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2◆甘えん坊のチキ
◆1
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トラさんが僕のところへ来た翌日のこと。
カリカリカリカリ。
戸に爪を立てる音がした。あー、はいはい、戸が傷つくからやめて……
僕は慌てて玄関の戸を開けた。
そこにいたのは、まだ若いノルウェージャンフォレストキャットのオスだった。レッド&ホワイトのバイカラー。
つまりが明るい茶色と白の毛を持ってる。毛は長い。それがなくてもこの品種はちょっと大きめの猫だ。
血統書つきの猫が僕のスタッフ募集の声に名乗りをあげたとは考えにくいけど、とりあえず話だけでも聞いてみる。
「こんにちは」
僕が屈んで声をかけると、その子は目を真ん丸にして僕を見上げた。
にゃっ。
こんにちは、と挨拶を返してくれた。
「ええと、今日はどうしたのかな?」
にゃーあ。
「え? 面接に来たの?」
にゃっ。
「そっか。でも、飼い猫はスタッフにできないよ。飼い主が心配して捜すから」
すると、その子は目に見えてしょんぼりした。やっぱり、飼い猫なんだ。どう見たって野良じゃない。
そう思ったんだけど、それは違った。
「……捜さないって?」
なんでそんなこと言うんだろ?
そんなことを思った僕はのん気だったのかもしれない。
にゃーあ。
「要らないって言われたから? ……まさか」
にゃっ、にゃっ。
「ケットショーついてるから雇ってって? ケットショーじゃなくて、ケットウショね。いや、そんなのどうでもいいんだけど」
大体、持ってきてないよね。身ひとつで来てるし。
この子はペットショップでお金を払って買った子だろうに。それでも捨てたっていうのかな?
「まあいいや、とりあえず中に入りなよ。話を聞くから」
僕はその子をアパートの中へ入れた。出窓に鎮座しているトラさんが目に入ったらしく、その子は何度か丸い目を瞬かせた。トラさん、威圧感があるから。
――と思ったけど、怖がっているふうでもない。興味津々でトラさんを見ていた。
もしかすると家の中だけで飼われていて、あんまり他の猫と接したことがないのかもしれない。
「えっと、君の名前は?」
僕はトラさんの時のように座布団を差し出した。その子はそこに伏せたけれど、なんとなく座布団が小さく見える。大柄でも顔には愛嬌があった。
にゃっ。
「そうか、チキっていうんだね」
チキは大きくうなずいた。素直そうな子だな。
「ええと、チキは猫カフェの仕事内容は把握してるのかな?」
にゃ? と首を傾げられた。
はい、わかってない。
「猫の好きな人たちが来るから、その人たちに愛想を振り撒いてほしいんだ。人間にナデナデされたり抱っこされたりするんだけど、そういうの平気かい?」
その途端、チキはすごくびっくりしていた。座布団の上で飛び上らんばかりに体を起こす。
「あ、チキもそういうの苦手だった?」
トラさんも苦手なんだよなぁ。皆して苦手はちょっとマズイかも。
僕がそう考えたのは早計だった。チキは目を爛々と輝かせ、前足をパタパタと動かしてみせる。
にゃっにゃっ! えらく興奮して……
抱っこ! 抱っこしてもらえるのっ? ナデナデしてくれるの? うわぁ! って。
「…………」
なんだろう、すっごい嬉しそう。
しかもテレテレし始めた。前足で顔を撫でまわしている。
「そんなに抱っこ好き?」
にゃっ!
