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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

Stage.6-3 《砂城の牙》

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「血が足りません…再生させます」
晴海から貰った再生魔法札、外神の眼で調べた結果生物の再生は無理だが調整は可能と鑑定が出る、ならば失った血を体内で再生出来る。
「よ、よくわからんがどのみちこのままだと俺達は死んでいた。助かるなら頼む俺は寄せ集め傭兵集団《芥の風》リーダードミだ」
「はい、始めます」
運転席で晴海が周囲を確認している間チェカもテントの中で傭兵集団《芥の風》達の治療や食事等を手伝う、一番状態の者は未だに意識が無い血を失っている者達も子供達からスープや水を貰い寝かされていた。
「この魔法すごいな…奇跡だ」
チェカが呟く外神が調整を掛け体内の必要な分の血液を再生させる、外傷も塞ぎ後は本人達の気力次第だ。
「回復も碌にしていない所すまないが、何がこの周辺で起きている」
「ああ……《イグン王国》から招集されたんだ、間もなく戦が始まると…向かっている最中に襲撃されたんだ……」
「ありゃ、バケモンだ…うう…もう戦場なんかいきたくねぇ」
「ああ…嗤ってたった6人で俺たちを…」
「6人じゃねよ、いたのは6人だが、俺らをこうしたのは3人だ」
「他の連中は嗤ってみていた…」
ツゥムストスがリーダードミに何があったか尋ねれば皆口々に体を震わせ語る、ドミも廃業だなと呟き、ホスィソとツゥムストスの顔色が変わる。
「どこの国とだ!」
「何故急に…おかしい…」
「《ブリキノ国》とだ」
「え!あの2国の間に《ガーデン国》が私たちの国があるんです!」
「運がないな…あの国を巻き込んでの領土争いだろう…あの6人が《ブリキノ国》に雇われた傭兵ならば《イグン王国》は敗ける…」
「チェカさん、速度を上げましょう…これは何かあります。皆さんを襲った傭兵達…恐らく人ではないですね」
「ああ!ホスィソ達速度を上げるから、すぐに着くさ」
「すまない…」
「……特徴的に恐らく《砂城の牙》だと思われる、この大陸に渡って来たのか…」
「俺たちは他の大陸から来たんだ、その大陸で伝説の傭兵集団……噂だが魔人達の傭兵集団らしい」
「本当かどうか分らんが兎に角強い…強すぎる…」
「聞いた事はないですが…崇幸さん達に連絡を取ります。皆さんは休んでください、まだ体は本調子ではありません」
自国が巻き込まれる…それに項垂れるホスィソやトハトネ、拳を握り締めるツゥムストス、タージ、マーフ達、外神とチェカはテントから出て先ずはお互いの成すべき事に専念する。

『懐記さん…すみません緊急事態が起きました皆さんを呼んで下さい』
「外神っち、おけ」
《アタラクシア号》の厨房で懐記が孔雀に果物を剥いて与えていれば孔雀の嘴が動き外神の声が聞こえる、懐記はすぐに風早に頼み皆を食堂に集めた。

『皆さん、《ブリキノ国》と《イグン王国》という2国が間に位置する《ガーデン王国》を巻き込んで戦争を始めるそうです……それだけならなんとかなりますが、問題は《砂城の牙》という傭兵集団が《ブリキノ国》に雇われたようです。聞く限り魔人の傭兵集団だと思われす。こちらは速度を上げて《ガーデン王国》に向かいますが…』
「《砂城の牙》…この大陸に来たんですね…不味い…いつ開戦するか分かりますか?」
『間もなくかと…』
「トゥナー知っているすか?」
「ええ……おそらく魔人の傭兵集団で間違いないでしょう…戦場で見掛けた事があります…敵ではありませんでしたが…酷い物です、あれは戦ではなかった」
外神の言葉にトゥナー眉根を寄せる、以前グローリーには魔人が傭兵をしていると伝えた事がある、その時は魔人は戦場に出現しやすいと大陸を渡る事があれば…と言っていたが、家族を愛し彼らが笑顔でいる事を何より大事にするグローリーに容赦も慈悲もない傭兵集団を会わせて良いのか…嘗ての戦場は只の一方的な無秩序な処刑場の様な凄惨たる物だった。
特に…あのリーダー格と思われるイライラしていた青年、誰かに似た面差し…。
「《空船》…ジラ君を…時間が掛かりますか…《ガーデン王国》迄後どの位掛かりますか?最悪僕だけでも先に…晴海君が行く国を血に染めたくありませんから」
「俺の背に乗るといいっすよ」
「ラウラスっちそれはダメじゃん、戦場になりそうな国には行けないっしょ」
「です…でも俺も皆の力になりたいす」
「ラウラス…ダメだ…戦場になる可能性がある国…」
「チグリス様…」
普段は何に対しても寛容というか何でも良いチグリスが首を横に振る、たった1頭ドラゴンが付近を旋回するだけでも何かが起こるとされている程ドラゴンは皇国付近か、群れを造りその周辺で過ごすか、人に視認出来ない程の上空を飛ぶか、皇国の法で無闇に他国へ飛ばないようにとされている、特に戦場には向かう事は厳しく罰せられる。
「よぉし、チグリス君、ラウラス君、トイ君とシュピイン達は残ってくれ。こんな事もあろうかと…」
「ゆき…あれを出すのか…まだ試運転していない…」
「男は度胸だ!千眼さん」
「崇幸っちそれ正解、急ぐなら多少は無茶するっしょ」
「はい、僕も賛成です」
「多少の危険も承知の上、外神くんも晴海くんの空もこれから危険なところに向かうんだ。俺たちだって無茶するよ。戦場…何が出来るか分からないけれど、巻き添えになってしまう《ガーデン王国》は守りたい…。
「だろ、皆上へ行こう。千歳君達に伝えて」
『皆さん、これを持っていって下さい。ボクの雫です、傷や多少の病なら数滴で治せます』
「ありがとうございます、シュピインさん」
崇幸の提案に千眼が眉を顰めるが、懐記も綴も詠斗も崇幸に同意しシュピインから雫の入った瓶を貰う。
「戦場なら俺達も経験している…」
「ああ!魔人同士で戦うと親父が悲しむから避けたいけど…戦場で甘い事言えないからな」
イザラもイデアも戦場にいた経験がある、崇幸は出来れば戦争など起きる前に事態を収束させたいと思いながら屋上へと向かった…。
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