魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

文字の大きさ
34 / 45
皇帝生誕九十年祭

第三十四話 ジオール城への侵入

しおりを挟む
 誕生祭の三日前だ。昼間はお昼寝タイムを普段の倍を取って準備した。
 明日はジブリルと一緒にクッキーの材料を買いに行く。夜、ジブリルが休んでいるのを確認してから行動に出る。
 今、月光が照らす中、俺はひたひたと暗闇を歩いている。建物の影から影へ、手の平からさらに写したメモを使って目印の位置まで進む。
 なるほど。メモに書いてあった夜十時過ぎって言うのはこういうことか。月が俺の後ろにある。すると建物の影が城壁に向かって伸びている。丁度煙突の影が城壁に到達しているのだ。
 そして、城壁の上には明かりが見えるが、その間隔がここだけ微妙に広い。
 素早くダッシュして煙突の影の中を走る。
 城壁に飛びついてわずかな凹凸をとらえて登る。
 城壁の回廊まであと少しと言うところでガチャリと足音がする。久しぶりの緊張だ。城壁に張り付いたまま動きを止める。
 大丈夫だ。音を立てていないし、覗き込まれなければばれない。
 しばらくすると音はそのまま通り過ぎて行った。
 ふっ~、流石にドキドキした。
 回廊を覗き込んで左右を見渡す。通り過ぎた兵士は後姿、そして反対側には人影無し……いまだ!
 素早く回廊を横切り、城壁の内側にジャンプで飛び込む。
 内部は庭園だ。芝生に果物の木が植えてある。
 木を盾にして目当ての建屋に進む。
 目当ての建物は何というか小さい倉庫みたいなものだ。まあ小さいと言っても城内の他の建屋と比較してのことではあるが。窓は少なく、兵士はいない。
 すすッと建物の壁にへばりつく。通気口にしてある窓を見つけたのだ。大人じゃ入れないだろうが、この俺の体格なら……うん、入れた。
 ニヤッと笑う。
 ついに目的の建物に侵入成功。誰にも感づかれていない。
 一人ガッツポーズをとって建物の内部を探る。
 ……大きさの割にはおいてあるものが少ないな。まあ、これから届く贈り物もあるだろうからスペースでも開けているんだろう。ジブリルなんて「当日直接お渡ししましょう」なんて言ってたぐらいだからな。
 う~ん、クリミナ王国の奴はあれか?
 やたらと金の塗装がしてあって毒々しい色使い……ま、箱だけだ。中身をいただいてしまおう。
 クリミナ王国の贈り物のふたをそっと開ける。
 ……なんだこれ? 箱の中に箱? 外箱はやたら大きいのに中の箱はやたら小さい……と言うかこれ、上げ底すぎる。
 中の箱は何のことは無い、ぜんまい式のオルゴールだ。ま、とりあえず開いたら鳴るタイプでなくてよかったが……なんだかなぁ。あんな大部隊でパレードをした挙句中身がオルゴールかぁ、本当に大したものじゃないな。それに金色はしているようだがメッキだぞ、これ。
 はぁ~ため息しか出ない。こんなものいらない。オリギナ皇帝にくれてやろう。……多分、皇帝もいらないだろうがな。
 贈り物のふたを閉じる。その時だ、カチリと音がした。贈り物の箱からだ。そしてさらさらと砂が落ちる音が聞こえ始めた。
 もしかしてこれ……贈り物の箱に何か仕掛けがあるのか!?
 ニヤリと笑う。こういうサプライズは大好きだ。なるほどこの贈り物の箱自身に仕掛けがあって一個目のオルゴールでがっかりさせた後、もしかしてどこかに二個目が隠されているのか?
 じゃあ、それは俺がもらってしまおう。オルゴールと外箱だけオリギナ皇帝に渡せば気が付かれないし何の問題も起きない。
 箱の端を持って裏側を見る。うーん。どこに二個目のふたがあるのだろう?
 ワクワクしながら箱をいじっていると、閃光が走った。

……

「彼は順調かね?」
「ええ、かべを登り切りました」
「衛兵は?」
「恐らく、本気で気づいてませんね。魔力を使っていないからかな」
「ふっ、それじゃ近衛師団、副師団長の名折れだね。魔力感知だけに頼るからだよ」
「……あ、気が付いたみたいです」
「多分、着地の音だろうね。素質はあるんだろうけどなぁ」

 レトス達は城壁の向かいの建物に潜んでいる。煙突もわざわざこのために立てて置いた。カテイナが利用してくれて万々歳である。
 皇都のそれも皇帝居城の警備にこんな穴は作らせない。篝火もだ。配置を微妙にずらしてもらった。
 五歳児には難しいかとも思ったが、カテイナは勘がいい。彼なら無事にこちらの思惑通りに進めてくれるだろう。
 まあ、予想通りならあと三十分もすればジオール城は元の警備に戻る。
 あとはこのまま彼の大冒険が終わるのを待つだけだ。

 城壁越しでもわかる振動と閃光が走ったのはそれから十分後だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

蛮族女王の娘《プリンセス》 第3部【王国編】(完結編)

枕崎 純之助
ファンタジー
王国に囚われた弟を救い出すため、ダニアの金の女王ブリジットの娘であるプリシラがついに王国に乗り込む。 一方、姉である銀の女王クローディアに恨みを募らせる王国軍のチェルシーは、かつて自分を捨てた姉に復讐するため修羅の道を突き進む。 金と銀の女王の血を引く2人の少女が、戦乱の大陸を舞台に激突! 戦いの果てに果たされるのは弟の奪還か、あるいは復讐の成就か。 2人の少女の意地と誇りがぶつかり合うファンタジー大河ドラマ。 今……最終章の幕が開く。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...