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第2話 そして、人生は続く
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公爵令嬢が奸計に陥った夜。床に流れる血を目の当たりにして、ふんわり気絶したファイエット。
目覚めれば、視界いっぱいの見覚えのない天井。
右を見る。見知らぬ壁。
左を見る。見知らぬ部屋だった。
部屋の扉の横には椅子が一脚が置いてある。
その椅子に座る部屋の備品のような侍女もやはり見知らぬ者だった。
侍女は目が合うと、すっと立ち上がって寝台の傍に近づいてくる。
「ご気分はいかがですか」
口調こそ丁寧だったが、冷めた眼差し。口元には冷笑が浮かぶ。
誰に説明されなくとも分かる。この女は自分を見下している。
ファイエットは、お前の態度で気分が悪くなったと口に出すのを控えて緩く首を振る。
悪意に気付かぬふりを装ってファイエットは尋ねた。
「ここはどこなのかしら」
侍女は、水のたっぷり入った水差しを軽々と持ち、グラスに水を注ぎ入れながら答える。
「王宮の西塔ですわ。夜会でお倒れ遊ばしたベリナール男爵令嬢をこちらへお運びしてお世話するようにと、王妃殿下から御下命がございました」
グラスを差し出す姿に、こちらへの敬意は全く感じられない。
王宮侍女は大抵伯爵令嬢以上。
男爵令嬢の自分を見下しているのだろうとファイエットは当たりをつけた。
王太子の想い人が誰なのか、この女は知らないらしい。
あとで告げ口したら大層叱られるに違いない。
ファイエットは意地悪い気持ちになって口の両端を僅かに上げた。
差し出されたグラスを受け取って一口飲む。
飲んで気付いたが、とても喉が乾いていた。体が求めるままグラスを傾けて水を飲み干す。
喉の乾きから時間の経過が感じられた。
グラスを返しながら、ファイエットは再び侍女に尋ねる。
「あれから、どれくらい経ったのかしら?」
「今はお倒れになられた翌日で、昼を少し回っております」
通りで空腹を感じる訳だ。ファイエットが自分の胃の辺りを見ると、侍女はすかさず「昼食を支度させます」と言って扉横に設置されたキャビネットの上にあるハンドベルを鳴らした。
「どうして、塔なのかしら」
滞在させるなら王宮内ではいけなかったのか。
このファイエットの疑問は真っ当だった。
けれど、侍女の回答は素っ気ない。
「恐れ多くも王妃殿下の思し召しですわ。わたくしには分かりかねます」
役立たずめ。
ファイエットは心の中で毒づく。
聞かないと答えない。聞かれても答えない。
そもそも侍女風情に詳しい情報が与えられているとも思えない。
どうしたものかとファイエットが思っている間にも、侍女はカーテンと窓を開けてからクロゼットに移動し、テキパキとデイドレス一着とコルセットを持って戻ってくる。
気を失っていた為、湯を浴びずにいたと気付いたファイエットは、首元に手を持ってきて初めて分かった。どうやら拭き清められていたようだ。身体全体にベタつきは感じられない。
もしかしてと思いながら頬に触れるとしっとり潤っている。化粧を落としたあと、化粧水などで整えてくれたらしい。
嫌な女に良い評価を与えたくはないが、ベリナール家の侍女より有能だとファイエットも言わざるを得ない。
洗顔を含めた身支度を済ませ、ドレス着用の手伝いを受けながら、希望しても帰して貰えなさそうだなとドアを一瞥する。それを察して侍女は言った。
