王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。

タヌオー

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039 告白

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俺がシェリル奪還を果たしてラノアール王宮の広場に降り立つと、シシリーが空間魔術で光の輪を描き、みんなでそこを通ってカーライルに帰り着いた。

カーライルの王様は俺たちの帰還を大いに喜ぶとともに、ラノアール王国に攻め込んで滅ぼすことを宣言したが、俺が必死に頼み込んで撤回してもらった。

「なぜだ!ティモシー殿!お主をこんな目に合わせた国をなぜかばう!」

王様はそう言ったが、俺には考えがあった。

「あの国も今の王政が滅んで、カーライルに統治してもらったほうが民は幸せになるでしょう。ですが、それは一時的なものです。また今のように権力が腐敗するかもしれませんし、何か別の問題が起きるかもしれない。少なくとも、誰かに与えられた幸福は決して長くは続かないのは確かです」

カーライル王はやや苛立った様子を見せた。

「だがそれでは一体どうしろと言うのだ」

俺は言葉に力を込めて言った。

「民衆の力を信じてください」


…………………………………………


カーライル王宮からの帰り道、レミーは俺に「でも民衆の力を信じるって言っても、実際どうするんですか?ただ放置するだけじゃないですよね?」と尋ねた。

その質問を受けて、俺はラノアール王国を出ることを決めた時からぼんやりと考えていた魔導具のアイデアをレミーに伝えた。

もしこういうものがあったら、市民たちの王宮への不平不満が共有・拡散されて、この国は終わってしまうんじゃないかなと思った魔導具のアイデア。

「うまく伝わるか、わからないんだけど」と前置きしてから俺は話し始める。

「例えば腕輪型とかで身につけられるようなものか、またはポケットに入れて持ち運べるくらいの大きさなんだけど。それを使えば、どれだけ離れていても音声も映像も文字も図版も制限なく送受信できて、しかも送受信した情報が蓄積していって、必要な時に取り出したり他の人に共有することができるような、そんな魔導具があるといいと思ったんだよね」

なんだか、自分で言ってて混乱してきた。

「う~ん、説明が難しいな。ちょっとわかりにくいよね。でも俺は、そういう魔導具でみんなが繋がれたら、民衆が悪政を打ち倒す力になるんじゃないかと思ったんだけど」

レミーが何度も頷いている。

「いや、よくわかりますよ」

そう言ったあとで、レミーは独り言を呟いた。

「要するに、スマホってことか…」




すまほ?

何それ?


…………………………………………


俺とレミー、それにシシリー、シェリルは、自宅2Fのリビングでソファに座っている。
バーグルーラは本棚の上で眠そうにしている。もはやここが彼の指定席だ。

座って落ち着くと、レミーが先ほどの独り言の意味を教えてくれた。

レミー・カーネリアンは異世界から転移して来たのだと告白した。

彼女の本当の名前はカネムラ・レミ。
カネムラのほうがファミリーネームだそうだ。

ちょうど14歳の誕生日、学校の帰りに道を歩いていたら突然、不思議な光りに包まれ、この世界にやってきたらしい。

転移した際の衝撃か何かのせいだろうか、もとは黒い髪に黒い瞳だったのが、この世界で気がついた時には赤い髪に緑の瞳という今の姿に変わっていたという。ただし髪と瞳の色以外は以前のままだそうだ。

「まあ、これはこれでかわいいから全然いいんですけどね!」

なぜかレミーは胸を張った。自分でかわいいって言うなよな。

そんなことより言語や風習の違いに戸惑うことはなかったんだろうか。

「それは意外と平気でしたね。言語は確かに私がいた世界には存在しないものでしたけど、いくつかの発音や語彙、文法構造から少なくともインド・ヨーロッパ祖語に分類できるものだとは思ったのですぐに理解できましたし、風習も多くの人々の顔立ちや体型にコーカソイドの形質的特徴が見られたので、たぶん大昔にヨーロッパから同時期にまとめて転移した人たちが作り上げた文化かなって推測できたのですぐに順応できました」

そこまで早口で説明を終えるとレミーは水を一口飲んだ。
俺には理解できない単語が多かった。

「でも少し問題だったのは、私が魔術をまったく使えないことでしたね。私のいた世界では魔力という概念がなかったので、この世界に来ても私はやっぱり魔術なんか全然使えなかったんです」

それはずいぶん苦労したことだろう。
この世界では、得意不得意はあれど、まったく魔術が使えない人間は基本的にいない。

例えば竈門に火をつけるのも初歩の炎系魔術を使うものだし、ある程度の年齢になったら母が娘にそれを教えるということは、この世界の人間たちの風習のひとつでさえある。
簡単な怪我や病気さえも初歩の回復魔術すら使えないとなれば、下手すれば命に関わることもあるかもしれない。

だからレミーはそれを補うため、必死に魔導具の作り方を勉強したのだそうだ。
そして覚えてしまってからは、もといた世界の知識がおおいに役に立ったという。

例えば、この世界には魔光爆炎砲サイコバズーカのように人が肩に担いで扱える大砲というものはないし、魔光斉射砲サイコマシンガンのような連射式の銃もない。
銃そのものはあるにはあるが実用性に乏しく、武器としてはあまり一般的ではない。

それらはすべて、レミーがいた異世界で普及していたものだそうだ。

先日の音楽会のあとに披露した録音再生装置アウディオマキナも、レミーの世界にあった道具を模しているものらしい。

「ちなみにティモシーさんの魔導兵装サイコスーツも、私がいた世界で流行ってた有名な物語からアイデアをもらってるんですよ!まあ、その物語の主人公はめっちゃ男前なので、ティモシーさんとは全然違いますけどね!」

だそうだ。一言多いよ。
何もそんな有名な物語の主人公と比べなくてもいいじゃないか。
まあ確かに、俺のこの人生という物語は俺のものでしかないので、主人公は俺1人だけど。

いずれにしても、「スマホ」というものはレミーがいた世界では当たり前に身の回りにあるものであって、それがまさに俺が先ほど伝えた魔導具のイメージに近いのだそうだ。

「確かに作れたらめちゃくちゃ便利になりますね。というか…」

レミーは少し考え込んでから言った。

「世界が変わるはずです」
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