オタク病

雨月黛狼

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第15話 倍返し?いいや、手のひら返しだ!

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「……どうでも、よくない」
 環が呟く。

「どうでもよくないってどういう意味だよ?」
「宅也は私の彼氏なのよ。あなたの評判が下がれば私の評判も下がる。あなたも少しは努力しなさい」

「努力ねえ。努力したところでスクールカーストってのはそんな簡単に変わるもんじゃないんだけどな」
「難しいところだよね。環ちゃんの教室内価値を高める必要があっても、猪尾くんが足を引っ張る。もういっそのこと別れちゃえば?」

「そ、それはダメ」
 環が反論する。

「ふ~ん、環ちゃんはそこまで猪尾くんのことが好きなんだね」
「べ、べつに……」

「まあでも、そういうことなら仕方ないね。なんとか両立する方法を考えようか。あ、そうだ。環ちゃん、猪尾くんから聞いた? 今度4人で遊びに行くって話」
「オレは聞いてねえな」
 空馬が言う。
「お前どうせ暇だろ」
「いやバイトあるから。勉強もしなくちゃなんねえし」
「お前は見た目のわりに真面目だよな」

「見た目関係ないだろ。つーか宅也、前やった中間テストどうだったんだよ」
「国語以外は赤点だが? 他の教科は補修テストだ」

「はっ! あなた本当に頭が悪いのね!」

 環は突然、嬉しそうに言う。なんでこいつ俺を貶す時だけこんな元気になるんだよ。

「うるせえな。むしろ一切勉強していないのに国語が赤点じゃないことを褒めろ。さすがラノベ、あれはマジで教科書よりも偉大だ」
「それに関しては反論の余地はないわね」

「いやふたりとも反論の余地しかないからね。環ちゃんはテストどうだったの?」
「……だいたい、できてる」

 環は恥ずかしそうに言う。

「ふんっ! キモオタが何偉そうに自慢してんだよ」
「聞かれたことに答えただけよ。自慢に聞こえたのだとしたら申し訳ないわね。ごめんなさい。スクールカーストが底辺なだけじゃなく学力も底辺なんて、あなた逆に何ができるの? まだ蚊の方ができること多いわよ」

「だから俺を蚊扱いするな! 俺は害をもたらさない虫ケラだ」
「虫なのは否定しねえのな。じゃあちょうどいいじゃねえか。久遠、宅也に勉強教えてやれよ」

「……え、どうしてこんなナメクジに勉強を教えなきゃ……」
「ふんっ! 馬鹿が出たな環! ナメクジは虫じゃありませ~ん。巻貝の一種です~」

「出たわねマウント。あなた底辺のくせにすぐにマウント取りたがるわね。いえ、底辺だから余計にマウント取りたがるのね。ごめんなさいねナメクジくん」
「ふんっ! 俺がノーガードのナメクジだとしたらお前は殻を背負ったカタツムリだな。どうだ? 巻貝の気持ちは?」
「居心地がいいわ。あなたはすぐにやられる雑魚! 残念ねすぐに絶滅しなさい」

「ふたりともレベルの低い争いしないで? とにかく環ちゃんは猪尾くんの彼女なんだし、せっかくだから勉強教えてあげなよ。それともわたしが猪尾くんに勉強教えようか?」

「……私が教える」
「そっか」
 環が俯きがちに言い、一ノ瀬が微笑む。

「お前、俺に勉強教えられんのか~? 俺の学力の低さをなめるなよ」
「偉そうに開き直るんじゃない。私が時間を割くのだからちゃんと合格しなさいよ」

「面倒くせえなあ。アニメ観る時間が減る」
「あなたアニメ観ながら勉強もできないの? 本当要領が虫レベルね」
「あ⁉︎ 勉強しながらアニメ観るとかアニメを冒涜してんだよ! あ~これだからニワカは」
「ニワカと言ったわね……。じゃあ問題よ! 今週の『あい♡ぷり』の『ふらわあちゃん』と『さあやちゃん』の会話で出た『ふらわあちゃん』のお父さんの嫌いな食べ物は――」

「…………」

「何よ、答えられないの?」
「どうせ続きがあんだろ。同じ手には引っ掛からねえよ」
「残念! 引っ掛けじゃありませんでした~! 嫌いな食べ物はパイナップル。はぁ~、私が勉強しながらでもわかる答えにあなたは答えられないのね」

「だからお前のクイズはいっつも後付けじゃねえか! せこいんだよ! あぁ~これだからスクールカースト底辺は。あ、ごめん。底辺だからすぐにマウント取りたがるんだっけ~?」

「あなたに底辺扱いされたくないわ。これだから底辺蚊マウントナメクジは」
「なんだよその生き物! むしろ超ハイブリッドじゃねえか! はっ、俺のすごさをついに理解したな」

「……ねえ、そうやってふたりともずっと言い合いしてるの? 全然話進まないんだけど」

 一ノ瀬が呆れた様子で言う。

「こいつが喧嘩ふっかけてきたのが悪い」
「あなたがふっかけてきたのでしょう。ナメクジくん? 蚊? 底辺くん? 蚊等辺三角形? 名前なんだったかしら」

「あ⁉︎」
「は⁉︎」

「仲が良いのやら……。とにかく、今日の放課後、自習室集合でいいか?」

 空馬が呆れながら提案する。

「まあ、こいつがどうしても俺に勉強を教えたいならいいぞ」
「は? 教えてもらう立場が何偉そうに言ってるのかしら? 教えてもらうならそれ相応の誠意を見せなさいよ」
「うん、これは環ちゃんが正論だよ」

「くっ」
 俺は歯噛みする。

「ほら、地面に這いつくばりなさい。地面に! 頭を! つけるのよ!」

 環は立ち上がり、邪悪な笑みを向け床を指さす。
 俺は席から立ち上がり、床に膝を付ける。

「かっ、かかっ、お、おねっ、がががっ!」
「ほら、早く」

 環は機嫌よく言う。
 俺は倍返しされた常務のように頭を下げる。

「お、おおお、おねがっ! おねがあ! い! し、ま! すぅ!」
 俺は地面に頭を付ける。

「はっ、嫌よ」
「てめえ!」

 俺は勢いよく立ち上がる。

「まあまあ久遠。宅也が人にお願いするなんてこと滅多にねえからさ、教えてやってくれよ」
「……う、うん。わかった」
「あ⁉︎ なんで空馬の言うことは素直に聞くんだよ! なんだお前あれか~? イケメンの言うことなら聞くのか? はぁ~結局お前もリアルのイケメンには逆らえないんだな!」
「誠意が消えたわね。もう一度土下座しなさい」
「なんでだよ!」

 結局俺はもう一度土下座をして環に勉強を教えてもらうことになった。
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