「王妃殿下からのお声が掛かるまでは、こちらでお待ちいただくようにと言われております」
まあ予想していたことだと、ファイエットは侍女に頷いて見せる。
理由は不明だが、囚われの身になってしまった。
王妃からの用件が分からない今は助けを待つしか無い。
不安はなかった。塔に囚われた姫を助ける王子様は居る。
しかも本物の――。
*
あれから一週間経過したが、誰も来ず、もちろん説明もない。
不安も不満も抑えに抑えていたファイエットの鬱憤は、ここで爆発した。
「どうなってるの!? 誰も来ないし、連絡もないじゃない!!」
この国の貴族としてあるまじき下衆な振る舞いに、侍女の常に冷たい眼差しは極寒と言える温度に変わる。
侍女は憎しみさえも滲ませて、ファイエットに冷たい視線を向けたまま慇懃に答えた。
「王太子殿下のご婚約者であるベルティーユ様が意識不明の重体で、現在も宮廷医が総出で治療に当たっているのです。王妃殿下はベルティーユ様がご幼少の頃から目を掛けておいででしたから、大変お心を痛めておられます。ご公務の合間を縫って付き添われているので、お時間を割くのが難しいのでしょう」
ファイエットが久しぶりに耳にしたベルティーユの名は、湯だった自身の頭に掛ける冷水の役目を果たした。
意識不明の重体と聞かされれば、余りの後味の悪さに嫌な気持ちにもなる。
大理石の床に散らばった金髪と彼女の唇に塗られた赤。その色に似た血の赤が見る間に広がって行く光景が頭に浮かぶ。
気分が悪くなり、ファイエットは軽く頭を振って思い出したこと自体を無かったことにした。
けれど、まだ婚約破棄にはなっていないことは引っ掛かった。
無意識に人差し指を唇に持っていく。
彼女が沈思する際の動作だった。
結局はベルティーユの容態次第だと結論づけるが思考はその先へ進もうとする。
ファイエットは頭を懸命に左右に振って進行を止めた。
ベルティーユの容態が悪化することで、今より有利なところに駒を進めることが出来る。
その代わり今よりもずっと気分が重く沈むに違いなかった。
嫌な報告は、どこでも歓迎されないもの。
ファイエットは集る虫を払う手付きで侍女に退室を促した。
蔑んだ目を隠しもせず、形式的に頭を下げた侍女は、用がないならとドアへ向かう。
ふと思い出したことがあり、ファイエットはその後ろ姿を目で追った。
王太子はどうしてるのか。
この女には聞きたくなくて、王妃に直接尋ねるつもりだった。
ところが、王妃どころか誰からも何の音沙汰なく一週間が経過した。
知る術がないなら、やはり侍女に聞いておくべきかと考え直したのだ。
今のファイエットにとって情報源は元より一つしか無い。
呼び止める段になってファイエットは侍女の名前を知らないことを思い出した。
どう呼ぶべきか考えている間に侍女は部屋を出ていった。
こういう時こそ、いつもの察しの良さを発揮すべきじゃないのか。
ファイエットは勝手な考えで侍女を心の中で詰る。
あの侍女は初めて会ったときも名乗らなかったし、ファイエットも今更名前を聞くつもりもない。
もはや聞いたら負けのような気さえしている。
自分を嫌っているのは肌で充分に感じるが、口惜しいことに彼女は大変優秀で仕事ぶりに文句はない。
そのお陰もあってか、ここの生活はファイエットにとってそう悪くなかった。
出される料理はどれも美味しいし、午後のお茶も用意してくれる。
