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 ガルボ公爵は、エミリアといなくなったクリスチナを心配して探していた。すると、テラスにいるエミリアを発見する。

 娘を苦しめたエミリア嬢に一言言ってやる!

 テラスに出て声をかける。

「エミリア嬢、本当に舞踏会に参加するとは、随分と強靭な精神をもっているんだね? 誤解を解くと言っていたようだが、ちゃんと出来ているのかね?」

 ガルボ公爵の嫌味な言い方に、エミリアはカチンときた。

「やっだぁ~、怖い顔しなくても、もう、バッチリ誤解を解きましたって! クリスチナ様にも、ちゃんとお伝えしておきましたよ! 私はヴィル王子とクリスチナ様の間を取り持つために頑張ってただけで、何でもないんですよって! それより、婚約破棄のこと、クリスチナ様に言ってなかったんですね?」

 ガルボ公爵はギクっとした。

 そういえば、クリスチナに内緒にしていたままだった!

「婚約破棄しちゃってた事を知って、クリスチナ様はめっちゃショックを受けてましたよ! 愛する2人を引き離すなんて、公爵様って野暮なんですねぇ~?」

 エミリアはフンッと鼻を鳴らした。

「無礼だぞ! 私は娘の幸せのために、父親として当然のことをしたまでだ!」

「クリスチナ様の幸せ? クリスチナ様は婚約破棄したってきいただけで倒れるほどショックを受けてたのに?」

「娘が倒れた!?」

「そうです! ヴィルヘルム殿下は求婚しないで離れて行ってしまったし、クリスチナ様は失恋しちゃったってことですよね? それって誰の所為なんだろ?」

 ガルボ公爵は青ざめた。

 クリスチナは婚約破棄したくないと、あんなに自分にお願いしていた。毎日、殿下に気に入られようと努力していた事も知っている。

 それなのに、婚約破棄をしたのは他ならない自分である。

 ガルボ公爵は、罪悪感で胸が詰まるのに、喪失感で体の力が抜けるような思いがした。

「クリスチナ様ってば可哀想! 泣いていらしたのよ?」

「クリスチナが泣いていた!?」

 子供の頃から、涙など見せなかったあの子が!?

「そうですよ! それで、クリスチナ様が泣きながら私に仲を取り持って欲しいって言ってました...何せ、私はヴィル王子の友達でしょ? そういったことには結構自信があるんです! 私だったら、クリスチナ様の力になれると思うんですけど...」

 エミリアはガルボ公爵に意味深な目を向けた。

「何が言いたい?」

「私がクリスチナ様の幸せをお手伝いしたら、私の幸せの手伝いをして下さったりするのかなぁ~? って思いまして」

「手伝いとは何だ!?」

「簡単な事です! 結婚相手に良い男性を紹介して下さい!」

 ガルボ公爵はグッと奥歯を噛み締めた。

 こんな頭の悪そうな平民の女に、頼らなくてはいけないのか!? しかし...臣下の癖に生意気な事を言って王子に婚約破棄を突き付けた自分が、再び婚約して欲しいと頼んでも、承諾してくれるか分からない。
 
 ヴィルヘルム殿下と結婚出来なければ、クリスチナは今日集まっていた、あの男達の中から結婚相手を選ばなくてはならないというのか!?

「分かった。ただし、成功したらだ! いいな!?」

「もちろんです!」


 エミリアはとびきりの笑顔を作った。

 だって、あの2人、両思いだし、ほっといても大丈夫なくらいだわ。それに、ダメ押しの私の作戦は完璧なのよ!
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