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第2部 スタートはゴール地点から 本が読みたければ稼がねば編

17 王都の商業ギルド

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「また明日きますねー」

「お待ちしてます、おみやげもどうも。みんなと食べますから。あ、《クイナト》に行かれる際は、是非うちの支店でも薬草や魚を売って頂けると助かります。《クイナト》周辺は小さいダンジョンも多い分低い階級の冒険者達や初心者も多く、冒防具の材料や薬草も不足がちです。詠斗さん達が好みそうなダンジョンもあると思いますのでよろしくお願いいたします」

「…ダンジョンか、分かった。今から行く」

「はい、《クイナト》まで転移できそうです」

「行こう、では明日」

「そんなに転移魔法を使ってよく、魔力切れ…」

ダメだ時に良からぬ好奇心は厄介事を持ち込んでくる、自分には自分の仕事があると、さっさと中に入っていった。



「ここが《クイナト》か人の通りが多いな」

巨大な壁で円を描き国の首都を守り入り口は計4ヶ所のみ、そのうち最も人通りが多く商店に直結した南門から冒険証を提示し、1,000ログの通行料を納め中に入る。

街の中心部に聳える灰色の城、そこを中心に貴族街、商人街、市民街、商店や冒険者ギルド、その他を円で城を囲む形で造られた《ロメンスギル》国の王都クイナトは人の多さもあり、《トタラナ》よりも様々な人種の密度が濃かった。

ローブを被ったいかにも魔法使い達、甲冑をガシャガシャしながら歩く集団、耳や尻尾のある獣人やドワーフ、ゲームや小説で馴染みのエルフ等多種多様な人々が活気に溢れ生活をしている。

「王都…首都、建物も多いし面白そうな物もあるがまずは…」

「ここですね、立派な建物だなぁ」

暫く歩くと正面に石造りの2階建て、《トタラナ》の商業ギルドよりも立派な建物が見えた。

入り口にも中にも人が多く、窓が大きく明るく広々とし木材と石を組み合わせて上品に造られた内部は清潔感もあり手入れが行き届いていた。

「すみません、小麦粉と砂糖など買いたいんですが」

「ようこそ、商人ギルド証はお持ちですか?」

華やかな笑顔で出迎えてくれた受付嬢にギルド証を見せようとすると、奥から声が掛かる。

「お待ちしていました。私は《クイナト》の商業ギルドのマスター兼ズィーガー商会の副支配人をさせて頂いていおります、ユナイドと申します。お見知り置きを…」

背が高くひょろりとした気配の薄い狐目の男が奥から出てくる、深々と詠斗達に頭を下げる姿はビジネスマンのような雰囲気をしていた。

「大河だ」

「詠斗と言います」

「ズィーガー様から話しは聞いています。こちらへどうぞ、茶を用意します。《ロメンスギル》は茶も美味ですよ」

ユナイドに案内され2階の最奥の応接間に通される、流石王都のギルドの一角中は日本の様な応接室に似ていた。

4対の黒い皮張りのソファの間に濃い木材を使ったテーブル、レースのクロスが敷かれその上に陶器のグラスにオレンジ色の花が生けられ、額に飾られた絵画と棚には動物の置物、壁にも備え付けの花瓶のような物がいくつかありそれぞれに青い花が1輪挿しており、香りも良く清涼感があった。

「どうぞお座り下さい」

ソファにそれぞれ座るとすぐにノックされ、盆を持った女性が陶器のカップに淹れられた茶をそれぞれの前に置き、真ん中に茶色みのある角砂糖と木の実と木の皿を置き静かに退出する。

「砂糖はお好きな数入れて飲んで下さい、私は甘党なので3個入れます」

「では…」

カップの傍に置かれた木の匙で砂糖を掬いカップに落としそのまま混ぜて飲むスタイルのようだ、使い終わった木匙は小さな皿に置くようだ。

大河は1個詠斗は2個チグリスは3個入れてかき混ぜて飲む、花の香りが鼻に抜けて美味しかった。

「美味いな」

「美味しいですね」

「おかわり」

「そうでかすか、それは良かった。注ぎますね、どうぞ」

カップを差し出し追加を要求するチグリスに快く注いでお菓子もどうぞとチグリスに勧める、狐の目の様な隙の無い男ギルドマスターというからには忙しいだろう、ズィーガーの腹心であるからには信頼は置けるだろうが年の為と大河は鑑定をしてみる ユナイド:……あの、鑑定本当にします?鑑定すると向こうに知られますけど良いですか? (良い訳あるか、そんな事出来るのか?) そういうスキル持ちですね、します? (しない、俺もそのスキルが欲しいんだが)分かりました神々に聞いておきます あ、あとスマートフォン欲しいらしいですよ 13名分 (……何をくれるかによる) 分かりました、確認しときます ……鑑定出来ない存在とは一体、後で千眼に聞くかと澄ました顔で茶を啜る。

「こちらが今うちの冷蔵倉庫や保管庫から出せる物のリストです、どうぞ」

「あ、小麦粉、砂糖、油は必要だよね…後は…何か要ります?大河さん、チグリス」

「酒、酒」

「そうだな…」

「そういえば、この《クイナト》のダンジョンの話しは聞きましたか?」

「いや」

ユナイドから借りたリストを見ながら3人で何を購入するか話し合っていると、ユナイドから興味深い話が耳に入ってくる。

「小さいダンジョンがいくつかあるんですが、人気のダンジョンが2つこの《クイナト》から少し離れた所にあるんですが…1つは鉱物ダンジョンともう1つは肉ダンジョンなんですが…」

