【完結】家族になろうよ 〜パパが『恋』をしてもいいですか?〜

Kanade

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19. 数年ぶりの体調不良

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〈 玲視点 〉

  暁登さんと再会してから5ヶ月余りー。
  再会した夏、そして秋が過ぎ、季節は冬ー。


  12月のある土曜日の朝。
  俺は悪寒を感じて目を覚ました。薄暗い室内で視線だけをめぐらせて目覚まし時計で時間を確認すると、5時を少し過ぎたところ。まだ起きるには早い時間だからもう少し寝ようと布団を肩までちゃんと掛けたのに、何故だが寒くて眠れない。今日は特に冷え込むなぁ…と、まだ早いけれど眠れないなら起きようか、と体を起こそうとするけれど、何だか怠くて力が入らない。それに、寒いのに全身が火照っている感じがする。ふと思い付き自分の額に手を当てれば、熱い。どうやら熱があるみたいだ。
  結局そのままいつも起きる6時まで時間をやり過ごしてから鳴った目覚ましを止め、すやすやと眠る奏音を起こさないように、そっとベッドから抜け出した。立ち上がった瞬間に脚に力が入らずに少しふらついたけれど、何とか体勢を立て直し、ベッド脇のチェストから体温計を取り出してリビングダイニングに移動する。ダイニングチェアに座って熱を測ると37.8℃。何とも微妙な数字。高熱ではないけれど微熱でもない。しかも最悪な事に倦怠感に頭痛までする。ただ咳などの風邪症状は無いから、恐らく日頃の疲れが出た一過性のもので、解熱薬を飲んで寝ていれば治るだろう。
  今日が土曜日で良かった…。
  土曜日はいつも保育園は休ませてるから、今日は奏音を送る必要はない。とてもじゃないけれど、車の運転は出来そうにないから。
  何年振りだろう? こんなに体調が悪いのは。気分は最悪だけれど、奏音の世話がある。寝込んではいられない。彼が起きてくる前に朝ご飯の用意…。
  力が入らず笑う膝を叱咤して椅子から立った俺は、トイレに行って用を足し、洗面所に行って歯を磨き顔を洗ってから再びリビングに戻り…。
  少しだけ休憩しよう、とソファーに腰を下ろした俺は、そこで力尽きたー。

  何かに揺さぶられる感覚に、俺は瞼を開けた。
「パパ、あさよ」の声と同時に目の前に現れた天使奏音の顔。俺は、はっとして掛け時計を見た。時間は7時を示している。奏音が起きる時間。俺は寝ていたらしい。慌てて首を振ったせいか、心なしか頭痛が酷くなった気がする。けれど、奏音に朝ご飯を…。
  ……………。
  無理だ。いつものようには出来そうにない。

「かな、パパお熱があるんだ。パパがお薬飲んで寝ている間、1人で遊んでてくれる?  お着替えをしたら、ベッドのお部屋で朝ご飯を食べよう」
「ねんねのおへやでごはんたべてもいいの?」

  いつも「ベッドのお部屋でご飯やおやつを食べたり飲んだりしたら駄目だよ」と約束してるから、奏音は不思議そうに訊いてくる。

「うん。パパ、頭が痛くてね、ねんねしたいんだ。でもパパ、1人は寂しいから、かな、ベッドのお部屋で遊んでてくれる? 玩具おもちゃで遊んでもいいし、お絵描きしててもいいよ」
「わかった! パパのおそばであそぶ! 
  パパ、かながおそばにいてあげるからね」
「ありがとう」

  小さな頭を撫でると、奏音が嬉しそうに笑う。
  いつもはちゃんと手作りする朝ご飯だけれど、今朝は仕方がないと割り切る事にして、おやつ用に常備している菓子パンと幼児用ミニパックの野菜ジュース、昨夜カットしておいた果物を用意して、寝室に移動した。
  ミニテーブルを広げ、その上に置く。奏音はリビングの玩具おもちゃ棚からお気に入りの玩具おもちゃとお絵描きセットを持って来た。
  俺は奏音に「1つだけちょうだいね」と断ってから果物を一切れ摘み、解熱薬を飲んでからベッドに入る。

「かな、おトイレに行きたくなったらパパを起こしてね。1人で行かないで。お腹が空いた時も起こしていいからね。あと、ピンポンインターホンが鳴っても出ないこと。解った?」
「うん。わかった」
 
  実際どこまで理解しているかは判らないけれど、言い聞かせておく。頷いた奏音が食事を始めるのを確認してから、横になったままでスマホを操作する。
  明日の日曜日の暁登さんとの約束はキャンセルしたほうが良いだろう。今日1日寝ていれば熱は下がるだろうけれど、病み上がりで出掛けるのは止めておいたほうがいいだろう。ぶり返したら困るから。

『おはようございます。朝早くにすみません。急で申し訳ないのですが明日のお出掛けはキャンセルさせてください。奏音には言い聞かせますので心配なさらずに。ごめんなさい。失礼します』
 
と、ぼんやりし始めた頭で文字を打ち、ラインを送信。すると、間を置かずにスマホが着信を知らせる。表示されたのは暁登さんの名前。ラインを見てすぐに電話をくれたらしい。ラインでいいのに…。
  出ない訳にはいかないので、薬が効いてきたのか重くなってきた瞼を無理やり開きながら、通話ボタンを押し、手に持たなくても話せるようにスピーカーにする。

『もしもし、玲くん?』

  そこまでが俺の限界。
  本日2回目、俺は力尽きたー。




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