好きらしい。これは心強い。
「そっか、それは頼もしいね――って、トラさん、そんな未知の生物を見るような冷めた目をするのやめてくれる?」
窓辺で半眼になってるトラさんに思わず突っ込んだ。タイプが全然違うもんなぁ。
「じゃあ、チキ。ここで雇うかどうかは少し話をしてから決めさせてもらうよ。チキのこと、話してくれるかな? 今までどこでどうして来たの? 飼い主たちとは何があったの? 話しづらいかもしれないけど、聞かせてほしいんだ」
浮かれていたチキは、急にまたしょんぼりとしおれた。
これは、あんまりいい話じゃないのかもしれない。
僕は覚悟を決めてチキの話を聞くのだった。
カリカリカリカリ。
戸に爪を立てる音がした。あー、はいはい、戸が傷つくからやめて……
僕は慌てて玄関の戸を開けた。
そこにいたのは、まだ若いノルウェージャンフォレストキャットのオスだった。レッド&ホワイトのバイカラー。
つまりが明るい茶色と白の毛を持ってる。毛は長い。それがなくてもこの品種はちょっと大きめの猫だ。
血統書つきの猫が僕のスタッフ募集の声に名乗りをあげたとは考えにくいけど、とりあえず話だけでも聞いてみる。
「こんにちは」
僕が屈んで声をかけると、その子は目を真ん丸にして僕を見上げた。
にゃっ。
こんにちは、と挨拶を返してくれた。
「ええと、今日はどうしたのかな?」
にゃーあ。
「え? 面接に来たの?」
にゃっ。
「そっか。でも、飼い猫はスタッフにできないよ。飼い主が心配して捜すから」
すると、その子は目に見えてしょんぼりした。やっぱり、飼い猫なんだ。どう見たって野良じゃない。
そう思ったんだけど、それは違った。
「……捜さないって?」
なんでそんなこと言うんだろ?
そんなことを思った僕はのん気だったのかもしれない。
にゃーあ。
「要らないって言われたから? ……まさか」
にゃっ、にゃっ。
「ケットショーついてるから雇ってって? ケットショーじゃなくて、ケットウショね。いや、そんなのどうでもいいんだけど」
大体、持ってきてないよね。身ひとつで来てるし。
この子はペットショップでお金を払って買った子だろうに。それでも捨てたっていうのかな?
「まあいいや、とりあえず中に入りなよ。話を聞くから」
僕はその子をアパートの中へ入れた。出窓に鎮座しているトラさんが目に入ったらしく、その子は何度か丸い目を瞬かせた。トラさん、威圧感があるから。
――と思ったけど、怖がっているふうでもない。興味津々でトラさんを見ていた。
もしかすると家の中だけで飼われていて、あんまり他の猫と接したことがないのかもしれない。
「えっと、君の名前は?」
僕はトラさんの時のように座布団を差し出した。その子はそこに伏せたけれど、なんとなく座布団が小さく見える。大柄でも顔には愛嬌があった。
にゃっ。
「そうか、チキっていうんだね」
チキは大きくうなずいた。素直そうな子だな。
「ええと、チキは猫カフェの仕事内容は把握してるのかな?」
にゃ? と首を傾げられた。
はい、わかってない。
「猫の好きな人たちが来るから、その人たちに愛想を振り撒いてほしいんだ。人間にナデナデされたり抱っこされたりするんだけど、そういうの平気かい?」
その途端、チキはすごくびっくりしていた。座布団の上で飛び上らんばかりに体を起こす。
「あ、チキもそういうの苦手だった?」
トラさんも苦手なんだよなぁ。皆して苦手はちょっとマズイかも。
僕がそう考えたのは早計だった。チキは目を爛々と輝かせ、前足をパタパタと動かしてみせる。
にゃっにゃっ! えらく興奮して……
抱っこ! 抱っこしてもらえるのっ? ナデナデしてくれるの? うわぁ! って。
「…………」
なんだろう、すっごい嬉しそう。
しかもテレテレし始めた。前足で顔を撫でまわしている。
「そんなに抱っこ好き?」
にゃっ!
好きらしい。これは心強い。
「そっか、それは頼もしいね――って、トラさん、そんな未知の生物を見るような冷めた目をするのやめてくれる?」
窓辺で半眼になってるトラさんに思わず突っ込んだ。タイプが全然違うもんなぁ。
「じゃあ、チキ。ここで雇うかどうかは少し話をしてから決めさせてもらうよ。チキのこと、話してくれるかな? 今までどこでどうして来たの? 飼い主たちとは何があったの? 話しづらいかもしれないけど、聞かせてほしいんだ」
浮かれていたチキは、急にまたしょんぼりとしおれた。
これは、あんまりいい話じゃないのかもしれない。
僕は覚悟を決めてチキの話を聞くのだった。
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