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皇帝生誕九十年祭
第三十四話 ジオール城への侵入
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誕生祭の三日前だ。昼間はお昼寝タイムを普段の倍を取って準備した。
明日はジブリルと一緒にクッキーの材料を買いに行く。夜、ジブリルが休んでいるのを確認してから行動に出る。
今、月光が照らす中、俺はひたひたと暗闇を歩いている。建物の影から影へ、手の平からさらに写したメモを使って目印の位置まで進む。
なるほど。メモに書いてあった夜十時過ぎって言うのはこういうことか。月が俺の後ろにある。すると建物の影が城壁に向かって伸びている。丁度煙突の影が城壁に到達しているのだ。
そして、城壁の上には明かりが見えるが、その間隔がここだけ微妙に広い。
素早くダッシュして煙突の影の中を走る。
城壁に飛びついてわずかな凹凸をとらえて登る。
城壁の回廊まであと少しと言うところでガチャリと足音がする。久しぶりの緊張だ。城壁に張り付いたまま動きを止める。
大丈夫だ。音を立てていないし、覗き込まれなければばれない。
しばらくすると音はそのまま通り過ぎて行った。
ふっ~、流石にドキドキした。
回廊を覗き込んで左右を見渡す。通り過ぎた兵士は後姿、そして反対側には人影無し……いまだ!
素早く回廊を横切り、城壁の内側にジャンプで飛び込む。
内部は庭園だ。芝生に果物の木が植えてある。
木を盾にして目当ての建屋に進む。
目当ての建物は何というか小さい倉庫みたいなものだ。まあ小さいと言っても城内の他の建屋と比較してのことではあるが。窓は少なく、兵士はいない。
すすッと建物の壁にへばりつく。通気口にしてある窓を見つけたのだ。大人じゃ入れないだろうが、この俺の体格なら……うん、入れた。
ニヤッと笑う。
ついに目的の建物に侵入成功。誰にも感づかれていない。
一人ガッツポーズをとって建物の内部を探る。
……大きさの割にはおいてあるものが少ないな。まあ、これから届く贈り物もあるだろうからスペースでも開けているんだろう。ジブリルなんて「当日直接お渡ししましょう」なんて言ってたぐらいだからな。
う~ん、クリミナ王国の奴はあれか?
やたらと金の塗装がしてあって毒々しい色使い……ま、箱だけだ。中身をいただいてしまおう。
クリミナ王国の贈り物のふたをそっと開ける。
……なんだこれ? 箱の中に箱? 外箱はやたら大きいのに中の箱はやたら小さい……と言うかこれ、上げ底すぎる。
中の箱は何のことは無い、ぜんまい式のオルゴールだ。ま、とりあえず開いたら鳴るタイプでなくてよかったが……なんだかなぁ。あんな大部隊でパレードをした挙句中身がオルゴールかぁ、本当に大したものじゃないな。それに金色はしているようだがメッキだぞ、これ。
はぁ~ため息しか出ない。こんなものいらない。オリギナ皇帝にくれてやろう。……多分、皇帝もいらないだろうがな。
贈り物のふたを閉じる。その時だ、カチリと音がした。贈り物の箱からだ。そしてさらさらと砂が落ちる音が聞こえ始めた。
もしかしてこれ……贈り物の箱に何か仕掛けがあるのか!?
ニヤリと笑う。こういうサプライズは大好きだ。なるほどこの贈り物の箱自身に仕掛けがあって一個目のオルゴールでがっかりさせた後、もしかしてどこかに二個目が隠されているのか?
じゃあ、それは俺がもらってしまおう。オルゴールと外箱だけオリギナ皇帝に渡せば気が付かれないし何の問題も起きない。
箱の端を持って裏側を見る。うーん。どこに二個目のふたがあるのだろう?
