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18. 最初のワルツ
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次の曲になると、再び相手カップルがチェンジされる。
ステップの度に次々と変わる相手カップル。その度に、ドリスとニコラスの相手カップルには異変が起きた。突っ立ったり、転んだり、ダンスの進行方向を逆走する者も。
会話するどころか、失語症なのではないかと思うくらい挨拶もままならない。
ニコラス
「素敵なドレスですね! デザイナーはどなたなのですか?」
「は、はひ! あ、うぅ~...えぇっと...だから...ご、ご、ご、御免なさい!」
とあるデビュタントは突然泣き出して列から飛び出し、勝手に退場する始末。キャバリエもデビュタントを追って退場。カドリーユは4の倍数組のカップルでなければ踊れない。慌てて、客席から先輩カップルがダンスに入りフォローした。
ポルカ風のステップでは、相手を次々に変えてギャロップ(馬のように飛び跳ねる)ステップを踊る。体が密着した状態で胸の谷間が揺れるので、ドリスと踊ったあとのキャバリエ達は鼻血を垂らす者や、体を硬直させる者が相次いだ。
ドリスと踊ったキャバリエが、次のダンス相手であるデビュタントのドレスに鼻血をたらしてしまった。血を見たデビュタントは悲鳴を上げる。
「きゃ~!!!」
デビュタントの真のパートナーであるキャバリエが、自分のパートナーがセクハラをされたと勘違いした。
「お前! 彼女に何をした!?」
自分のパートナーを助けようと、鼻血のキャバリエを突き飛ばす。突き飛ばされたキャバリエはバランスを崩し、別のデビュタントに倒れかかった。
倒れる際に不運にも掴んでしまったドレスのレースがビリビリと音を立てて破れる。
「い、いやぁ~!」
ドレスが破られたデビュタントは大きな声で泣き出した。
周囲のカップルはもちろん、離れた場所で踊っていたカップルも、その騒動に気を取られ、ダンスのステップを忘れて立ち往生する者が続出する。
当然、カドリーユはめちゃくちゃになり、曲が終わる前に霧散した。
閲覧席で見守る家族達も大騒ぎだ。
「今年は何が起きているの!?」
「今まで、多少のミスはあっても、全体のダンスが止まるなんてことは1度もなかったのに!」
「格式ある舞踏会がなんてこと!?」
問題が起きたデビュタントとキャバリエは係の者に誘導され、別室へと移動していった。
司会進行役が、汗をハンカチで拭いつつ、次の流れに誘導する。
司会
「とんだハプニングがございましたが、こんな時こそ落ち着いて対処するのが紳士淑女というものです。気を取り直して、次の予定に進みたいと思います。パートナーと踊る最初のワルツを!」
オーケストラのマエストロ(指揮者)は、その場の空気を変えようと渾身のタクト(指揮)を振った。楽団員達の心も一つになる。
このカオス(混沌)な状況を何とかせねば!
いつもよりも、研ぎ澄まされた感覚で演奏されたワルツは名演だった。
デビュタント達は、次第に落ち着きを取り戻し、ワルツの力に引っ張られるように、お辞儀をして三拍子のステップを踏み始めた。
ドリスとニコラスも、2人で向かい合ってお辞儀をする。視線を合わせて笑い合い、互いの片手を重ねると、引力が星と星とを繋ぐように、体を引き寄せあった。
ニコラスの手がドリスの背に優しく添えられる。
ドリスの手はその優しい腕に軽く添えられた。
2人でワルツの調べに身を委ねる。
ワルツの回転でドリスのドレスの裾が広がる。花ビラが開くようにフワフワ、ヒラヒラと。
ドリスだけでなく、ニコラスの衣装もツバメが舞うようにイブニングコート(燕尾服)のテール(尻尾)部分が翻(ひるがえ)った。
クリノリンでガチガチに広げられたドレスやフロックコートのように前まできっちり覆われているジャケットでは、踊りによる衣装の形状変化は起こらない。
人々は形状変化する新世代の衣装から目が離せなくなり、2人のダンスを食い入るように見つめた。
他のデビュタント達もワルツの1番が終わると早々にフィニッシュターンして踊りを終わらせ、2人のダンスをゆっくり見ようとサイドに寄る。
そして、とうとう、ロマンチックなワルツは2人だけのものになった。
ドリス
「今日は、体調不良の方やダンスが不勉強な方が多いわね。由緒正しい舞踏会なのに、権威が下がってしまっているのかしら?」
ニコラス
「皆、逆に緊張し過ぎているんだよ」
ドリス
「練習が足りていないのですわ! 目を瞑っても踊れるようにしていれば、緊張していても踊れますもの」
ニコラス
