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6.フィナーレ
気を取り直して、改めて皆で自己紹介をすることにした。
ミステリー作家の時田翔、歴史ファンタジー作家の葛城煌、ファンタジー作家で朗読家のROM-t、小説家で詩人・作曲家でもある嗅ぎタバコ野郎のテント。この4名は狸田真のTwitterのフォロワーであるという。いずれも、コラボ企画のツイートに参加申し込みをしていたのだ。自身で参加するか、自作小説のキャラクターを参加させるかを聞かれた際に、自身で参加すると答えていた。
事件を調べていたルポライターの御山恭輔、1863年の京都からきた九条伊吹、そして、多くを語らない謎の美少女アリア。この3人は直接的に狸田とは接点がないようだ。
何故、この世界にこのメンバーが転移させられたのだろうか?
翔には何となく予想がついた。
もちろん、自分は自分で参加申し込みをしたからなのだろうが...きっと、そうではない3人は、参加申し込みをしたフォロワー達の小説のキャラクターなのであろう。その証拠に見た目がとても良い。現実社会では、まず、お目にかかれないような美男美女である。
自分以外の作家が、何故、人外なのか?
コラボ企画参加の際に行われたアンケートがあった。自分は容姿の欄に馬鹿正直に記入したが、自分以外の皆は、ふざけて人外のキャラクターを入力したのだと予測される。
こんなことなら、イケメン魔法使いのチートキャラにすれば良かった! いや、自作小説のキャラを指定していれば良かったのだ!
後悔しても仕方がない。今は、何とかして帰えらないといけない。家では妻が、きっと心配して、私の帰りを待っている。
翔は深呼吸して脳に酸素を送ると、伊吹の持っていた、詩の紙に目を通した。
時田翔
「これが、何かのヒントだと思うのですが...」
葛城煌
「詩なのだから、朗読家であるロムティさんが朗読すれば良いのでは?」
九条伊吹
「そうだ! ロムティさん、読んでみて!」
ROM-t
「わ、わかりました!」
魔法使いの呪文のように、途中で噛んだら帰還に失敗するだろうか? ただえさえ、朗読は緊張するというのに、自分も含めて7名もの命の行方を左右することになる。空気が重く感じられ、喉がカラカラに乾くような気がした。
ROM-tは水を飲んでから咳払いをし、伊吹に広げてもらった詩に目を通した。
作:辻褄 詩集「死相」より
“メメントモリ”
可愛い犬の容姿からは想像がつかないような、凛々しいイケメンヴォイスが、少女の嘆きを語り出した。
ROM-t
「「嗚呼、私はなんて事を…」と
隣の少女が泣き叫ぶ。
よく、この国の罪人は一言で
メメントモリと言ってる。
あえて言うと罪人の子供には
メメントモリと名付けられる。
そう、私の親が殺人を犯し
メメントモリという名を付けられた。
メメントモリの名を持つ子供には
仕打ちを受ける決まりとなっている。
罪人の生まれ変わりかもしれないから
という理由で…」
朗読が終わり、皆で拍手をする。
ROM-tは一言一句、間違えることなく、情緒豊かに語りきったのだ。
だが、何も起こらない。
時田翔
「やはり、読んだだけでは駄目か...」
ROM-t
「そう思っていたなら、読ませないで下さいよ! 朗読するのって、とってもエネルギーを使うんですから! まぁ、読むのは好きなのですけど」
時田翔
「いえ、この詩に、帰還のヒントが隠されているのではないかと思ったのは本当です」
嗅ぎタバコ野郎のテント
「memento mori 、死を忘れるな...」
テントの言葉に、皆が一斉に振り返る。
時田翔