「え!肉ダンジョン!?そんなダンジョンがあるんですか!?」

詠斗が立ち上がり興奮隠せず鼻息が荒い、そういえばこの世界は害獣はあまりいない人がいる所に獣はあまり来ないと知識にあるが、ダンジョンの知識としてはダンジョンに生息する魔獣を倒すとアイテムがドロップする、ラスボスを倒しても数時間で復活しどんなに破壊しても元に戻る位だった。

《トタラナ》の肉屋で売られている物はここから距離が大分離れているので、冒険者に依頼を出して買い取った物や罠に仕掛けたものもだが十分美味しいだからこそ気になる、あるというならばぜひとも肉ダンジョンの肉も食べてみたい。

「鉱物ダンジョンは何がドロップする?」

「はい、ではまず肉ダンジョンから説明しますね。肉ダンジョンは全7階層、各階層にボスの部屋があり倒せばアイテムドロップ勿論その過程で倒した魔獣からもランダムに肉がドロップします。ボス部屋での戦闘終了後すぐにボスが復活し、次の冒険者の戦闘を始める事ができます。戦闘中は扉が開きません、戦闘終了の合図は扉が開くことです。この法則はボス部屋に次の階層の入り口があるダンジョンは殆ど同じです。このダンジョンは次の階層に行くにはボス部屋でボスを倒さなければ進めません。ボス部屋にも出口がありますし1階層上に戻れますボスを倒さなくてもその出口は使えます。倒せば転移石が手に入り最初の入り口に戻る事ができます。また転移石使えば同じ階層から始めることができます。途中で引き返す時は壁に埋め込まれた転移石に魔力を注げば入れ口に戻れますが、この転移石は冒険者ギルドが開発し設置したもので使用する際は1人10,000ログを支払います。無論、人が入ったダンジョンの階層までにしかありません。ドロップした各階層の転移石は一往復しか使えませんが使わずに戻ってくればそれも高値で買い取りできます。この階層ですが…実は7階層しかないんですが記録上・・・未攻略でして、6階層のボスはトライラギッシュという魔獣が厄介でして、氷結魔法と火炎魔法を交互に使い3つある弱点を同時に攻撃しないと倒せないので、割に合わず低階層で肉を確保するとういうのが主流です」

確かに攻撃を避ける防ぎつつ同時攻撃をして倒して果たして得るものが大きいのか、冒険者も危険を冒して名声よりも堅実な稼ぎが大事な人間の方が多い。

「ドロップした肉はどれも美味しいですよ、下に行けば行くほど質の高い肉が手に入ります」

詠斗の目はキラキラしている、チグリスは茶菓子を全て一人で平らげ更に追加も貰い食べている、肉ダンジョンには勿論行くが、鉱物ダンジョンも気になる。

「鉱物ダンジョンは11階層、随分昔に攻略されています。最終階層のボスはラガングランという魔獣で全身が様々な鉱物が合わさって出来ています。とにかく硬く魔法攻撃はほぼ無効、ハンマー等の打撃系の武器が有効のようです。ガラスや宝石、金や銀に武器の素材なども豊富にドロップします。こちらはボスを倒さなくても階層内の奥に階段がありますのでそれ降りれば早く進めます、階層毎にボスを倒せば転移石が手に入りそれで地上に戻り体制を立て直し、また同じ階層から始める事ができます。こちらも転移石1往復分のみしか使えませんが使わずに持ち帰って頂ければ高値で買い取ります」

金儲けの匂いしかしない、ガラスは店にも使える他にも宝石や金銀等いくらでも使い勝手が良い…行く絶対行くが目の前の男の術中にまんま嵌った気がして面白くはない。

「もしいく場合は私に一言頂ければ、冒険者ギルドでの面倒な手続きはこちらで全てさせて頂きますよ」

「アンタに旨味は?」

「こちらにドロップした物を一部で構いませんので買い取りに出して頂ければそれだけで十分です」

「そうか、なら潜るときはアンタに声をかけさせてもらう」

「はい、お任せください。それ本日買い取り品等お持ちですか?」

「あ、今日はもうさっき《トタラナ》で全部買い取ってもらったので…」

「では、次回…」

「明日来る、その時買い取りを頼む。行こうか詠斗くんチグリス」

「お待ちしております、よければ商業ギルドの所有している区画を無償でお貸しするのと、テントも差し上げますので使われますか?」

「えっ、良いんですか?」

「はい、エイトさん達が発案したショルダーバッグとエコバッグをここでも制作出来るように、ズィーガー様が働きかけて下ったので、雇用の幅が広がりましたのでささやかですがお礼と言うことで」

「随分情報の伝達が早いな」

「情報も商材の1つですから、勿論外部に一切情報を漏らす事はありません。ご安心ください」

「そこは信用しておこう」

「ありがとうございます、では区画の場所とテントを渡しますのでこちらへ」



「帰りましょうか、明日ダンジョン楽しみですね。ナイルさんや千眼さんくるかな。チグリスは来るでしょ?」

「行く、肉、肉…詠斗肉今食べたい」

「戻ったらね」

「ん…」

「明日は《トタラナ》のギルドで購入手続きして、こっちに来てダンジョン攻略か…」

「戻って、パティをみんなに食べて欲しいし戻りましょう」

商業ギルドの一番端の区画を借り、テントを組み立て魔力を注ぎ中に入れば中は《トタラナ》で使っているもと同じような仕様だった。

「では、戻ります」



「人の姿をした人ではないものとドラゴン面白い組み合わせですね…」
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