カプセル勇者は三分間だけ暴れまわる

ばうどらて

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婚約破棄はパーティーで その7

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「うーん、ゲームマスターの直接介入が必要な事態なんでしょうか?」
 と俺が言えば、
「必要というほどではないですが、祠をすぐに破壊しようというのがダンくんの直観の導く最適解であるならば、それに従うのが良いかとも思いました」
 とかゲームマスターが言う。

「俺は前にいた世界で寝込みを襲われて殺されてますからね。俺の直観もそんなにあてにはなりませんよ」
 俺は苦笑する。俺の直観が常にちゃんと仕事をしていたら、魔王を倒した帰り道の宿で、王太子の護衛たちに裏切られ殺されたりはしなかっただろう。まあ、あれはあの世界の神と神の加護持ちが敵に回った特殊な事例だったが。

「それでも直観で判断していいなら——誰かがカプセルを割らなくても俺が顕現可能ってことを、この世界の人たちに知られたくない気がします。何となくですが」

「知られたくない人たちには浄化の聖女さんやピートくんも含まれますか?」
「そうですね。俺は不要と彼らが判断しているタイミングで、のこのこと登場するのはどうかと思いますし。本当に緊急事態の場合は別として」

 俺はゲームマスターをじっと見つめる。
「有体に言ってしまえば俺はこの世界の人間に、これぞ仲間と思える者を見つけることができていないんです」
 ゲームマスターは応える。
「前の世界の勇者パーティーのようにはいきませんか。信頼関係を築くには三分間という途切れ途切れな接触時間は短すぎるのでしょうか」

「あの勇者パーティーのメンバーみたいな奴らだったら、俺の鎧や盾や剣が攻撃を反射するからといって同士討ちの心配は要らないんです。各人の存在の強さとでも言いましょうか。
 ピートくん——というより彼を仲立ちにした暁の狩人や前辺境伯との共闘には、情報交換や役割分担の取り決めなどに時間をかける必要があるでしょうね、お互い足手まといにならないように。正直なところ、そこまで手間暇をかけたくない気がします」と俺は言う。

「率直なご意見ですね。浄化の聖女さんの方は?」とゲームマスター。
「俺を不殺主義と誤解してないかが懸念点ですね。あ、そう言えば第二王子ですか、魔道具破壊のついでに死なせてしまったのは、まずかったでしょうか?」

「いいえ。むしろ良くやってくださったと思います。
 浄化の聖女さんの言っていた『人を殺すためにカプセルを割ったのではないのに』とかは気にしないでください。彼女は第二王子と面識がありました。知り合いが目の前で血を流して死んだことにショックを受けたのでしょう」

 ゲームマスターの言葉に俺は納得した。
「なるほど。聖女だから人命重視かと思いましたが、本当に人命第一なら結婚パーティーのときのカプセル割り王子に倣って、避難させるべき人の誘導を優先するのが本来ではないかとモヤモヤしてたんですよ」



 とか話しているうちに、俺は卒業記念パーティーに顕現。
 まあゲームマスターとの謁見の間から会場の様子はチラチラ見ていたけどね。

 前回、このパーティー会場から消える前に俺は王太子の王女にこう言い残しておいた。

——あなたの力を全て使って、会場にいる人たちの持っている魔道具の回収を
  お願いします。勝手に起動させちゃだめですよ。俺が消えた後もフェンリル
  の指示に従ってくださいね

 俺はフェンリルに話し掛けた。
「指示の仕方が今ひとつだったかと反省したんだ。
 この王女さんの魅了の力で魔道具を回収しようと思ったんだけど、考えてみれば眠らせた奴らは魅了の対象外で。そいつらからこそ魔道具を没収しないといけないのにな」

「我が起こすまで眠っていろと命じていたな。どうする? 起こすか?」
 とフェンリルが聞く。
「いや、眠らせたまま身につけているものを調べる方が楽だと思う」
「まるで追い剥ぎであるな」

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