「どういう意味だか分かるのですか!?」
嗅ぎタバコ野郎のテント
「ラテン語だったように思います。元々は、『今がよくても、人はいつ死ぬかは分からない』と忠告するような言葉だったはずですが、次第に、『人はいつ死ぬのか分からないのだから、今を楽しめ!』というような意味へと変わっていった言葉です。また、キリスト教などの宗教世界では、『人はいつか死ぬから、俗世に執着するな』というような、道徳的な意味で使われるようにもなり、色々な意味を持っている言葉なのです」
時田翔
「この作品の中では、どういう意味に捉えられるのでしょうか?」
しばらく沈黙して、考察の後に、言葉は発せられた。
嗅ぎタバコ野郎のテント
「この詩は、言葉の意味をそのままで捉えると『罪人が処刑されて死んでも、罪人の死やその罪は忘れない、生まれ変わりかもしれない、その子供も罪人である』という意味になります。一見、『罪は消えないのだから、決して罪を犯してはならない』『罪を犯せば、自分の子までが苦しむこととなる』という教訓のようにも思えます。ですが、このメメント・モリには、もう一つの意味がある。」
時田翔
「それは、どういう意味なのでしょうか?」
嗅ぎタバコ野郎のテント
「罪を犯さずに死ぬものはおらず、人は皆、死んで罪が裁かれる。当然、貴方にも死が訪れ、裁きがあるだろう。だから、貴方は罪人を許しなさい」
時田翔
「つまり『死を忘れるな、罪人を許せ』となるのですね?」
嗅ぎタバコ野郎のテント
「そうですね」
時田翔
「では、罪人を許せばいいのか...でも、罪人とはいったい?」
アリアは首筋を傾げた。
葛城煌
「この場合の罪人は誰なのでしょうね?」
九条伊吹
「この国にいる罪人を端から調べていくしかないのかな? 」
御山恭輔
「憲兵の皆さんに聞けば早いのでは?」
皆が頭を抱える状況で、ROM-tは小首を傾げた。
ROM-t
「え? そんなに悩むこと? 罪人は勿論、あのタヌキ野郎のことでしょう?」
狸田真は罪人だ。異世界に皆を誘拐し、勝手気ままにキャラクターを魔改造した犯人である。だが、しかし、君たちが無事に帰還する条件は、ただ一つ。
僕に許しを与えることである。
参加者達が無事に帰還出来るかどうかは、応募者様次第。
狸田真
「皆無事に帰れました?」
幕
ミステリー作家の時田翔、歴史ファンタジー作家の葛城煌、ファンタジー作家で朗読家のROM-t、小説家で詩人・作曲家でもある嗅ぎタバコ野郎のテント。この4名は狸田真のTwitterのフォロワーであるという。いずれも、コラボ企画のツイートに参加申し込みをしていたのだ。自身で参加するか、自作小説のキャラクターを参加させるかを聞かれた際に、自身で参加すると答えていた。
事件を調べていたルポライターの御山恭輔、1863年の京都からきた九条伊吹、そして、多くを語らない謎の美少女アリア。この3人は直接的に狸田とは接点がないようだ。
何故、この世界にこのメンバーが転移させられたのだろうか?
翔には何となく予想がついた。
もちろん、自分は自分で参加申し込みをしたからなのだろうが...きっと、そうではない3人は、参加申し込みをしたフォロワー達の小説のキャラクターなのであろう。その証拠に見た目がとても良い。現実社会では、まず、お目にかかれないような美男美女である。
自分以外の作家が、何故、人外なのか?
コラボ企画参加の際に行われたアンケートがあった。自分は容姿の欄に馬鹿正直に記入したが、自分以外の皆は、ふざけて人外のキャラクターを入力したのだと予測される。
こんなことなら、イケメン魔法使いのチートキャラにすれば良かった! いや、自作小説のキャラを指定していれば良かったのだ!
