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空白

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彼女が正体を消してから
1年が経っていた。
未だに彼女がどこに行ったのかを
僕は知らない。
体育祭も文化祭もクラスメイトと一緒に
まわった。
それはそれで楽しかった。
けど、やっぱり何かが足りなかった。
その何かなんて明白だ。
そう、君がいない。ただそれだけだ。
僕は毎日後悔した。
後悔する度に僕の心は空っぽになった。
そして何も考えられなくなった。
僕は心の底から笑うことが出来なかった。
僕はほぼ日課となってしまっていた、
彼女の家の前に来ていた。
「ガチャ」 鍵が開く音。
僕は君なんじゃないかと思った。

彼女の家から出てきたのは
彼女の母親だった。
「あら、久しぶりね。」
「お久しぶりです。」
そこでしばし静寂が訪れた。
僕はどうしても聞きたかった。
彼女がどこに行ったのかを。
「彼女は元気にしていますか?」
ついに言ってしまった。
彼女の母親は悲しそうな顔をして僕に聞いた
「今からちょっと時間ある?」
「あります。」
「行きたい場所があるから着いてきて。」
「わかりました。」
彼女の母親は1度家に戻り、
何かを取ってきた。
「じゃあ、行きましょうか。」
僕はどこに行くかも知らずに着いて行った。

商店街を抜けた先、山があり、森がある。
僕はなぜだ?と思った。
あそこの場所は僕と彼女しか知らない。
そう、あの桜の木の場所に向かっていた。
どうしてだ?僕は心の中で思った。
あそこは誰にも教えないと約束したからだ。

そして綺麗な桜の木の下まで着いた。
1年ぶりの場所だった。
いつ見ても綺麗だった。
彼女の母親は重たい口を開いた。
「これを見てほしい。」
僕に渡されたのは1つの日記と
ちょっと古いボイスレコーダーだった。
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