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九十九ひろひろ

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二十八夜目、麻雀の国

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 気がついたら行列に並んでいた。
ここどこだ、何で俺は並んでいるんだ。全く覚えていない。
俺の順番が来た。
黒いスーツを着た男が言う。
「『1万』『10万』『100万』どれにするんだ」
困った、難し過ぎる。「すみません、教えてください」とすがるように聞いた。
「チッ。いくら借りたいんだ、早く言え!」
男は不機嫌そうに言い放った。
「返済は・・・・いくら返せば、良いのですか」
男は、首をまわしながら、疲れた顔で言った「倍払いだよ。嫌なら消えろ、忙しいんだ」
「1万でお願いします」おれは慌てて言った。
「はい、1万。この紙にサインして、返済は1週間後、詳しくは紙を読めばわかるから」
おれは千と書いてある紙を10枚、受け取り列を離れた。

遠くに明かりが見える、明かりの方向に進む。
突然、街が現れた。
目の前の宿屋に入る。
ごついオヤジが受付にいる「1泊千円、食事は別」
「1泊、お願いします」
「ふーん、兄ちゃん見ない顔だね」
「聞いていいですか」
「何か知りたいのかい」
「食べる処と。金の稼ぎ方」
オヤジはニヤニヤしながら言った。
「ほぅ、ストレートな兄ちゃんだ。大事だよ、素直が一番」
俺はオヤジのにやけ顔に少しイラッとした。
「もっと街の中心に行って見な、色々ある。金は出来ることをやって稼ぎな。稼ぎ方も色々ある」
「ありがとうございます」と俺は頭を下げた。
その足で、街の中心へ向かった。

思ったより華やかな街だった。
高そうな食べる処も、豪華なホテルも、あやしいお店もあった。
ふと見るとゲーセンのような建物があった。
ホッとした。「よし、ゲーセン入ろう」と思い店のなかへ。
なかは、ゲーセンというよりカジノ場だった。少しガッカリした。
店内をうろついたら、奥に麻雀部屋があった。
「麻雀か。家族麻雀では敵なしなんだよな、俺」

麻雀の受付に「ルール」が書いてあった。
喰いタン、喰いピンフ、喰いイーペーコ無し、後付有り、現物以外の喰い代え有り。
「後付け有りの喰いタン無し、いわゆる『有り無し』ルールだ」
・・・・確かに、完全先付はチョンボがめんどくさいからな
ということは、もしかして、役満が・・・・・・・
大車輪、紅孔雀、国士の暗槓和了あり、加賀百万石、三連ポン、四連ポン無し。
イーピンラオユエのご祝儀3役
・・・・かなり変形な麻雀だな。
オヤジと麻雀、やっといて良かった、これならなんとか打てる。
「レートは千点百」「よし、打とう」

受付窓口に「麻雀打てますか」
若いスタッフ「はい、1名様ですね。少しお待ちください」
席に座った、おっちゃん連中三人に囲まれた。
ていうか、おっちゃん達、上手かった。
打ち方も綺麗だし、牌の扱いも丁寧。強い打牌もしない。
すごく気持ちよく打てた、不思議な感覚だった。
頑張ったけど、三着・二着・三着。
ふと、手が入った。ドキドキした。
めずらしく、おっちゃんがしゃべった。
「高そうな手だね」「わかるよ」「でも、俺も勝負手なんだよ」
おっちゃんは、少し強めに「イーソー」を打牌した。
「ロンです、紅孔雀、役満です」俺はドキドキしながら牌を倒した。
おっちゃんは悲しそうに言った
「どっちも当たりか、ついてないわ」
おっちゃんは国士だった「イーソー」か「キューソー」どっちを捨てるか、悩んだのだ。
「これで借金払えないかもな」肩を落として、おっちゃんは席を立った。

スタッフ「1欠けです、1人入ります」
「背の高いイケメンの若い兄ちゃんが席に着こうとした」突然、他の2人のおっちゃんも席を立った。
「ごめん、これで止めるわ」とおっちゃん。
俺は嫌な予感がした。
髭面の店長が来た「アナ公だから俺が入るよ」
もう一人、赤ら顔のおじちゃんが「店長とアナか、こりゃ面白そうだ」
いかにも、麻雀が強そうなメンバーがそろってしまった。
アナ公、ひげ店長、よっぱらいジジイ、俺
どう見ても、俺が一番下手だ。
打ってみるまで、わからん・・・・と、自分で自分を励ました。

アナ公、強かった。しかも、変な麻雀だ。イーピン和了が多い。
「リーチ1発1ピン単騎ツモ」何回これをやられたことか。
なので怖くて「1ピン」が切れない、困った。
ひげ店長「また、ア○ル待ちかよ。さすがにやりすぎ」
・・・・・・そういえば、1ピンの別名はア○ル、アナ公って、そういうことなの?
メンバーが変わって、3着、4着、3着・・・・・こりゃダメだ。
「もう、あきらめるか、この半荘で止めるか」と思ったら手が来た。
聴牌した、ドキドキした。本当にドキドキした。
アナ公が満面の笑みで、ドラの1ピンを暗槓した。
「ロン」「国士です」俺は手が震えていた。国士の1ピン待ち。
アナ公がボソッとつぶやいた「こんなところでア○ル破りに出会うとは・・・・・・」
「ひげ店長」も「よっぱらいジジイ」もビックリしていた。
逆転トップ最高だ。俺は幸運を満喫した。
次の半荘、さすがにアナ公はボロボロだった。
最終局、アナ公はドベラスだった。前局の国士が尾を引いているのが見え見えだ。
みんな手が進まず、流局寸前にアナ公がリーチ
見え見えの1ピン待ち。当然、誰も出さない。
アナ公が珍しく力を込めてハイテイ牌をツモった。
「ツモ」アナ公の手が震えていた。
「リーチ1発ハイテイツモ、イーピンラオユエ」ドラが乗らずハネ満だった。
トップに届かず、おしくも2着。
なんとか逃げ切りトップの俺。
アナ公がツモった1ピンをしみじみと眺めている。
その姿にアナ公の1ピン愛を感じた。俺は少し感激していた。
強い相手だ、次は負けるかもしれない、たぶん負けるだろう。
でも、良い勝負をした。
キザのイケメン野郎だが、友になれる気がする、それほどの濃い戦いだった。
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