後悔しても仕方がない。今は、何とかして帰えらないといけない。家では妻が、きっと心配して、私の帰りを待っている。
翔は深呼吸して脳に酸素を送ると、伊吹の持っていた、詩の紙に目を通した。
時田翔
「これが、何かのヒントだと思うのですが...」
葛城煌
「詩なのだから、朗読家であるロムティさんが朗読すれば良いのでは?」
九条伊吹
「そうだ! ロムティさん、読んでみて!」
ROM-t
「わ、わかりました!」
魔法使いの呪文のように、途中で噛んだら帰還に失敗するだろうか? ただえさえ、朗読は緊張するというのに、自分も含めて7名もの命の行方を左右することになる。空気が重く感じられ、喉がカラカラに乾くような気がした。
ROM-tは水を飲んでから咳払いをし、伊吹に広げてもらった詩に目を通した。
作:辻褄 詩集「死相」より
“メメントモリ”
可愛い犬の容姿からは想像がつかないような、凛々しいイケメンヴォイスが、少女の嘆きを語り出した。
ROM-t
「「嗚呼、私はなんて事を…」と
隣の少女が泣き叫ぶ。
よく、この国の罪人は一言で
メメントモリと言ってる。
あえて言うと罪人の子供には
メメントモリと名付けられる。
そう、私の親が殺人を犯し
メメントモリという名を付けられた。
メメントモリの名を持つ子供には
仕打ちを受ける決まりとなっている。
罪人の生まれ変わりかもしれないから
という理由で…」
朗読が終わり、皆で拍手をする。
ROM-tは一言一句、間違えることなく、情緒豊かに語りきったのだ。
だが、何も起こらない。
時田翔
「やはり、読んだだけでは駄目か...」
ROM-t
「そう思っていたなら、読ませないで下さいよ! 朗読するのって、とってもエネルギーを使うんですから! まぁ、読むのは好きなのですけど」
時田翔
「いえ、この詩に、帰還のヒントが隠されているのではないかと思ったのは本当です」
嗅ぎタバコ野郎のテント
「memento mori 、死を忘れるな...」
テントの言葉に、皆が一斉に振り返る。
時田翔
「どういう意味だか分かるのですか!?」
嗅ぎタバコ野郎のテント
「ラテン語だったように思います。元々は、『今がよくても、人はいつ死ぬかは分からない』と忠告するような言葉だったはずですが、次第に、『人はいつ死ぬのか分からないのだから、今を楽しめ!』というような意味へと変わっていった言葉です。また、キリスト教などの宗教世界では、『人はいつか死ぬから、俗世に執着するな』というような、道徳的な意味で使われるようにもなり、色々な意味を持っている言葉なのです」
時田翔
「この作品の中では、どういう意味に捉えられるのでしょうか?」
しばらく沈黙して、考察の後に、言葉は発せられた。
嗅ぎタバコ野郎のテント
「この詩は、言葉の意味をそのままで捉えると『罪人が処刑されて死んでも、罪人の死やその罪は忘れない、生まれ変わりかもしれない、その子供も罪人である』という意味になります。一見、『罪は消えないのだから、決して罪を犯してはならない』『罪を犯せば、自分の子までが苦しむこととなる』という教訓のようにも思えます。ですが、このメメント・モリには、もう一つの意味がある。」
時田翔
「それは、どういう意味なのでしょうか?」
嗅ぎタバコ野郎のテント
「罪を犯さずに死ぬものはおらず、人は皆、死んで罪が裁かれる。当然、貴方にも死が訪れ、裁きがあるだろう。だから、貴方は罪人を許しなさい」
時田翔
「つまり『死を忘れるな、罪人を許せ』となるのですね?」
嗅ぎタバコ野郎のテント
「そうですね」
時田翔
「では、罪人を許せばいいのか...でも、罪人とはいったい?」
アリアは首筋を傾げた。
葛城煌
「この場合の罪人は誰なのでしょうね?」
九条伊吹
「この国にいる罪人を端から調べていくしかないのかな? 」
御山恭輔
「憲兵の皆さんに聞けば早いのでは?」
皆が頭を抱える状況で、ROM-tは小首を傾げた。
ROM-t
「え? そんなに悩むこと? 罪人は勿論、あのタヌキ野郎のことでしょう?」
狸田真は罪人だ。異世界に皆を誘拐し、勝手気ままにキャラクターを魔改造した犯人である。だが、しかし、君たちが無事に帰還する条件は、ただ一つ。
僕に許しを与えることである。
参加者達が無事に帰還出来るかどうかは、応募者様次第。
狸田真
「皆無事に帰れました?」
幕
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