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饅頭
饅頭 ―肆―
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その日、見世物小屋は終いとなった。
もう陽が落ちてしまう。甚吉は茜色の空を見上げながら考えた。
まんじゅう屋だってよほど売れ残っていない限りは店じまいだろう。
けれど、こんな時刻にならないと甚吉も体が空かないのだ。それでも、下っ端の甚吉には、勝手気ままに出歩ける自由はない。
さて、どんな口実を作って外へ出ようか――
マル公に知恵を借りようかと思ったその時、寅蔵親分の胴間声が葦簀の裏から飛んできた。
「おい、莨を切らしたから誰かひとっ走り行ってきなッ」
甚吉はその途端、我先にと声を上げた。
「へいッ、おれが行きやす」
葦簀をめくって手を上げた甚吉に、中にいた口上の長八たちも少し驚いていた。
使いっ走りは、実のところ皆が行きたい役割だ。その帰りに買い食いをしたり、ささやかな楽しみがある。
以前の甚吉は名指しで言われない限り、自発的に買い出しには行かなかった。行きたいやつが行けた方がいいと思っていたから。
けれど、今日ばかりは譲れない。
「おお、急げよ」
寅蔵親分は誰でもいいのだ。煙管を咥えつつ、適当に手をヒラヒラと振った。甚吉は根付のついた莨入れを受け取ると、頭を下げてから急いで外に出た。
その勢いで広小路を駆け抜ける。そうしてまず、莨屋の茶染め暖簾を探した。肝心の莨を買い忘れて手ぶらで戻ろうものなら、ひと晩くらいは外へ叩き出されそうだ。
たまにしか買い出しをしない甚吉はうろ覚えではあったけれど、紺木綿の暖簾が続く中莨、屋の茶色がよく目立つ。なんとかその暖簾を潜ることができた。
「すいやせん、寅蔵座の親分から莨を買ってくるように言いつかりやした」
莨独特の匂いがツンと鼻先をかすめる。
すると、中にいた初老の店主が板敷の上で振り返った。
「おお、寅蔵さんとこの。ちょいと待ちな」
莨屋は馴染みの客の好みを、帳面を見ずとも熟知しているのか、サササ、と手早く莨入れに詰めて寄越してくれた。
「ほらよ」
「ありがとうごぜぇやす」
甚吉はそれを受け取って懐に仕舞うと、それから丁寧に頭を下げた。代金は掛け取りのつけ払いだ。
――さあ、これで用は済んだ。まんじゅうを買いに急がねば。
甚吉は気を取り直して通りに出た。
やはり、陽が沈みかけるこの時刻、店を閉めようと暖簾をしまう奉公人の姿がちらほらと見える。
甘い匂いを頼りに、まんじゅうを買えそうな店を探した。
けれど、海怪まんじゅうを見つけた先は店ではなく、屋台であった。この時刻であるけれど、屋台の軒下の台上に、真砂太夫がくれたのと同じ蕎麦まんじゅうが鎮座していたのだ。
数は――十七個。この時刻にしては売れ残っている方なのか、よくわからない。それでも屋台の店主はまるで焦る様子もなく、床几に腰かけて手元の帳面に視線を落としている。
年の頃は三十路にはまだ少し間があるだろうか。つるりとした卵のような顔からそれが窺えた。耳に小筆を挟み、帳面を眺めて口をへの字に曲げている。
やはり、まんじゅうが売れずに採算が合わないのかもしれない。ここのまんじゅうは――もしかすると不味いのだろうか。
甚吉はそんな失礼なことまで考えてしまった。けれど、この時間から他のまんじゅうを探せる気がしなかった。甚吉は恐る恐る屋台へと、吸い寄せられるようにして近づいていく。
甚吉がにじり寄っても、店の店主は気づかない。これでは客も逃がすだろう。甚吉は、店主に声をかける前にザッと並んだまんじゅうに目を向けた。
その顔は、当のマル公に不細工だと激怒されたあの顔と同じものであった。真砂太夫はこの屋台でまんじゅうを買い求めたのだろうか。他の店のまんじゅうを知らない甚吉にはそうとしか思えなかった。
