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第8部 晴れた空の下手を繋いで…

第3幕

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「…………」
「どうしました」
「《ホウラク》に行くそうだ……」
「ああ、人形都市ですね」
「…………」
「あの都市に何か?行かないで欲しければそう言えばいいじゃないですか?」
「………いや…」
「海にも行くそうですね」
「船造るか…」
「良いですね、小さいのを造って大きくしましょう」
「海良いですね」
「魚すか!」
『きゅ!』『ぱしゃ』
「きゅう達も行く気ですね!」
「船で海鮮バーベキュー出来るようにしてくださいよー」
「それは良いですね」
「…神鋼と魔鉄…これも使うか…」
『皆様、操縦は私にお任せ下さい』
千眼、千華、ナイルにラウラス、きゅうとふーにスマホから風早が詠斗からの連絡で早速船を造る、千眼が少し沈んだ表情を浮かべるが鉱物を出して魔力で変形させていく。

 第3幕 海上前線 始動 第1話 船は空も飛ぶ模様

「ただいまー」
『…………』
「あれ、みんなどうしたの?」
「わ、すごいですね?船の模型ですか?」
「……おかえり…魔力で皆が乗れる船を…」
「マジ?千ちゃん造ったの?」
「魔王…は何でもありか?」
千眼を中心にテーブルの宙に浮かせた巨大な船の模型に、帰って来た詠斗達もわらわらと集まる。
所謂地球の豪華客船が魔王の魔力で凄まじい速さで構築されていく、千歳がそれを見て顔を綻ばせた。
「よし、みんな今から会議をしよう!明日からの《ホウラク》…いや、船旅を!千眼さん、皆。会議室へ」
『さんせー』

「では会議始めよう、千眼さん達は聴きながら作業していて」
「ああ…」
「俺も船造り参加で良いかな?海とか船が好きだし、小型船とか造りたい」
「俺も!海育ちだし」
カジノタワーの一番広い会議室に転移し、崇幸と晴海が船造りに希望しそちらに加わる。
「風早君、航路で《ホウラク》へ行くとどの位の日数が掛かるかな?」
『はい、およそ10日ですね』
「うん、程よい日数だね。客室とかも造っているよね?」
『はい、地下2階地上2階の客室数100室に設定して構築中です』
「1室1室の広さがカジノタワーの1室の倍か…」
巨大モニターに風早が船の全体図と、客室の全容を映し出して大河が呟く。
『屋上プールとパノラマ大浴場にショーが行える宴会場と、大厨房、生け簀、運動場等も現在構築中です』
「魔法と魔力ってすごいなー風早君もだけど」
『ありがとうございます、舵様』
「船とカジノタワーと龍皇国と《トイタナ》の孤児院と店、ラージュさんの部屋と畑とこの船の空間を繋げて慰安旅行はどうかな?いきなり明日から休みというのも難しいから好きに出入り皆して貰って、海上で疲れを癒して旅を楽しんで貰おうというのは?」
「それは良いですね、海上での船旅」
「料理は魚メイン、自分達で焼いて食う焼き肉とかセルフにすれば良いか。おりがみ達に手伝って貰って」
千歳の案に綴と懐記が乗り気になり、詠斗達も賛同する。
「海ねーグリに俺にドラゴン…風早がいるからなんとかなるか?」
「海上戦ですね、きゅうがいれば大体の魔物はこないでしょう」
「大体はだろう?」
「危険な魔物が多いの?」
「ああ、陸の生き物空の生き物海の生き物それぞれの縄張りがあるからな、陸の生き物が海の生き物に海で挑むのは普通ならしねーな」
「確かに大型海洋生物がこの世界には多くいるけれど、大した事はないよ?僕の破壊魔法で…」
『それは最終手段で』
ジラとラジカの声が重なる、そうそう破壊魔法など使われては堪ったものではない、戦力としては充分と判断し話を切り上げる。
「今、陛下から連絡がありました。あの海にいる魚人族がでてくる場合は陛下が交渉や挨拶をしたいとの事なので、無闇に好戦的にならないようにとラインが来ました」
「え、人魚がいるの?」
「俺達が思う人魚ではなさそうだな、魚人…魚の部分が占めていそうだ」
「彼らは縄張り意識の強い種族で、海の生物としては上位種ですから」
ナイルがニジェルガからの伝言を伝える、ナイルもすぐにまた船の建造に戻る。
「お前らこの世界で航路で大陸を渡らない理由があるの知ってる?」
「基本は大陸を渡る場合は、空路が主流です。海は危険で厄介な魔物や生物が多いからです」
「そ、波は荒く中継地も少ない…ん?今回はあの島を通るのか」
「ええ、行きたい方々は多いでしょうね。特に商人は」
「何かあるの?」
ジラが航路の危険性の説明にラジカが捕捉し、詠斗が首を傾げた。
「名もない島だが、どの国にも属さない禁止品や闘技場に奴隷の流通が横行する無法であり規律ある島」
「あの島で買い物をしたいので少しその周辺に船を停めて貰っても構いませんか?傭兵王に用心棒を依頼します」
「いいけど、行くのは《ズィーガー商会》とドラゴンの商人に《ガルディア》の貴族のメルガドールとユラヴィレオ達だけが良いんだけど?」
「僕も行きたいな」
「俺もー」
「俺も興味あるわ」
「本があれば…」
「僕と率君、晴海君、舵さんはお留守番しましょうね」
『はーい』
ジラの遠回しに詠斗達は来るなよと言うセリフを理解した上で、千歳、詠斗、懐記、大河が希望し、綴が他の3人の保護者(?)として留守番を買って出た。
「ジラ、それ俺も行きたい。バイトのスカウトに」
「奴隷は訳ありだらけだぞ」
「崇幸兄はそういうの得意だから」
「では、風早君。その島に到着するのは何日後かな」
『航路を使い4日後に到着予定です、今建造中の船ですが魔神であるグローリー様の魔聖石を組み込み、神鋼、魔鉄といいう素材を使い、唯一無二の要塞船となり空も飛行可能です。明日早朝には内部も完成します』
「ん、こんな時間か今日からトランちがカジノでバイトするから様子見に行くわ」
「僕も行きましょう」
「こちらは皆に連絡するよ」
「俺は船の食材の買い込みとかしに行くよ、率くんチーズとか買いに行こう」
「はい!」
「俺も…」
「じゃ、俺も」
懐記、綴がカジノへ向かい、詠斗、率、ジラ、チグリスが仕入れに行き他の面々は各自慰安旅行の連絡を回す事にした。

《名も無き島》…とある木材で適当に組み上げただけの奴隷小屋、据えた臭い、怒号、泣き声、呻き声が檻の中から絶え間なく聞こえる。
その片隅で小さくなり震えている青年、周りの音と声と景色から反らすように目を固く閉じて耳を塞いでいた。
どうし
てこうなったのか、何がダメだったのか、売られなければ闘技場で嬲り物されて殺されるしかない、どちらが楽か分からないが今は何も見たくない聞きたくなかった…。
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