供されるお菓子も趣向が凝らされたもので毎回違う。
入浴も毎晩出来る。
部屋に多く置かれた花瓶の花は、毎朝取り替えられている。
クロゼットに揃えられたドレスも既製品ながら自分で持っている物よりずっと高価だ。
退屈を紛らわせるものは一通り揃っている。
けれど、当然と言おうか良いことばかりでもない。
自分が囚人のようだとファイエットが自覚する瞬間は度々ある。
侍女の目を盗んでここから出ようとしても塔の1階には屈強な騎士が複数名立っていて、許可の無い人の出入りを許さなかった。
散歩も出来ない。体を動かしたければ階段の昇り降りをする位しかない。
せめて景色でも楽しめたら良かったが、階段の途中にある小さな窓から見えるのは、鬱蒼とした森だけ。
これがファイエットのいつ終わるとも知れない優雅な囚人生活の全てだった。
*
更に3日が過ぎた頃、ファイエットは手紙を二通侍女に渡した。
「これを出してきて」
侍女は封筒の裏表を確認すると、一旦受け取った手紙を差し返した。
「国王陛下と王妃殿下のご命令により王太子殿下への連絡は禁じられています。ただいま王太子殿下は、どなたであっても連絡の取次の一切を受けられないご状況です」
ファイエットは不満げにしながらも、王太子宛のものを膝に載せて、一通だけ封筒を侍女に押し付ける。
「それならアルベルク様宛のだけでいいわ」
だが侍女は、その手紙も受け取らなかった。
片眉を上げるファイエットを見ても表情すら変えない。
「グライエ卿も同じく、お父上の宰相のご命令により、連絡の取り次ぎを止められているご状況だと聞いています」
頼みにしていた二人の状況がなんとなく読めた。
怒鳴りたい気持ちをグッと堪えて、ファイエットは淑女らしく微笑んでみせた。
「じゃあ、それ以外の方宛なら手紙を送ってくれるの?」
侍女は無言のまま、にこりと笑顔を返す。見下げ果てた目で。
それが答えだった。
「何度も申し上げておりますが、ご家族宛でしたら、いつでも何通でもお送りします」
ベリナール家の事情が分かった上で付け足した言葉だった。
ファイエットは実父、義母とは折り合いが悪い。
彼女は実母が病気で亡くなると、世間体が悪いという理由から三年前に引き取られた。
血の繋がりの有無に関わらず、突然同じ屋根の下で生活を共にし始めたからといって家族になれる訳じゃない。
元々の相性や歩み寄る姿勢や努力が必要だった。
残念ながらそのいずれも互いになかった。
そして、そのことを理解しながら関係の改善を希望しなかった。
ファイエットは父親のベリナール男爵の助けを当てにしていない。
そもそも男爵家が王家に意見して何か変わるなんて思っていない。
親の情もこれまで期待したことがないし、前世の記憶が戻ってからは、余計に親という認識が薄れた。
だから入学してから一度も実家へは連絡をしなかったし、義母からは苦情らしき手紙が山と来ていたがファイエットは封を切ったことはない。
目に入るところに居るのは愛想のない侍女だけ。
人を招くことは禁じられている。
居ないも同然の家族にしか手紙を出すことは許されていない。
話し相手も事欠く、刺激のない優雅で単調な繰り返しの日々。
気が変になりそうだった。
暇つぶしに日記でも書こうかとノートを取ってガラスペンを持つ。
インク壺にペン先をたっぷり浸して、ペンを持ったまま書き出しを考えているときに、彼女にとって余り良くない考えが浮かぶ。
あれは――イベントではなかった?