いや、そうであってほしい。次に顔を合わせた時に、目をそらさずに礼と感想を述べるためにそうであってほしい。
甚吉は逸る気持ちで店主に声をかけた。
「す、すいやせんッ」
けれど、店主は小首をかしげ、帳面を掲げてみたり、片目をつむって眺めてみたりするのに忙しい。甚吉は、自分の影の薄さを悲しく思いながらもう一度頑張った。
「すいやせんッ」
すると、店主はようやく甚吉に気づいてくれた。眉の離れた、なんとも柔和な顔立ちであった。
「あいよ、なんか用かい」
店先にまんじゅうを並べておいて、声をかけられたのに要件を訊ね返す。甚吉は客には見えぬほどみすぼらしいのかとへこたれそうだった。消え入りそうな声でつぶやく。
「ま、まんじゅうをふたつ、くだせぇ」
すると、店主はうぅん、と唸った。
「坊や、このまんじゅうを買ってくれるってぇのかい」
「へ、へい。銭ならそれくらいは――」
「いや、そうじゃあなくて。このまんじゅう、何に見える?」
甚吉は思わず目を瞬かせた。ぐりぐりとした大きな目、ピンと小生意気な髭。マル公を模したまんじゅうだろうに。
「見世物小屋の海怪――じゃあねぇんですかい?」
すると、店主はのんびりとした顔をパッと顔を輝かせた。
「そうか、そう見えるかい。いや、ね、まんじゅうが急に売れなくなってきたから、もしかすると俺よりも上手に海怪に似せてまんじゅうを作れる店があるんじゃあないかって思えてね。もっと似せるにはどうしたらいいか考えていたのさ」
その努力は買うけれど、できることなら店じまいをしてから考えた方がいいのではないだろうかと甚吉が思ったのは内緒である。
「まんじゅうは味も大事だけれど、味の前に見た目がよくなくちゃ、まず食べてもらえねぇからなぁ。うん、見た目は大事だ。さあ、どうしたものやら」
やる気がないのかと思ったら、なかなかに熱心な店主であった。
甚吉はふと、店主の手元の帳面に描かれた線画を見てしまった。大きな丸、その中に目と髭。しかも、売られているまんじゅうよりも髭を数本書き足してある。あれだけ悩んで髭しか描き足せていないらしい。
――この画を見たら、多分マル公は怒り狂うだろう。甚吉が思わず噴き出したくなったことも含め、マル公には秘密にしておこう。
「その、ちょっと髭が多すぎやす。ええと、目の上に眉みたいにチョン、と印をつけてやればもっと似ると思いやす」
毎日マル公と顔を突き合わせている甚吉だ。誰よりもその特徴はよくわかっている。
店主は、ああ、と手を打つと、耳に挟んでいた乾ききった筆先でチョンチョン、と画のマル公に印をつけた。それだけでぐっとしまりが出る。店主もそれを感じたようで、目をキラキラと輝かせた。
「おおッ。坊やは天才だな。恐れ入った。礼と言っちゃぁなんだが、まんじゅう代は要らねぇよ。持ってきな」
店主は床几から立ち上がると、甚吉の両手にまんじゅうをひとつずつ握らせた。
「そんな、ふたつも――」
「どうせ今日はもう売れねぇ。いいってことよ」
ニカ、と笑って店主は言った。売れ残るというのなら、甚吉はその厚意に甘えることにした。
「ありがとうごぜぇやす。おれは甚吉ってぇ、見世物小屋の海怪の世話役で」
「ああ、それは奇縁な。いや、実は俺はまだ海怪を見たことがなくってなぁ、助かったよ」
まんじゅう屋にとって、マル公にかかる見料は安いものではないのかもしれない。つまり、看板の絵でも見ながらなんとなく作ったまんじゅうなのだろう。
甚吉はクスリと笑った。
「まんじゅうがもっと売れたら、いつか見世物小屋に来てくだせぇ。海怪は、そりゃあ可愛い生き物なんで」
――口はべらぼうに悪いけれど。
その事実は呑み込んだ。
「俺は『巽屋』の嘉助ってぇんだ。近いうちには海怪に会いにいきてぇな。ありがとよ、甚吉」
礼を言われるほどのことはしておらず、まんじゅうをふたつももらってしまった甚吉の方が恐縮してしまう。けれど、嘉助はニコニコと手を振って上機嫌で甚吉を見送ってくれた。
このまんじゅうをその海怪が食うとは、さすがの嘉助も思ってはいないのだろうけれど。
