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第3部 歩く路は笑顔で 余裕を持って進んでいこう

14 お店だよ

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「おーまちょった、みんなきちょる」
「おはようございます」
「オーナー!」
「兄ちゃん達ここが俺達の店か!?」
「すごい!素敵なお店」
「いいのかい?こんな立派で素敵な店で…」
ナット達家族とキッキ達の家族と仕事仲間全員が店の外観を見て感動している、すでにお互いに挨拶を交わし顔は互いに知っていたので話が進みやすいようだった。
「中に入ろう」
「ねえ、大河お兄ちゃんこの扉の隣の壁?はなんで棚みたいになっているの?」
「これは、ショーケースというんだ。ここにガラスを入れて、外のお客さんにここから商品を選んで貰って会計して商品を渡すようにする場所だ」
「わあ、すごいキッキここでパン売りたいー」
「こらキッキ、皆で売っていくお店なんだから」
「それは後で決めて行けばいい、中も見てくれ」
「詠斗、肉」
「はい、干し肉。テトラも食べる?」
「ボク、肉は食べないんだよぉ」
「あ、木苺…どうぞ」
「わ、ありがとう」
大河が案内している後ろで干し肉えねだるチグリスと、木苺を嬉しそうに食べるテトラ。
「うわ、すごい中の厨房…ここでパンをつくれたらなー」
「作るんだよ」
「この厨房の横の棚にパンを並べて販売するんですか?」
「ああ、棚の壁の所には外から見やすいようにガラスを入れる、頑丈な物だから割れにくい物だから安心して欲しい。いまのうちに直して欲しい箇所や変えて欲しい所があればドリーィガンさん達に言ってくれ」
「おう、言ってくれた直すじゃ」
「い、いえ、そんな」
「自分たちでつかうとこじゃ、しっかり使いやすいものにしてかんと!」
「は、はい」
「お、お兄ちゃんすごいよ!」
「ああ、ここが新しい店か…うう」
皆口々に感動し目を潤ませているナット達家族や、開いた口が塞がらない人に興味津々で色々みている人と様々な反応があるが、皆良好でやる気は十分そうだ。
「厨房は竈が2つ台と…本当は今日借り営業をと思ったが水回りがまだ不十分だった。水回りはこちらがやるから、明後日また来て欲しい。水回りが完成すれば営業も始められる、床も水捌けが良く掃除しやすい石をしき詰めているこの状態で水を撒いてブラシで擦っても平気だ。次は2階に行こう」
頑丈な手すりを付けて貰い軋みなどもない階段を上り、2階よりも簡素な厨房だがその代わり厨房の隣には大きな作業台が置いてあり、残ったスペースは男女別の更衣室と休憩スペースがある。
「2階はナット達のパティを揚げて貰うのに使って貰おうと思っている、この台は梱包や下ごしらえなんかに使ってくれ、あと奥のは更衣室…着替える所だな。男女別で両端から入って貰い真ん中で区切られているから入口は一か所しかない、中には棚があるから荷物はそこに置くといい、後は制服を作る」
『制服?』
「はいはーい、ボクテトラが作るよー皆の身体のサイズ計らせて」
「制服とはなんですか?」
「作業着の事だ、皆同じデザインの物を来て作業を行う。飲食店だからな作業しやすく普段着と分けた方が良い」
「な、なるほど」
「じゃ、測るねー。女の子達は皆で測り合いして紙に書いてー。はいこれ、作業しやすいようにすこしゆったり目に作ってって、りっちゃんにいわれてるからー」
メジャーで素早くテトラが計っていくメモなどもにも書いていない、女性陣には大河がメジャーを渡し使い方を説明して測って貰った。
「ありがとう、明後日には出来るからー」
「あ、ありがとうございます」
女性陣のサイズを測った紙を受け取り、詠斗達の収納に入れたキッキ達の荷物を1階で出していく。
ナット達の荷物は詠斗がチグリスと一緒に向かい収納して戻って来る頃には、1階の引っ越し作業は完了していた。
「オーナー達のお陰であっという間に終わりましたよ!」
「本当にすごいわー」
「率お兄ちゃん爪綺麗にしてくれてありがとう」
「きっきちゃんピンク良くに似合っているよ」
「えへへ」
「ナットさん達も引っ越しすませちゃいましょう」
「お、おう!」
ナット達の店の物全て回収してきた詠斗が2階でナット達の希望に合わせて竈などを置いていく、2階の床も水捌けの良い石を敷き、火事などの心配もないように火が広がらないように、壁と床には魔石を組み込んでいた。
ナット達の方は元々店も小さく、運ぶもの少ないのですぐに終わった。
「おーあっちゅう間じゃったな。外の小屋もできちょるよ」
「外の小屋は小麦粉や砂糖や油の倉庫だ、鍵は…各家庭毎に店と倉庫1つずつでか構わないか?」
「は、はい!」
「鍵の複製もやるじゃ」
「なら頼む、俺達の分も込みで13個頼む、スペアも含めて」
「わかっちゃ、明後日持ってくる。明後日にまた何かあれば直すじゃ」
「ああ、頼む」
「ドワーフのみなさんありがとうございました」
「なあに、礼はまだまだ早い。引っ越しも終わったことじゃし!肉じゃ」
「酒じゃ、大河殿酒じゃ!みんなも食べるぞ!」
「食う…」
「皆さんも一緒に景気づけに、ドワーフの皆さんと一緒に焼き肉しましょう」
「いいの?やった」
「ええ、是非」
「俺、ちょうど腹減ってた」
「わ、私もー」
皆で庭に出てさっさと準備を始めるドワーフ達にビールと、肉ダンジョンの肉を差し入れた。