ペンを握っているファイエットの手に力が入る。
無理やりフラグは立てた。イベントは発生しファイエットが考えていた通りに進んだ。途中までは。
思い違いをしていただけで、もしもあれがイベントでないのなら、ファイエットが望んでいたエンディングは恐らく来ない。
そもそも物語の終わりなんてピリオドを打つ位置で変わるものだ。
始まりと終わりを決めて人生の一部を切り取り、不都合は霞ませて時には無かったことにする。
事実や他人の心情までも捏造し、大衆が望む味付けをしたものが物語と呼ばれる。
そんな当たり前のことに今更気づいたファイエットは強張った指先からペンを取り落とす。
ファイエット・ベリナールの物語は、自分が望まぬ流れで続いていた。今はどうだ。囚人のように塔に押し込められている。
倒れたペンの先からはインクが垂れて、真新しいノートの1ページ目に黒い染みを作って拡がった。
それは不吉な未来を暗示しているように見えた。
ファイエットは頭を抱えて目を固く閉じる。
これからハッピーエンドを迎えられるはずだ。悪役令嬢を婚約者の座から引きずり下ろしたのだから、王太子を筆頭に自分へ愛を捧げた男たちと幸せに暮らせるはずなのだ。そう決められている。
婚約したら王太子が20歳の成人を迎えたとき、何の苦もなく王太子妃になれるはずだ。
筈だ、筈だと推定を重ねてしまうのは、断言できない理由が幾つもあったから。
ファイエットは恐ろしくてその事実から目を逸らしていた。
*
王妃がファイエットの前に現れたのは、塔の住人になって1ヶ月が過ぎた頃だった。
王宮には呼ばれず、王妃が塔まで態々出向いた。
どうあってもここから出さないつもりらしい。
この日は王妃訪問の準備で人の出入りが多くあった。
多くの使用人の手で、塔内で一番広い部屋と、そこへ至る石階段と通路に赤絨毯が敷かれた。
部屋の上座にあたる所に高い段が据えられ、その上に一国の王妃が座るに相応しい美しい椅子が置かれた。
当日の王妃の装いを聞かれてもファイエットには答えられない。
入室する直前に平伏するように命じられたファイエットは、国で最も高貴な女性を前に頭を下げたまま動けない。
その頭上に思いのほか優しげな声が降ってくる。
「ベリナール男爵令嬢は親しい友人が多い中、シルヴァンとは特に親しくしてくれていたと多くの者から聞いていました。礼を言いますよ」
決して言葉通りに受け取ってはいけない。
多くの子息と不適切な距離での付き合いが噂になっている。
そもそも男爵令嬢の分際で婚約者が居る王太子に他人の口の端に乗る位、大っぴらに粉を掛けるなんて身の程知らずにも程があるだろう。
恥を知れという批難と罵倒の長い意味が込められた貴族的な言い方だった。
ファイエットも嫌味を言われた位は分かっている。
悔しいが言い返すことの出来ない相手だ。耐えるしか無い。
更に一歩王妃は踏み込んだ質問をしてくる。
「シルヴァンが好きなの?」
王妃の声は上品で優しげだった。
王太子から聞いていた印象と違いファイエットは戸惑ってしまう。
「ベリナール男爵令嬢。妃殿下は返答をお求めです」
いつも無礼な態度を表情に余すことなく乗せる侍女の聞き慣れた声だった。
この女に自分が王太子の想い人だと知らしめる良い機会だとファイエットは思った。
「はい。お慕いしております。王太子殿下におかれましては、恐れ多くもわたくしと同じ気持ちを返してくださいました」
「あの子と添いたげたい?」
王妃に畳み掛けるように問われて、ファイエットは答えて良いのか悩み、顔を上げないまま先程聴こえた声の方向。右の壁側に控える侍女を見る。
彼女は動かない。喋らない。軽蔑を隠さない目でファイエットを見つめ返すだけだった。
何かを答える必要にかられた。何かしなければならないと。それは強迫観念のようなものだったかもしれない。
ファイエットは苦し紛れに顔を伏せたまま無言で深く頷いた。
「本当に? 廃嫡されて王太子でなくなっても? 除籍されて王子ですらなくなって、一文無しで城から追い出されたとしても?」