「そうだね。そうしたら、ドリちゃんに目を潰されても踊っていられるね!」
ドリス
「何で、ワタクシが皆様の目潰しをすることになっているのです? ワタクシはそんなに凶暴ではありませんわ」
ニコラス
「芸術は時として、凶暴で残酷な一面を持っているのです」
ドリス
「何を意味不明なこと言ってるの? 人間にも分かるように言いなさいよ!」
ニコラスは、ドリスの美しさが男達を盲目にしていると言いたかったのだが、ドリスには伝わらなかった。
ニコラス
「ドリちゃんこそ(男を惑わす魔女をやめて)人間になった方が良いと思うよ?」
ドリス
「あら? 今日、ワタクシを妖精にしたのは誰なのかしら?」
ニコラス
「オレでした! 御免なさい。これからは、ドリちゃんを人間にするように頑張ります!」
ドリス
「しなくて宜しい!」
ニコラス
「そう? でも、それなら作品の著作権を主張しないと、泥棒さんに盗られてしまうのです」
(美し過ぎる妖精から、ドリちゃんを美しくない人間にしないのであれば、間男に奪われてしまうから、ドリちゃんをオレのものだと主張しなくてはいけない)
ドリス
「ワタクシが着ているのにドレスが盗まれたりするものですか! それとも、デザインのこと?」
ニコラスは腕を上げてドリスの体をくるっとひっくり返した。後ろから抱きしめるような体勢になったニコラスはドリスの後頭部に頬を寄せ、そして、こっそりと髪にキスを落とす。
ニコラス
「丸ごと全てだよ」
見ていた会場全ての紳士淑女が身悶えした。
黄色い悲鳴と歓声、甘い溜息、落胆の呻(うめ)きと嗚咽、そして拍手が、あちらこちらで巻き起こる。
ドリスは何をされたのか分からず「?」を飛ばしたが、珍しいステップの所為だと思い、気にするのをやめた。
(※恋人同士以外で過度な接触はセクハラです。ダンスパートナー相手でも合意のない過度な接触はやめましょう)
通常のステップに戻り、曲の終わりでフィニッシュのターンをきめてお辞儀をすると、2人に盛大な拍手が贈られた。
ステップの度に次々と変わる相手カップル。その度に、ドリスとニコラスの相手カップルには異変が起きた。突っ立ったり、転んだり、ダンスの進行方向を逆走する者も。
会話するどころか、失語症なのではないかと思うくらい挨拶もままならない。
ニコラス
「素敵なドレスですね! デザイナーはどなたなのですか?」
「は、はひ! あ、うぅ~...えぇっと...だから...ご、ご、ご、御免なさい!」
とあるデビュタントは突然泣き出して列から飛び出し、勝手に退場する始末。キャバリエもデビュタントを追って退場。カドリーユは4の倍数組のカップルでなければ踊れない。慌てて、客席から先輩カップルがダンスに入りフォローした。
ポルカ風のステップでは、相手を次々に変えてギャロップ(馬のように飛び跳ねる)ステップを踊る。体が密着した状態で胸の谷間が揺れるので、ドリスと踊ったあとのキャバリエ達は鼻血を垂らす者や、体を硬直させる者が相次いだ。
ドリスと踊ったキャバリエが、次のダンス相手であるデビュタントのドレスに鼻血をたらしてしまった。血を見たデビュタントは悲鳴を上げる。
「きゃ~!!!」
デビュタントの真のパートナーであるキャバリエが、自分のパートナーがセクハラをされたと勘違いした。
「お前! 彼女に何をした!?」
自分のパートナーを助けようと、鼻血のキャバリエを突き飛ばす。突き飛ばされたキャバリエはバランスを崩し、別のデビュタントに倒れかかった。
倒れる際に不運にも掴んでしまったドレスのレースがビリビリと音を立てて破れる。
「い、いやぁ~!」
ドレスが破られたデビュタントは大きな声で泣き出した。
周囲のカップルはもちろん、離れた場所で踊っていたカップルも、その騒動に気を取られ、ダンスのステップを忘れて立ち往生する者が続出する。
当然、カドリーユはめちゃくちゃになり、曲が終わる前に霧散した。
閲覧席で見守る家族達も大騒ぎだ。
「今年は何が起きているの!?」
「今まで、多少のミスはあっても、全体のダンスが止まるなんてことは1度もなかったのに!」
「格式ある舞踏会がなんてこと!?」
問題が起きたデビュタントとキャバリエは係の者に誘導され、別室へと移動していった。
司会進行役が、汗をハンカチで拭いつつ、次の流れに誘導する。
司会
「とんだハプニングがございましたが、こんな時こそ落ち着いて対処するのが紳士淑女というものです。気を取り直して、次の予定に進みたいと思います。パートナーと踊る最初のワルツを!」
オーケストラのマエストロ(指揮者)は、その場の空気を変えようと渾身のタクト(指揮)を振った。楽団員達の心も一つになる。
このカオス(混沌)な状況を何とかせねば!