「うちのパンに肉を挟むとこんなに合うなんて…」
「母さん新しい店でこれも出そう!」
「いいね、大河さんその場で食べたい人は外で食べて貰うんですか?」
「ああ、簡易的な屋根と簡素なテーブルとイスを置いて、ちょうどこの辺りがいいな」
「なるほど」
「あと、飲み物とか出せば売り上げが増えると思う」
「この果実入った水さっぱりしておいしいわーこれとかいいわね」
「後はお茶とかですね、まだ完成してないんですけど良い秘密道具があるんですよー」
「それは楽しみです」
「オーナーこの酒!美味すぎます!」
「これは数が少ないから売るつもりはない」
「そうじゃ!わしらが飲む分が減る!」
「あ、そうだこれ花酒、ちょっと持って来た。ドワーフの皆さん良かった」
「な、は、花酒じゃと!!それは本当か!伝説の酒じゃぞ」
「あのドラゴンしか製造方法を知らないっていう」
「た、頼む1口!後生じゃ!」
カルが作ってくれた細めの瓶に長から貰った花酒を注いで来た物を出す、ドワーフ達の目の色が変わった。
「ほ、本物かな…」
「ドリィーガンさんたち落ち着いて…このままは強いから水で割って下さい」
「そ、そんな勿体無い」
「そのまま飲んじゃダメー、それは混ぜて飲む物だからぁ」
テトラがキノコの焼き串を食べながら止めに入る、ほんの少しいれても香しく大変美味だと説得して水が入ったコップに少しだけ注いでやった。
「ふぅー、なんと…夢をみているのかの」
「なんと香しぃ…夢見心地だ」
ドワーフ達はみなうっとりとしている、円らな瞳がとろんとしている。
「お、俺も」
「こっちも…」
ナットや他の面子も飲みたがり、水を注いだコップを詠斗に向けて花酒をねだっていた。
「1滴だけ…かな」
「じゃ1滴だけそっと…」
ポタと満杯なコップに1滴垂らししたものを子供以外恐る恐る口をつけると、皆ホゥ…と息を吐く。
「美味しい…」
「すごい、香りが…」
「なんて美味なんだ…」
皆夢見心地の中にいる、これで新しい店を頑張って欲しいと詠斗達は思った…。
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