同じく優しげな声だったが、不穏な言葉が幾つも含まれていて、ファイエットはギクリと身体を固まらせる。
返答に失敗したら全てが終わってしまう可能性を秘めた重要な問いだと思った。
どう答えたものか悩むファイエットの背中に冷たい汗が伝う。
今度は答えを求めて侍女の顔を見なかった。
心の動きを読んだのか王妃は、くつくつと笑う。
顔を上げて確認しなくとも王妃が淑女の仮面を脱いで、素を晒したのが気配で分かった。
「ベルティーユとの婚約は無くなるよ。シルヴァンには、また婚約者候補を見繕わねばならん」
先程よりもずっと低い声。武人のような覇気を感じさせる物言い。
王妃というよりも戦いを好む女王のようだった。
これまでプレイしてきた乙女ゲームには、王太子の妃になるまでの道程で王妃が立ち塞がり、結婚を阻もうとするエピソードはない。
ファイエットは唇を噛む。こうなっては認めるほかない。
やはり、あのイベントは無理やり起こそうとしたから失敗したのだと。
好きだとは言われた。愛しているとも。
守りたい。大事にしたい。
容姿を褒める言葉。笑顔や手に触れることを乞う言葉。
王太子に限ったことじゃない。男は似たようなことしか言わない。聞いても聞かなくてもどちらでも良いような。
それでもファイエットは幸せな結末を迎える為に、王太子の口からは絶対に聞きだしたい言葉があった。
彼女は、まだ王太子から結婚を求められていない。
「婚約者候補に名を連ねたくば、これから積み上げる本の山を消化してごらん。妃教育を既に終了していたベルティーユが読み終えた物のほんの一部。話はそれからだ。だが、シルヴァンを諦めるなら、今すぐここから出てもいい。――選べ」
選べと言われても、ここまで来たからには引き返す訳がない。その覚悟だって、とうの昔に出来ている。
だからファイエットはこう答えた。
「王妃殿下のご命令に従い、すべきことを済ませて王太子殿下のお迎えをこちらで待ちたいと思います」
「そうか……」
椅子から立ち上がり王妃が衣擦れの音とともに去っていく気配がする。
もう頭を上げて良いだろうかと、頭を下げたまま侍女が立っていた方を見る。
軽蔑を込めた見慣れた眼差しとぶつかった。
今更取り繕うのも面倒だとファイエットは口の右端だけを上げてニヤリと笑ってみせた。
幸せになる道を模索した。労力だってかけた。可能な限り上に手を伸ばして、届く所にあるものを掴もうとして何が悪い。
誰であっても自分に幸せになるなと言う権利は無い。
唖然としている侍女の顔をファイエットは睨みつける。
「エマ! もういい。戻ってこい!」
犬を呼ぶような王妃の声に侍女が即座に反応した。
もう彼女はファイエットを意識しない。ファイエットに礼を取ることもせず、挨拶の一言もなく、エマは部屋を足早に出ていった。
ファイエットは理解した。やっと名前を知ることが出来たあの侍女は、恐らくこの部屋には二度と来ない。
彼女は王妃の侍女の一人でファイエットの監視役。仕事に関して有能なのは王妃付きの侍女だからで、悪感情を隠さなかったのも王妃側の人間だったから。
ぶるり。襲ってくる危機感に震えがくる。
もうこの先が安全でないと認識したことで、ファイエットの頭は危機回避に忙しく動き出す。
ばたん。
その思考を遮るように扉が開き、本の山を持った男たちが次々と入ってくる。
どんどん運び込まれ、積み上げられて、出来上がっていく書籍の山。
唖然として眺めていたので気付くのが遅れた。
いつの間にか、この塔が出来た時からここに居たような顔をして、見知らぬ侍女が壁側に立っていた。
命令を待っているような顔をしているが、若い男が多く部屋を出入りするのに気を取られている様子。
ファイエットは自然と湧き上がる溜息を何とか出さずに飲み込んだ。
誰に説明されなくとも分かる。この女は仕事ができない。
今後不自由になるだろう塔生活を思ってファイエットは失望の余り緩く首を振る。
壁際に控える侍女を無視して塔内で使用できる全室を確認して回った。
予想通り全ての部屋の空いていた壁が本で埋まった。
