あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

終戦のナギep.end

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「アシュア、ナギが戻りましたよ」
「………」
蒐刻魔王、珀暱魔王、触手に捕らわれたナギが転移で着いたとある城、玉座に座る眠っている少年に蒐刻魔王は駆け寄り、珀暱魔王は苦笑いを浮かべナギはうんざりした表情を浮かべた。
「戻られましたか、兄上」
「ナキュアス、ナギを迷宮に連れて行きなさい」
「戻られたばかりですが」
「仕置きです、頭を冷やしなさいナギ。しばらくしたら出してあげます」
「………」
「ナキュアス~ナギっちゃん連れて行って」
「承知しました、兄上参りましょう」
触手がナギの身体を動かしナキュアスの元へ運ぶ、ナキュアスは一礼しナギを連れて退出した。

「兄上、何故逃げるのです?母上も父上も兄上を想っていますよ」
「気持ち悪い」
「またそれですか、理解出来ません」

灰色の長い回廊、床は深紅の絨毯が延々と敷かれ奥の暗闇は全てを飲み込む様に手招きをしているかに見えたその手前、壁に寄りかかりだるそうにパーカー、ジーンズ、スニーカーの少年がパーカーのポケットに手を入れて此方を見ていた。
「なんだ結局戻ったのかよ、ダセ」
「これはこれは」
ナキュアスが恭しく一礼するが、ナキュアス等其処にいないかの様にナギだけを見ていた。
「悪い?」
「なんだよ、機嫌わりぃな」
「当然だろ、俺はまだあそこにいたかったんだ。戦はきっと終わるかもしれないけど見届けたかった」
「じゃ、また行けよ」
「………」
「なんだ結局お前はそんなもんかよ、つまんねーやつ。迷宮で10位と仲良くしてろ。あっちもお友だちが増えて喜ぶんじゃねぇ。じゃーな」 
少年がナギの横を通り過ぎて何処かへと消えてしまう、ナギは少し悔しそうにしていたが前に進む。
「兄上、貴方は良いですね。あの方に名を貰い、声を掛けて貰えて」
「どこがいいんだよ」
「羨ましくてどうにかなりそうです」
「お前も気持ち悪い」
ナギはナキュアスの妬みに駆られた表情に顔を歪ませ、足早に手招きする闇の奥へと進んだ。

「では、兄上。母上の機嫌が直ったら会いましょう」
ナキュアスが荘厳な装飾の施された巨大な扉を開け、ナギが中へと入って行く、扉は音もなく閉まりナギの身体に絡みついていた触手がしゅるしゅると解け闇に消えていく。
「おーい、魔王いるー?10位だっけ?どこー」
迷宮ダンジョンは現在暗い夜目が効くナギには見えるが、魔王らしき気配はしない。
「大丈夫かぁー?」
「ぅ…」
「あ、いた」
ナギが壁に手を這わせ魔力を注げば灯りが灯る、階段扉階段扉…だらけの場所の少し離れた階段で横たわっている濃い蜂蜜色の髪の男の元へナギは向かった。
「おーい、大丈夫?10位の魔王?」
「うぅ…俺を此処から出せ」
「むり……魔王ぽくない見た目だな、どちらかと言えば…勇者とか?英雄ぽい」
「どいつもこいつもそればかり、俺は魔王じゃない」
うっすらと琥珀の瞳に宝石を散りばめた瞳とナギの瞳が合う、苦しそうな表情をしているのはもう片方の黄昏時の眼だけは魔王じみていて不似合いだった。
「自覚なしな訳ね、こう言う魔王の方が可愛い気あるよな。立てるか」
「ああ、俺はキリングだ」 
ナギがキリングに手を貸し立ち上がる、顔色も悪いし隈も酷い。
「よし、まずは飯を食お!魔王と協力すればこの《迷宮ダンジョン》から出られるかもな」
「手を貸してくれるのか?」
「俺も此処から出たいからさ」
「………出られるのか?」
「まぁ、無理だな。中から出れないダンジョンだから」
「そう…だな、どの扉を開けてもダンジョンだ攻略したらまた此処…それの繰り返しだ」
「…………手は無い事はない、絶望するのは全て出し切ってからにしよう」
「俺を絶望から救いだしてくれるのか?」
「いいよ、だからお前も俺を絶望から救いだしてくれ」
キリングを立ち上がらせナギは笑って手を強く握る、キリングもナギに賭ける、もう1度グローリーに会うために…。

「ごめん、ごめんな。ノイズ…もう2度と会えないかもしれない…お前は来るなよ」
遠き山脈にて雪が降り注ぐ山の洞窟で身を震わせた青年は、何度も何度も繰り返し謝罪を口にする、洞窟の外から見える雪の先の空は青い、滅茶苦茶な山、こんな山では無かった。
馴染みの小さい子どもでも登れる山、町の人々が慣れ親しんだ実りある山が姿を変えた日からこの山は異形の山と変わってしまった。
『ジュナイ、止めろ。あの山はおかしい、行くなよ、行かないでくれ』
そう引き留めてくれた親友の言葉を振り払い、ジュナイは数名の町人と共に薬草を採りに山へ入った。
「ごめんな、ノイズ…ミュナイの事頼む…」
一緒に山に入った町人達も虫の息、魔法石の火もいつまで保つか…今雪が降っていても止めば花や果物が咲き狂ったりと可笑しな事ばかりが起こる。
「おかしくなりそうだ、もう何日此処に閉じ込められているのか…」
町人達も起きれば泣きわめいたり、暴れたり、怯えたりと誰も彼もが正常な精神ではいられない、ジュナイは目的を達成し帰るという気持ちだけで正常心を保っていた。
「せめて、薬草だけでも…」
町は今流行り病に冒され、薬も足りない状態、ジュナイの弟も高熱に魘されていた。
「俺もいつまでもつかな…」
食い物はあるが出られるかも分からない、刻々と山は形を変えていく、ジュナイは身体を丸め目を閉じた…。

「はあはぁ、ジュナイ兄ちゃん…」
「ミュナイ…」
山の麓の町の小さな家の中、赤い顔をして喘ぐ幼い子供の手を握る青年。
「ジュナイはもうじき帰ってくるから」
「兄ちゃん…」
苦し気な呼吸のミュナイがやっと眠りに入り、青年は家を出て眼前に聳える山を睨み付けた。
「ジュナイ…何で5日も戻らない?何かあったんだろう?どうして行ったんだよ…いや、行くしかなかったけど」
『お前に俺の気持ちなんか分からないだろう、お前には家族がいない!ミュナイはたった1人の弟なんだ!』
ジュナイの言葉が頭の中で何度も何度も繰り返される、それでジュナイが決まり悪い顔を浮かべ行ってしまった。
「ミュナイにとってもお前はたった1人の兄なんだよ…」
山を睨む生きているかの様に動き少しずつ形状を変えていく、あの山はおかしいと元気で生活に余裕がある者達は町を捨て去ってしまった。
残ったのは流行り病に冒された町人、何処にも行く当てがない者、老人達といった者達ばかり残されてしまっている状況だ。
「一体あの山はなんなんだ…」
ジュナイの帰りを待つ青年の名はノイズ、親友の無事と帰りを待っている、生きていると信じて…。

 
                そして013部へ… 
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