神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第9章 派生流派と天乱四柱

蠢ク魔物

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竜の守り人を結成してからの数日間、三人はしっかりと休養を取った。トーレリアスは料理以外にも装飾品や魔道具等、様々な物が売られており、咲良にとって目ぼしい物は無かったが、ソフィはやはり女性なだけあって長時間買い物に付き合わされた。

因みにソフィにはクロの正体や咲良自身についてある程度話しておいた。ソフィは驚いていたが同時に喜んでいた。色々謎の多かった咲良が話してくれた事が嬉しかったのだろう。


そしてそろそろ出発しようかと身支度を始めた頃、問題は突然やって来る。

カンッカンッカンッカンッ

トーレリアス中にけたたましい鐘の音が響き渡った。
咲良は初めて聞いた音だがその意味は知っており、ギルドからの緊急招集命令だ。

クロ、ソフィと共にギルドに出向くと既に多くの冒険者が集まっていた。

「何かあったのか?」

咲良は近くの冒険者に尋ねる。

「さぁな。だがヤベェ事態が起きているのは確実だ。俺の経験上この鐘が鳴った時は何百人も死ぬ」
「戦争か?」
「その可能性は低い。冒険者が戦争に駆り出される事は殆どないからな」

冒険者が自主的に戦争に加担する事はある。しかし依頼では戦争に参加しないという暗黙のルールも同時に存在する。このことからこの緊急招集命令の原因はかなり絞られてくる。

(戦争で無いとすると、魔物の線が濃厚か)

咲良が思案しているとギルドマスターらしき若い女性が奥から出てきた。

「集まってくれた事感謝する。早速だが今回集まってもらった理由だが…現在王都アルカナに魔物の大群が押し寄せている」
「な!なんだと!」
「そんなバカな!」

ギルドマスターの言葉に集まった冒険者は驚きを隠せなかった。

「ギルド本部から救援要請だ。本部所属の冒険者が何とか食い止めているが数が異常なほど多いらしく王都に侵入されるのは時間の問題だろう」

本部所属の冒険者は全員がA級以上だ。彼らが食い止められないとなるとかなりの驚異であるのは間違いない。

「これは高難度の防衛戦となるだろう。強制はしないが参加の意思がある者はこの場に残ってくれ」

ギルドマスターはそう言って辺りを見渡すが誰も出ていく気配はない。

「諸君の勇敢な決断に感謝する。では6人ずつの班に分かれてくれ」

冒険者たちはすぐに周りの人と班を組み始めるが咲良はソフィを連れてギルドマスターの元に行く。

「なんだ?」
「俺たちは班では無くパーティで動きたい」
「パーティ?何故だ?」

咲良の提案にギルドマスターは「この忙しい時に何を言ってるんだ」と不審に思う。

「班では動き辛いという事だ」
「お前達だけ自由という訳にはいかない。班を組め」

やはりそう簡単に許可は貰えない様だが咲良は班で動く気は毛頭ない。班で動けば力を制限しなければならないので不測の事態に備える事が出来ないからだ。

手っ取り早く話を進める為に咲良は特級冒険者の証である指輪をギルドマスターに示す。

「こ…これは…」
「俺は特級冒険者の咲良だ」
「お前が噂の…」
「自由に動いても?」
「あぁ、構わない。なら一つ仕事を頼む」
「出来る事なら」
「皆の士気を挙げてくれ」
「そういう事か。あまり得意ではないんだが仕方ないか」

咲良は冒険者たちの方に向き直りふぅっと息を吐くと口を開く。

「勇敢な冒険者たちよ!聞け!俺は特級冒険者の咲良!これから向かう先は地獄かもしれない!だが全員の力を合わせればどんな敵でも負けはしない!必ずアルカナを守り抜き祝杯を挙げるぞ!」
「「「「「おぉ!!」」」」」

咲良の声に大勢の冒険者たちが拳を掲げて答える。

「やるじゃないか」
「慣れない事はするもんじゃないな」

ギルドマスターに褒められると咲良は照れ隠しなのか苦笑いを浮かべる。

「準備が出来次第直ぐに出発だ!」

本来なら今すぐに向かうべきなのだが情報からして短時間で終わるような戦闘ではない。数日間戦い続けなければならない可能性は高いのでそれなりの準備をしなければならない。

「ギルドマスター、俺たちは先に行く。拡張袋を持っているから準備は必要ない」
「そうか…任せたぞ」
「あぁ…行くぞソフィ、クロ」
「うん!」
「キュイ!」

3人はギルドを後にすると直ぐにアルカナに出発した。


トーレリアスからある程度離れた時、咲良はある提案をする。

「ソフィ。時間が無いから飛んでいく」
「飛ぶ?」

ソフィは咲良の言葉の意味が分からず首を捻る。

「俺はクロを導く者だ。だから俺も黒竜になれる」
「……へ?」
「まぁ百聞は一見に如かずってな……黒竜化」

咲良が小さく呟くと黒竜の外套が大きな翼に、装束が黒龍の体へと変化していき、ソフィの目の前に巨大で力強い黒竜が姿を現した。

「……うそ…」

咲良が黒竜になれるという事実とその存在感にソフィは目を見開いて立ち尽くす。

「驚くのも無理はないが背中に乗ってくれ」
「え…うん」

ソフィはまだ状況が呑み込めていないが恐る恐る咲良の背中に飛び乗る。

「しっかり掴まってろ」

咲良は力強く羽ばたいて上昇し、とてつもないスピードで飛ぶ。

「きゃあぁぁぁぁ!!」

ソフィはあまりの速さに悲鳴を上げるが、ふとある事に気が付いた。

「あれ…風が」

これほどまでに早く飛んでいるにも拘らず向かい風が一切無いのだ。
実は咲良が魔力を操作してソフィに風が当たらない様にしていた。もし魔力で風を防いでいなければ背中から吹き飛ばされてしまう。さらに強すぎる風は鎌鼬となってソフィに襲い掛かるだろう。

「ソフィ、もうすぐ着くぞ」
「え?もう?」

トーレリアスからアルカナまでは徒歩で数日掛かるが、黒竜化した咲良はものの数分で辿り着いてしまった。

「見えるかソフィ。想像以上の大群だ」
「…そんな……端が見えない」

ソフィが咲良の背中から下を見下ろすとそこにはアルカナを囲むようにして視界に収まらない程無数の魔物が蠢いていた。
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