王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。

タヌオー

文字の大きさ
44 / 100

044 旅立ちの理由

しおりを挟む
「人間たちの国に、私たち以外にもエルフがいたなんて…」

マリアたちに我が家へと連れてこられたエルフの姉妹、モモとネネは、シシリーの姿を見て驚いている。

モモとネネの姿は、先日の音楽会で見たものとはまったく違うものだった。
あの時は魔導具で姿を変えていたのだろう。
今の二人は明らかに普通の人間の姿ではなく、スラリと背が高く色白で、絹のように美しくまっすぐな長い髪に尖った耳。噂に聞くエルフの姿そのものだった。
もちろんシシリーもエルフなのだが、小柄でキュートな感じのシシリーは方向性がやや異なる。

2Fリビングのソファには、マリアたち3姉妹とモモとネネ、そしてシシリーが座っている。
俺はレミー、シェリルとともに、ソファの横に小さな椅子を持ってきて腰掛けている。
バーグルーラはいつもの本棚の上だ。

ちなみに酒場で一緒だったジョシュアとベアは、ベアがエレンに告白できたことに満足して、宿屋へと帰っていった。

「アタシも、エルフの生き残りに会えて嬉しいよ!」

シシリーは、ソファから身を乗り出してモモとネネの手をとって喜んだ。

エルフたちの会話を静かに聞いていたシェリルが「…それで」と切り出した。

「あなたたちの旅の目的を教えてくれないかしら。決して他言はしないわ」

その言葉を聞いてモモとネネはお互いの顔を見合わせて息を呑んだ。

「実は…」

二人が話してくれた旅の目的と経緯は以下の通りだった。

俺たちが住む人間大陸の遥か北方、かつてエルフの間で「約束の地」と呼ばれた深い森の中に、エルフたちの隠れ里がある。
そこで誰にも邪魔されることなく平和に暮らしていたが、ある日モモとネネの祖母が不治の病にかかる。
ゆうに1000歳を超えるという祖母だが、エルフの寿命はさらに長い。
エルフの中では高齢者と呼ぶには早く、まだまだ長生きしてもらわなければならない最愛の祖母の病を、どうにか治すことができないかとモモとネネは考え、病を治療できる薬を探すため、周囲の制止を振り切ってエルフの隠れ里を出立する。
もともと音楽好きだったため備えていた演奏技術で路銀を稼ぎ、エルフであることを隠しながら人間の街をいくつも転々とし、薬の情報を探す。

そして辿り着いたのが、このカーライル王国。
一見平和に見えるカーライルの街の裏側では、闇組織がうごめき、龍醒香薬ドラグドラッグと呼ばれる麻薬が蔓延している。
悪いものが集まるところには、得てして多くの情報も集まる。
そうしてモモとネネはこの街で祖母の病を治す薬の情報を得た。

「それが、ペールポートという港町でとれる、満月貝という貝なんです」

満月貝。
ここカーライルから馬車で南へ2週間。港の街ペールポートで満月の夜にだけ、とることができるという希少な貝。
それが祖母の病を治す薬の原料になるのだそうだ。

「なるほどね」とシェリルが言う。

「事情はわかったわ。ただし近年、ペールポートでは不漁が続いているそうよ。その満月貝も手に入れられるかどうかはわからないわね」

さすがシェリルはラノアール王国の中枢にいただけあって事情通だ。
俺なんか目の前の仕事で手一杯で、ラノアールにいた10年間は外の情報なんか何も触れることができなかったというのに。

「まあ、それでも行ってみるしかないんじゃないですかね?」とレミー。

その言葉にシェリルとシシリーも頷いている。

「それもそうね」
「行くだけ行ってみようよ!ダメでもアタシの空間魔術で帰ってこれるし!」

バーグルーラも本棚の上から薄っすらと目を開けて言う。

<今度は南か。面白そうだな>

モモとネネはみんなの言葉に、手を取り合って笑顔になる。

「ありがとうございます!このご恩は必ずお返しします!」

マリアたち3姉妹も揃って頭を下げる。

「助かります!モモとネネをよろしくお願いします!」



行く流れだ。

これはもう完全に、行く流れだ。

だが待って欲しい。
俺はドワーフの鉱山へと旅をした1ヶ月間のことを思い返していた。

次々にあらわれる魔物たちを、レミー、シェリル、シシリー、バーグルーラの4人が次々と打ち倒し、かたや俺は馬車の中で何もすることのなかった1ヶ月。

なすすべもなくヒマに打ち震えるばかりの無為の時間。
あれはもういやだ。

恐る恐る俺が切り出す。

「今回はさ、俺は別にいいよね…?あ、もちろん何か必要になったら呼んでくれたらすぐ行くからさ!ほら、シシリーの空間魔術でパッと行けるじゃん!どうせ道中の魔物なんて俺がいても足手まといなだけだし!うん、俺は邪魔にならないように家にいるよ!馬車だって狭いしさ!俺がいないほうが広く使えていいでしょ!ね!」

全員がしばし無言で俺を見てから、それぞれ口を開く。

「なに言ってんですか!ダメに決まってるでしょ!」
「ティモシーもいたほうが楽しいよ!」
「理由や役割はさておき、一緒に行くべきね」
<旅は道連れ、というではないか>

総じて言えば、やはり「なんかダメ」といった理由で、俺は今回も連れ回されることとなってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...