人柄のいい店主だった。またまんじゅうを買いに来よう、と甚吉は袖にふたつのまんじゅうを仕込んで帰路についた。
もう陽が落ちてしまう。甚吉は茜色の空を見上げながら考えた。
まんじゅう屋だってよほど売れ残っていない限りは店じまいだろう。
けれど、こんな時刻にならないと甚吉も体が空かないのだ。それでも、下っ端の甚吉には、勝手気ままに出歩ける自由はない。
さて、どんな口実を作って外へ出ようか――
マル公に知恵を借りようかと思ったその時、寅蔵親分の胴間声が葦簀の裏から飛んできた。
「おい、莨を切らしたから誰かひとっ走り行ってきなッ」
甚吉はその途端、我先にと声を上げた。
「へいッ、おれが行きやす」
葦簀をめくって手を上げた甚吉に、中にいた口上の長八たちも少し驚いていた。
使いっ走りは、実のところ皆が行きたい役割だ。その帰りに買い食いをしたり、ささやかな楽しみがある。
以前の甚吉は名指しで言われない限り、自発的に買い出しには行かなかった。行きたいやつが行けた方がいいと思っていたから。
けれど、今日ばかりは譲れない。
「おお、急げよ」
寅蔵親分は誰でもいいのだ。煙管を咥えつつ、適当に手をヒラヒラと振った。甚吉は根付のついた莨入れを受け取ると、頭を下げてから急いで外に出た。
その勢いで広小路を駆け抜ける。そうしてまず、莨屋の茶染め暖簾を探した。肝心の莨を買い忘れて手ぶらで戻ろうものなら、ひと晩くらいは外へ叩き出されそうだ。
たまにしか買い出しをしない甚吉はうろ覚えではあったけれど、紺木綿の暖簾が続く中莨、屋の茶色がよく目立つ。なんとかその暖簾を潜ることができた。
「すいやせん、寅蔵座の親分から莨を買ってくるように言いつかりやした」
莨独特の匂いがツンと鼻先をかすめる。
すると、中にいた初老の店主が板敷の上で振り返った。
「おお、寅蔵さんとこの。ちょいと待ちな」
莨屋は馴染みの客の好みを、帳面を見ずとも熟知しているのか、サササ、と手早く莨入れに詰めて寄越してくれた。
「ほらよ」
「ありがとうごぜぇやす」
甚吉はそれを受け取って懐に仕舞うと、それから丁寧に頭を下げた。代金は掛け取りのつけ払いだ。
――さあ、これで用は済んだ。まんじゅうを買いに急がねば。
甚吉は気を取り直して通りに出た。
やはり、陽が沈みかけるこの時刻、店を閉めようと暖簾をしまう奉公人の姿がちらほらと見える。
甘い匂いを頼りに、まんじゅうを買えそうな店を探した。
けれど、海怪まんじゅうを見つけた先は店ではなく、屋台であった。この時刻であるけれど、屋台の軒下の台上に、真砂太夫がくれたのと同じ蕎麦まんじゅうが鎮座していたのだ。
数は――十七個。この時刻にしては売れ残っている方なのか、よくわからない。それでも屋台の店主はまるで焦る様子もなく、床几に腰かけて手元の帳面に視線を落としている。
年の頃は三十路にはまだ少し間があるだろうか。つるりとした卵のような顔からそれが窺えた。耳に小筆を挟み、帳面を眺めて口をへの字に曲げている。
やはり、まんじゅうが売れずに採算が合わないのかもしれない。ここのまんじゅうは――もしかすると不味いのだろうか。
甚吉はそんな失礼なことまで考えてしまった。けれど、この時間から他のまんじゅうを探せる気がしなかった。甚吉は恐る恐る屋台へと、吸い寄せられるようにして近づいていく。
甚吉がにじり寄っても、店の店主は気づかない。これでは客も逃がすだろう。甚吉は、店主に声をかける前にザッと並んだまんじゅうに目を向けた。
その顔は、当のマル公に不細工だと激怒されたあの顔と同じものであった。真砂太夫はこの屋台でまんじゅうを買い求めたのだろうか。他の店のまんじゅうを知らない甚吉にはそうとしか思えなかった。
いや、そうであってほしい。次に顔を合わせた時に、目をそらさずに礼と感想を述べるためにそうであってほしい。
甚吉は逸る気持ちで店主に声をかけた。
「す、すいやせんッ」
