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第4部 生きる世界に微笑んで 立ち止まったら空を見上げて編
2 北の大地にて
しおりを挟む《トタラナ》より北にある小国群…常に隣国同士が争い合い領土の奪い合いを行う血生臭い場所、そんな小国の1つ《ゴルテス》の王城…といっても造りは簡素…《クイナト》商業ギルドの建物よりも造りは甘い位だった。
そんな王城の謁見の間にて今立っているのは1人…床に尻もちを着いて後ずさっている者が1人、今正に小さな争いのようなものが終結しようとしていた。
「さて、この城…これが城ねぇ…にいるこの国の人間はアンタだけだ。で、ま、こちらの勝ちだよな」
「た、たのむ、命だけは」
互いに吐く息は白い、周辺は夥しい血の海、辺りにはこの国の兵士の死体と鎧等に統一性がないおそらく傭兵や冒険者達の金で雇われた者達の死体が転がっていた。
立っている男は思う、こんな王の為に命を無駄にする事の何が良いのか分からなかった。
「ま、仕事なんで終わらせるか…」
「ま、待て金か!金なら…」
「まあ、俺は傭兵だから金をチラつかせて命乞いそれが一番安易で楽だろうな。アンタの首を此処で跳ねれば1,000,000ログだ。やっすいよなぁ、仮にも一国の王が1,000,000ログなんてなー随分恨まれたよな」
1,000,000ログ…命の値段、この国の民にとっては命よりも重い金額だが国を出てしまえば少し頑張れば手が届くそんな金でこの国の王は命を奪われる、民は今か今かとその瞬間を城の周りで待っている。
「その何倍もの金を出す、財宝も!女も!何だって!だから頼む助けてくれ!!」
飛び散る唾、肥えた腹、首や指には派手な装飾品、豪奢な服は全て民から搾り取った金で手に入れた物、何1つ目の前で醜く命乞いをする男が自力で手に入れた物だは無かった。
「なるべく苦しませて殺せとの依頼だ、この国の民全ての…だがそれも面倒だから一瞬で楽にしてやるよ」
「何が悪い!!俺は王だ!民など俺の為に存在するだけの人形のような物だ!おれは…」
「そんなんだからこういう終わりなんだろう?さようなら」
血に塗れた安物の剣で首を切り落としてやる、血に濡れ切れ味が悪い剣で首を落とせば切れ味が悪くすぐには落とせないがそれが男の腕なのだろう、血も噴出さず王の首が胴から離れ転がった。
「これで終わりか…安物はダメだ切れ味が悪すぎるし、すぐに折れる」
手に持っていた剣が男が振り下ろせば真っ二つに折れた、だからといって銘がある剣でもこの男には同じ事だった、この男の剣撃に何度も耐えうる剣は見つからなかった。
「後はこの国次第か、俺はさっと金貰って…次は少し暖かい場所に行くか…しばらくそこで冒険者でもやるか…これ以外の金の稼ぎ方も知らんし…」
膝まである薄い菫色の雑に括った長い髪を揺らし、薄い紫色の瞳に赤紫の瞳孔の瞳を瞬かせた。
一切の無駄を削ぎ落した肢体、長い手足、傭兵王…英雄傭兵…戦喰い…数々の異名を持つ男の名はジラ…。
短い名を持つその男は、戦う以外の生きる術を知らぬ男だった…。
『ようこそ』
「初めまして、更科 綴と言います。宜しくお願いします。お金…ありがとうございます」
「気にしないで下さい、ここでなら幾らでも稼げますから!改めまして、時永 詠斗って言います。詠斗って呼んで下さい!」
「神々にさっき連絡して、日本の施設に継続的に寄付が出来るか聞いたら匿名でなら可能との事だった、この世界でなら俺達の知識で金が稼げる。俺は峯尾 大河だ大河で良い」
「はじめまして、僕もこの世界に来たばかりです!成澤 率といいます。よろしくお願いします。率と呼んで下さい」
「私はナイルと申します…ここでお世話になっているドラゴンです、よろしくお願いします」
「俺はチグリス…ドラゴン」
(皆、恰好良い人達ばかりだぁ。詠斗君はアイドルみたいな可愛らしい顔立ちで目がぱっちりしているし、大河…さんも俳優とかモデルみたいなすらっとしているし、顔なんかも小さくて…美形だなぁ。率君も綺麗な顔立ち…こう言ったら失礼かもしれないけど…女の子みたいな…。ナイルさんもドラゴン…ドラゴン!?人にしか見えないけど…やっぱり美形だなーその隣のチグリスさんも、背が高くてスタイルが良くて美形…みんなすごい恰好良い…神様達…美形が好きなのかな…)
など綴が考えていると詠斗達もまた同じような考えをしていた、黒いフレームの眼鏡に大河よりやや低い位の身長、笑顔は優し気で左目の下の泣き黒子が仄かに色気を醸し出すインテリ系の青年の様に3人の目には映った。
「主達…新しい主は主達と同じ異界人か?」
気配を消していたかのような千眼が4人に問う、星が瞬く夜色の瞳が綴を真っ直ぐ映す。
「神様達にも言われました…僕は孤児で両親の顔を見た事がありません、出自が不明なんです」
「…そうか…神…ではなく…我々に近い…綴…」
「はい、貴方は?」
「序列第3位千眼魔王…真名がある…名を呼べる…」
「魔王なんですね…」
「ああ…」
暫く視線が交わるどちらから外した訳でもないがふいに視線が外れる、魔王…魔王という名称に似つかわしくない可憐というべきか儚げと言うべきか、綺麗な存在だった。
「気になる話や伝えたい事は沢山あるな、茶を飲みながらゆっくり話そう」
「なら、詠斗さん達で話をすると良いと思います、私たちがご飯の支度をしますから…」
「ああ…」
「ん…肉焼く…」
「ああ、そうだならこれを、日本の物なんですが…。牛乳と卵を…」
『牛乳!!卵!!』
詠斗、大河、率がその言葉に食いつく、収納から出した卵10個2パックと牛乳1L瓶1本を取り出す。
「うわ、うわ、卵!」
「牛乳!色々出来ますよ!」
「これも増えるんだろう?」
「はい、そうみたいですね」
神々から与えられた知識には、牛乳の流通は少なくこの辺りに牧場もない、卵も産地周辺の貴族などの間で食されている高級品、1つでも庶民の家族の1日分の食費よりも高い代物だった。
「どうぞ、みんなで食べましょう」
「なら、後で料理するよー」
「分かりました。では私たちはあちらで支度しますね」
「お願いー」
テーブルとイスを用意し、千眼がセッティングしてくれた茶器と茶菓子でティータイムを始めた。
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