【完結】家族になろうよ 〜パパが『恋』をしてもいいですか?〜

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8. 忘れていた恋心


〈 玲視点 〉

  鹿嶋暁登ー。
  彼の名前と声が頭から離れない。ほんの少し会っただけ、ほんの少し言葉を交わしただけなのに…。
  あの日、あの瞬間の事を思い出すだけで、きゅっ…と胸が切なくなる。この感じは何だろう?
  ……………。
  ううん。俺は知ってる。この感情の正体は……。
  それはもう何年も忘れていた感情だったー。


  俺は同性愛者性的マイノリティー。恋愛対象は男性だ。
  自分がかも知れないと初めて自覚したのは小学6年生の頃。その性自認が早いか遅いかは分からない。
  初めて『恋心』を自覚した相手は『同級生の男の子』。施設育ちである事を理由に一部の同級生からいわれのない嫌がらせを受けていた俺を、いつも庇ってくれた優しい少年に抱いた淡い『初恋』。けれど、男の子は女の子を好きになるもの。男の子が男の子を好きになるなんて変だ。自分は…。まだ世の中に同性愛が存在する事を…それは持って生まれた『個性』である事を知らなぃ幼い俺は、普通じゃない事を知られて嫌がらせが更に酷くなるのが怖くて、幼い恋心にそっと蓋をした。初恋は、告げる事なく終わった。
  二度目の恋は中学3年生の時。同じクラスの男子生徒。中学では嫌がらせをされる事はなかったけれど、やっぱり施設育ちを理由に遠巻きにされ、いつも教室の片隅で1人でいる事が多かった中学校生活の3年目。唯一人、毎日「おはよう」「また明日な」と彼だけが挨拶をしてくれた。人との関わりに飢えていた俺にとって、それだけで好きになるには十分な理由だった。この頃になると世間には同性愛性的マイノリティーがある事は知っていたけれど、そういう人達への差別や偏見が多い事も知っていた。それでも勇気を出して想いを告げたのは中学の卒業式の後。結果は玉砕。解ってはいた。彼は異性愛者だから。だけど彼は俺の想いを否定する事も気持ち悪がる事もなかった。「好きになってくれてありがとう。友達としてだけど、俺も好きだったよ」と最後に残酷な程に優しい言葉をくれた彼の去っていく背中が見えなくなった頃、俺はその場に佇んだまま泣いた。こうして二度目の恋も終わりー。
  多感な時期に二度の恋と失恋を経験した俺は、もう二度と恋はしない。誰も好きにならない。と心に決め、目立たず過ごした中学の時以上に、高校に入ったらひっそりと大人しく過ごそうと決めた。のだけれど、入学して早々に瀬尾佑真先輩に見つかり、頼んでもいないのに何くれと世話を焼かれ、半ば強制的に先輩が部長を務めるパソコン部に入部させられ…。『パソコン』という(俺にとっては)に出会う。夢中になれるものを見つけた俺は、ひっそりと大人しく…という決意は何処へやら…。毎日の学校生活に色が着いた。楽しい高校生活。自分でその時の自分がどんな顔をしていたかなんて判らないけれど、そんな楽しい気持ちが顔に出ていたらしく、「楽しそうだな」と先輩に指摘されて「そっか。俺、楽しいんだ」と自分の毎日が充実している事に気付いた。人に言われて気付くなんて鈍いにも程があるけれど…。何にでも興味を示し試したくなる10代。夢中になれるものを見つけた俺の高校生活は、気が付けば過ぎ去っていた。二度目の恋が終わった後に決意した通り、意図せず、恋とは無縁の高校生活だった。

  高校を卒業してからも、幸か不幸か、施設を出て一人暮らしを始め、就職して仕事に慣れるのに必死で恋愛どころではなかった。仕事に慣れた頃に佑真先輩に再会して転職。怒涛の日々を過ごし、漸く落ち着き始めた頃に、暫く疎遠になっていた桜と再会した。
  2年ぶりに会った桜は、ぽっちゃりしていた体がひと回り細くなり、ゆったりした服マタニティウェアを着ていて、そのお腹は少し膨らんでいたー。

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