けれど、店主は小首をかしげ、帳面を掲げてみたり、片目をつむって眺めてみたりするのに忙しい。甚吉は、自分の影の薄さを悲しく思いながらもう一度頑張った。
「すいやせんッ」
すると、店主はようやく甚吉に気づいてくれた。眉の離れた、なんとも柔和な顔立ちであった。
「あいよ、なんか用かい」
店先にまんじゅうを並べておいて、声をかけられたのに要件を訊ね返す。甚吉は客には見えぬほどみすぼらしいのかとへこたれそうだった。消え入りそうな声でつぶやく。
「ま、まんじゅうをふたつ、くだせぇ」
すると、店主はうぅん、と唸った。
「坊や、このまんじゅうを買ってくれるってぇのかい」
「へ、へい。銭ならそれくらいは――」
「いや、そうじゃあなくて。このまんじゅう、何に見える?」
甚吉は思わず目を瞬かせた。ぐりぐりとした大きな目、ピンと小生意気な髭。マル公を模したまんじゅうだろうに。
「見世物小屋の海怪――じゃあねぇんですかい?」
すると、店主はのんびりとした顔をパッと顔を輝かせた。
「そうか、そう見えるかい。いや、ね、まんじゅうが急に売れなくなってきたから、もしかすると俺よりも上手に海怪に似せてまんじゅうを作れる店があるんじゃあないかって思えてね。もっと似せるにはどうしたらいいか考えていたのさ」
その努力は買うけれど、できることなら店じまいをしてから考えた方がいいのではないだろうかと甚吉が思ったのは内緒である。
「まんじゅうは味も大事だけれど、味の前に見た目がよくなくちゃ、まず食べてもらえねぇからなぁ。うん、見た目は大事だ。さあ、どうしたものやら」
やる気がないのかと思ったら、なかなかに熱心な店主であった。
甚吉はふと、店主の手元の帳面に描かれた線画を見てしまった。大きな丸、その中に目と髭。しかも、売られているまんじゅうよりも髭を数本書き足してある。あれだけ悩んで髭しか描き足せていないらしい。
――この画を見たら、多分マル公は怒り狂うだろう。甚吉が思わず噴き出したくなったことも含め、マル公には秘密にしておこう。
「その、ちょっと髭が多すぎやす。ええと、目の上に眉みたいにチョン、と印をつけてやればもっと似ると思いやす」
毎日マル公と顔を突き合わせている甚吉だ。誰よりもその特徴はよくわかっている。
店主は、ああ、と手を打つと、耳に挟んでいた乾ききった筆先でチョンチョン、と画のマル公に印をつけた。それだけでぐっとしまりが出る。店主もそれを感じたようで、目をキラキラと輝かせた。
「おおッ。坊やは天才だな。恐れ入った。礼と言っちゃぁなんだが、まんじゅう代は要らねぇよ。持ってきな」
店主は床几から立ち上がると、甚吉の両手にまんじゅうをひとつずつ握らせた。
「そんな、ふたつも――」
「どうせ今日はもう売れねぇ。いいってことよ」
ニカ、と笑って店主は言った。売れ残るというのなら、甚吉はその厚意に甘えることにした。
「ありがとうごぜぇやす。おれは甚吉ってぇ、見世物小屋の海怪の世話役で」
「ああ、それは奇縁な。いや、実は俺はまだ海怪を見たことがなくってなぁ、助かったよ」
まんじゅう屋にとって、マル公にかかる見料は安いものではないのかもしれない。つまり、看板の絵でも見ながらなんとなく作ったまんじゅうなのだろう。
甚吉はクスリと笑った。
「まんじゅうがもっと売れたら、いつか見世物小屋に来てくだせぇ。海怪は、そりゃあ可愛い生き物なんで」
――口はべらぼうに悪いけれど。
その事実は呑み込んだ。
「俺は『巽屋』の嘉助ってぇんだ。近いうちには海怪に会いにいきてぇな。ありがとよ、甚吉」
礼を言われるほどのことはしておらず、まんじゅうをふたつももらってしまった甚吉の方が恐縮してしまう。けれど、嘉助はニコニコと手を振って上機嫌で甚吉を見送ってくれた。
このまんじゅうをその海怪が食うとは、さすがの嘉助も思ってはいないのだろうけれど。
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