕事がしたいんだから! かといって、在宅プログラマーの俺が会社で任されている仕事はないから、雑用をする。資料をまとめたり、コピーを取ったり…。同僚達は「仕事ないですか?」と嬉々として訊く俺に少々引きながら(多分?)も、「申し訳ないけれど…」と言いながら、仕事を預けてくれる。無碍にしない分、優しいよな。

  で、話戻るけれど、タイムカードを通さないと怒られる理由が。俺が仕事雑用をするから。雑用とはいえ仕事は仕事。雇用している社員が会社に関わる仕事をすれば給料が発生する。雇い主には支払い義務が生じ、無給で働かせると雇用主が罪に問われる、と。言われてから納得した俺だった。最初に「雑用だから給料は要りません」と言った俺に、「そんな訳にいくか! 雑用でも仕事! 短時間であっても社員に仕事させといて給料払わなかったら、俺が捕まるんだよ!」と思いっきり正論で怒られた…。「給料貰うのが心苦しいって言うんなら、俺が直ぐに対応出来ない時は大人しく椅子に座っててくれ」と、若干お疲れ気味に言われたけれど、「無理です」と即答で返した俺に、「だったら、黙って給料受け取ってくれ…」と溜め息を吐きながらされた。
  俺は頷いた。
  まあ、貰って困るものでもないし?

感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】君が笑うから、俺は諦められない

Lillyx48
BL
職場の先輩と後輩の恋のお話

【完結】優しい嘘と優しい涙

Lillyx48
BL
同期の仲良い3人。 ゆっくり進んでいく関係と壊れない関係。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 文章がおかしな所があったので修正しました。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……