いつもよりも、研ぎ澄まされた感覚で演奏されたワルツは名演だった。
デビュタント達は、次第に落ち着きを取り戻し、ワルツの力に引っ張られるように、お辞儀をして三拍子のステップを踏み始めた。
ドリスとニコラスも、2人で向かい合ってお辞儀をする。視線を合わせて笑い合い、互いの片手を重ねると、引力が星と星とを繋ぐように、体を引き寄せあった。
ニコラスの手がドリスの背に優しく添えられる。
ドリスの手はその優しい腕に軽く添えられた。
2人でワルツの調べに身を委ねる。
ワルツの回転でドリスのドレスの裾が広がる。花ビラが開くようにフワフワ、ヒラヒラと。
ドリスだけでなく、ニコラスの衣装もツバメが舞うようにイブニングコート(燕尾服)のテール(尻尾)部分が翻(ひるがえ)った。
クリノリンでガチガチに広げられたドレスやフロックコートのように前まできっちり覆われているジャケットでは、踊りによる衣装の形状変化は起こらない。
人々は形状変化する新世代の衣装から目が離せなくなり、2人のダンスを食い入るように見つめた。
他のデビュタント達もワルツの1番が終わると早々にフィニッシュターンして踊りを終わらせ、2人のダンスをゆっくり見ようとサイドに寄る。
そして、とうとう、ロマンチックなワルツは2人だけのものになった。
ドリス
「今日は、体調不良の方やダンスが不勉強な方が多いわね。由緒正しい舞踏会なのに、権威が下がってしまっているのかしら?」
ニコラス
「皆、逆に緊張し過ぎているんだよ」
ドリス
「練習が足りていないのですわ! 目を瞑っても踊れるようにしていれば、緊張していても踊れますもの」
ニコラス
「そうだね。そうしたら、ドリちゃんに目を潰されても踊っていられるね!」
ドリス
「何で、ワタクシが皆様の目潰しをすることになっているのです? ワタクシはそんなに凶暴ではありませんわ」
ニコラス
「芸術は時として、凶暴で残酷な一面を持っているのです」
ドリス
「何を意味不明なこと言ってるの? 人間にも分かるように言いなさいよ!」
ニコラスは、ドリスの美しさが男達を盲目にしていると言いたかったのだが、ドリスには伝わらなかった。
ニコラス
「ドリちゃんこそ(男を惑わす魔女をやめて)人間になった方が良いと思うよ?」
ドリス
「あら? 今日、ワタクシを妖精にしたのは誰なのかしら?」
ニコラス
「オレでした! 御免なさい。これからは、ドリちゃんを人間にするように頑張ります!」
ドリス
「しなくて宜しい!」
ニコラス
「そう? でも、それなら作品の著作権を主張しないと、泥棒さんに盗られてしまうのです」
(美し過ぎる妖精から、ドリちゃんを美しくない人間にしないのであれば、間男に奪われてしまうから、ドリちゃんをオレのものだと主張しなくてはいけない)
ドリス
「ワタクシが着ているのにドレスが盗まれたりするものですか! それとも、デザインのこと?」
ニコラスは腕を上げてドリスの体をくるっとひっくり返した。後ろから抱きしめるような体勢になったニコラスはドリスの後頭部に頬を寄せ、そして、こっそりと髪にキスを落とす。
ニコラス
「丸ごと全てだよ」
見ていた会場全ての紳士淑女が身悶えした。
黄色い悲鳴と歓声、甘い溜息、落胆の呻(うめ)きと嗚咽、そして拍手が、あちらこちらで巻き起こる。
ドリスは何をされたのか分からず「?」を飛ばしたが、珍しいステップの所為だと思い、気にするのをやめた。
(※恋人同士以外で過度な接触はセクハラです。ダンスパートナー相手でも合意のない過度な接触はやめましょう)
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