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12.二人の友達
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レーバルとの話が終わり、奏人は宿へ戻った。
もちろん街を探索してもよかったのだが、レイプ未遂を思い出し早々に帰ることにしたのだ。
「街を見るときは誰かと一緒に・・・の方がよさそうだよな」
宿へ帰るとすでにシュビルとルリールは戻っており、互いにダンジョンで手に入れたお金の数を数えていた。
「よっしゃぁ!今日はかなり稼げたぞ」
「俺も!・・・あ!奏人おかえり~」
「ただいま。二人とも早かったんだな」
「おう、目標に到達したから帰ってきちまった」
シュビルは相当嬉しかったのか、お金をパラパラと見せつけながら笑って答える。
「そっか」
「でも、まだアイツは倒せないね」
ルリールがしゅんとした顔でシュビルに同意を求めると、シュビルも肩を落として頷く。
「アイツって?」
奏人が聞くと、ルリールがスマホを取り出し大きなモンスターの写真を見せてきた。
「この街で多分一番大きいモンスター。報酬がとんでもない額なんだ」
「ルリールは弟と旅がしたいんだって。そのためにお金を貯めてるんだよね~」
シュビルがね、とルリールの背中を叩くと、恥ずかしそうに笑った。
「旅?」
「うん、旅。僕と弟はずっとこの街で生まれ育ったし、家も貧乏だったから旅行なんてしたことないんだ。だから、いつか弟を連れて旅に出たいんだ」
「へぇ、いい夢だね」
奏人はそう言ってベッドに腰を下ろすと、ルリールが立てかけていた大きな剣が倒れそうになる。
「おっ・・・と・・・ごめんルリール!」
倒れる手前のところで奏人は剣をキャッチし元の場所に戻す。
ふとルリールの方を見ると、目を丸くして驚く二人の姿が目に入った。
「・・どうしたの?二人とも」
「え・・・いや、その剣、重くないの?」
ルリールがおずおずと尋ねる。
奏人は剣をちら、と見て少し、と答える。
するとルリールはまたびっくりしたような顔をして奏人を見た。
「僕、こう見えて力があんのが自慢なんだよね」
奏人はそう言って腕まくりをして力こぶを作る。するとシュビルがいやいや、と割って入ってきた。
「そういうことじゃなくてな・・・。普通、人の剣って勝手に別の人が使わないように所有者以外にはとんでもなく重く感じるように作られてるんだよ」
原理は分かんねぇけど、と言いながらシュビルはルリールの剣を持とうとする。が、ビクとも動かない。
顔を真っ赤にして剣を持とうとするシュビルの姿は、とても嘘をついているようには見えなかった。
「ま、まじ・・・?めちゃくちゃ軽く感じるんだけど・・・」
シュビルが必死に持とうとする剣を奏人はひょい、と持ち上げる。
まるで、紙切れでも掴むかのように軽々持ち上げる姿を見てルリールは焦る。
「え、なんで?今日、剣使いすぎたから魔力切れちゃったかな?」
「魔力は関係ねぇだろ、たぶん・・・。だって俺持てねぇし・・・」
納得いかない様子の二人。
奏人はやはり自分は他とは違う能力を持つのだと確信し、先ほど病院でレーバルから聞いた話をした。
二人は黙って真剣に耳を傾ける。それが奏人にとってはとてつもなく嬉しかった。
もちろん街を探索してもよかったのだが、レイプ未遂を思い出し早々に帰ることにしたのだ。
「街を見るときは誰かと一緒に・・・の方がよさそうだよな」
宿へ帰るとすでにシュビルとルリールは戻っており、互いにダンジョンで手に入れたお金の数を数えていた。
「よっしゃぁ!今日はかなり稼げたぞ」
「俺も!・・・あ!奏人おかえり~」
「ただいま。二人とも早かったんだな」
「おう、目標に到達したから帰ってきちまった」
シュビルは相当嬉しかったのか、お金をパラパラと見せつけながら笑って答える。
「そっか」
「でも、まだアイツは倒せないね」
ルリールがしゅんとした顔でシュビルに同意を求めると、シュビルも肩を落として頷く。
「アイツって?」
奏人が聞くと、ルリールがスマホを取り出し大きなモンスターの写真を見せてきた。
「この街で多分一番大きいモンスター。報酬がとんでもない額なんだ」
「ルリールは弟と旅がしたいんだって。そのためにお金を貯めてるんだよね~」
シュビルがね、とルリールの背中を叩くと、恥ずかしそうに笑った。
「旅?」
「うん、旅。僕と弟はずっとこの街で生まれ育ったし、家も貧乏だったから旅行なんてしたことないんだ。だから、いつか弟を連れて旅に出たいんだ」
「へぇ、いい夢だね」
奏人はそう言ってベッドに腰を下ろすと、ルリールが立てかけていた大きな剣が倒れそうになる。
「おっ・・・と・・・ごめんルリール!」
倒れる手前のところで奏人は剣をキャッチし元の場所に戻す。
ふとルリールの方を見ると、目を丸くして驚く二人の姿が目に入った。
「・・どうしたの?二人とも」
「え・・・いや、その剣、重くないの?」
ルリールがおずおずと尋ねる。
奏人は剣をちら、と見て少し、と答える。
するとルリールはまたびっくりしたような顔をして奏人を見た。
「僕、こう見えて力があんのが自慢なんだよね」
奏人はそう言って腕まくりをして力こぶを作る。するとシュビルがいやいや、と割って入ってきた。
「そういうことじゃなくてな・・・。普通、人の剣って勝手に別の人が使わないように所有者以外にはとんでもなく重く感じるように作られてるんだよ」
原理は分かんねぇけど、と言いながらシュビルはルリールの剣を持とうとする。が、ビクとも動かない。
顔を真っ赤にして剣を持とうとするシュビルの姿は、とても嘘をついているようには見えなかった。
「ま、まじ・・・?めちゃくちゃ軽く感じるんだけど・・・」
シュビルが必死に持とうとする剣を奏人はひょい、と持ち上げる。
まるで、紙切れでも掴むかのように軽々持ち上げる姿を見てルリールは焦る。
「え、なんで?今日、剣使いすぎたから魔力切れちゃったかな?」
「魔力は関係ねぇだろ、たぶん・・・。だって俺持てねぇし・・・」
納得いかない様子の二人。
奏人はやはり自分は他とは違う能力を持つのだと確信し、先ほど病院でレーバルから聞いた話をした。
二人は黙って真剣に耳を傾ける。それが奏人にとってはとてつもなく嬉しかった。
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