ワクワクしながら箱をいじっていると、閃光が走った。
……
「彼は順調かね?」
「ええ、かべを登り切りました」
「衛兵は?」
「恐らく、本気で気づいてませんね。魔力を使っていないからかな」
「ふっ、それじゃ近衛師団、副師団長の名折れだね。魔力感知だけに頼るからだよ」
「……あ、気が付いたみたいです」
「多分、着地の音だろうね。素質はあるんだろうけどなぁ」
レトス達は城壁の向かいの建物に潜んでいる。煙突もわざわざこのために立てて置いた。カテイナが利用してくれて万々歳である。
皇都のそれも皇帝居城の警備にこんな穴は作らせない。篝火もだ。配置を微妙にずらしてもらった。
五歳児には難しいかとも思ったが、カテイナは勘がいい。彼なら無事にこちらの思惑通りに進めてくれるだろう。
まあ、予想通りならあと三十分もすればジオール城は元の警備に戻る。
あとはこのまま彼の大冒険が終わるのを待つだけだ。
城壁越しでもわかる振動と閃光が走ったのはそれから十分後だった。
明日はジブリルと一緒にクッキーの材料を買いに行く。夜、ジブリルが休んでいるのを確認してから行動に出る。
今、月光が照らす中、俺はひたひたと暗闇を歩いている。建物の影から影へ、手の平からさらに写したメモを使って目印の位置まで進む。
なるほど。メモに書いてあった夜十時過ぎって言うのはこういうことか。月が俺の後ろにある。すると建物の影が城壁に向かって伸びている。丁度煙突の影が城壁に到達しているのだ。
そして、城壁の上には明かりが見えるが、その間隔がここだけ微妙に広い。
素早くダッシュして煙突の影の中を走る。
城壁に飛びついてわずかな凹凸をとらえて登る。
城壁の回廊まであと少しと言うところでガチャリと足音がする。久しぶりの緊張だ。城壁に張り付いたまま動きを止める。
大丈夫だ。音を立てていないし、覗き込まれなければばれない。
しばらくすると音はそのまま通り過ぎて行った。
ふっ~、流石にドキドキした。
回廊を覗き込んで左右を見渡す。通り過ぎた兵士は後姿、そして反対側には人影無し……いまだ!
素早く回廊を横切り、城壁の内側にジャンプで飛び込む。
内部は庭園だ。芝生に果物の木が植えてある。
木を盾にして目当ての建屋に進む。
目当ての建物は何というか小さい倉庫みたいなものだ。まあ小さいと言っても城内の他の建屋と比較してのことではあるが。窓は少なく、兵士はいない。
すすッと建物の壁にへばりつく。通気口にしてある窓を見つけたのだ。大人じゃ入れないだろうが、この俺の体格なら……うん、入れた。
ニヤッと笑う。
ついに目的の建物に侵入成功。誰にも感づかれていない。
一人ガッツポーズをとって建物の内部を探る。
……大きさの割にはおいてあるものが少ないな。まあ、これから届く贈り物もあるだろうからスペースでも開けているんだろう。ジブリルなんて「当日直接お渡ししましょう」なんて言ってたぐらいだからな。
う~ん、クリミナ王国の奴はあれか?
やたらと金の塗装がしてあって毒々しい色使い……ま、箱だけだ。中身をいただいてしまおう。
クリミナ王国の贈り物のふたをそっと開ける。
……なんだこれ? 箱の中に箱? 外箱はやたら大きいのに中の箱はやたら小さい……と言うかこれ、上げ底すぎる。
中の箱は何のことは無い、ぜんまい式のオルゴールだ。ま、とりあえず開いたら鳴るタイプでなくてよかったが……なんだかなぁ。あんな大部隊でパレードをした挙句中身がオルゴールかぁ、本当に大したものじゃないな。それに金色はしているようだがメッキだぞ、これ。
はぁ~ため息しか出ない。こんなものいらない。オリギナ皇帝にくれてやろう。……多分、皇帝もいらないだろうがな。
贈り物のふたを閉じる。その時だ、カチリと音がした。贈り物の箱からだ。そしてさらさらと砂が落ちる音が聞こえ始めた。
もしかしてこれ……贈り物の箱に何か仕掛けがあるのか!?
ニヤリと笑う。こういうサプライズは大好きだ。なるほどこの贈り物の箱自身に仕掛けがあって一個目のオルゴールでがっかりさせた後、もしかしてどこかに二個目が隠されているのか?
じゃあ、それは俺がもらってしまおう。オルゴールと外箱だけオリギナ皇帝に渡せば気が付かれないし何の問題も起きない。
箱の端を持って裏側を見る。うーん。どこに二個目のふたがあるのだろう?
ワクワクしながら箱をいじっていると、閃光が走った。
……
「彼は順調かね?」
「ええ、かべを登り切りました」
「衛兵は?」
「恐らく、本気で気づいてませんね。魔力を使っていないからかな」
「ふっ、それじゃ近衛師団、副師団長の名折れだね。魔力感知だけに頼るからだよ」
「……あ、気が付いたみたいです」
「多分、着地の音だろうね。素質はあるんだろうけどなぁ」
レトス達は城壁の向かいの建物に潜んでいる。煙突もわざわざこのために立てて置いた。カテイナが利用してくれて万々歳である。
皇都のそれも皇帝居城の警備にこんな穴は作らせない。篝火もだ。配置を微妙にずらしてもらった。
五歳児には難しいかとも思ったが、カテイナは勘がいい。彼なら無事にこちらの思惑通りに進めてくれるだろう。
まあ、予想通りならあと三十分もすればジオール城は元の警備に戻る。
あとはこのまま彼の大冒険が終わるのを待つだけだ。
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