これら全てを消化しない限り婚約者候補として名を連ねることさえ許さないと言われたのだ。予想していた量を遥かに越えていた。
王太子に選ばれたのではなく、自分が王太子を選んだという意識がファイエットにはあった。
差し伸べてくる王太子の手を取って、あと一歩のところまで来ていた。
それなのに婚約者候補の一人として選ばれるのを待たなければいけない身に落ちた。
ファイエットの口から悔しさを含んだ溜息が漏れる。
いいや、そうじゃなかった。今は候補の一人ですらもないのだったと思い出したファイエットは重い足取りで部屋に戻った。
この塔へ来たばかりの頃は危機感など微塵も持たなかった。
そのうちに王太子かその側近の誰かが慌ててやってきて、ここから救い出してくれると疑わなかったから。
1ヶ月過ぎた今も誰からの連絡もないことで、ファイエットは厳しい現実に向き合わなくてはならなくなった。
学園に入学して以降、何もかも上手く行っていた。
今はもう全てが自分の制御外とファイエットも認めざるを得ない。
自分のこの後の人生を誰も保証してくれない。
脳内の花畑が一瞬で荒野に変わる恐ろしい事実だった。
ファイエットはふらりとライティングビューローの前まできて、とさりと椅子に腰を落とす。
憂鬱な気持ちでファイエットは考える。
どこで間違えてしまったのか。
前世の自分の死に際の願いを叶えたかっただけなのに。
*
彼女は物心ついた頃からひたすら勉強してきた。
将来幸せを掴む為に必要なことだと彼女の親が、親戚が口々に言ったから。
良い大学に入り、良い会社に就職すれば、その後の人生はおのずと幸せに包まれる。
あたかも善人に対して開く天の国の扉の如く。
約束された幸せな未来のため、彼女は大人に指し示されたバーを飛び続けた。
彼女は時に嘲笑を受けながらも努力を重ねた。
世の中の全てには原因と結果がある。因果性を考えたら努力しないという選択肢はない。
遊び呆けている同級生。長じてからは同僚を心の中で嘲りながら、彼女は為すべきことを為した。
『努力は裏切らない』
大人になって彼女はこの言葉は嘘だと知った。
方向性の誤った努力が彼女の期待を散々裏切ってきたからだった。
人生を楽しむこと。
自分を魅力的に見せること。
他人と良い関係を築き維持すること。
愛し愛されること。
他人を許すこと。
本当はそんなものが必要だったのだ。
人に傷つけられても、他人との比較で自分が勝手に傷ついても、痛みを無かったことにし続けて、長く虚勢を張り続けた末。彼女がこの真理にたどり着いた頃には三十も半ばを過ぎていた。
自分が描いた完璧な幸せと一片も変わらぬものを望んだ。
存在不明の幸せを得ようとしても探して見つかるものじゃない。
彼女がそのことにもっと早く気付いていたら、きっと結果は違った。
今頃伴侶を得て自分の産んだ子を抱えて、周囲とそれ程違わぬ幸せに酔いながら笑っていたのかもしれない。
自分の努力に見合った報酬。社会的評価。お金で引き換えられる贅沢な時間。値札を見ずに欲しい物を買える生活。
同じ年頃の女と比べ、自分の優れた所、恵まれている所を列挙して心を慰めていた。
こんな虚しい人生も自分の意志次第で変えることは出来るのだ。残りの人生の長さを考えたら、今の自分が一番若い。
そんな境地にようやく辿り着き、これから変わるのだという前向きな気持ちを嘲笑うように、運命は人生の残り時間を彼女に教えた。
彼女が人生の多くを引き換えに得た地位や権力は、大病を患ったせいであっという間に人手に渡った。
急に身に降り掛かった不幸を前にして、現実感が伴わず彼女が病室のベッドでぼんやりしている時、同室だった少女が暇つぶしに勧めてくれたのが乙女ゲームだった。
ゲーム。勉強の邪魔になるからと許して貰えなかった多くの内の一つだった。
人生の残り時間が少ない彼女の行動をもう誰も抑止しない。
なんとなく始めたゲームだったが、ヒロインの言動と行動があざと過ぎて呆れてしまい、思わず鼻を鳴らしてしまう。
ヒロインは、彼女がずっと嫌ってきた女達と寸分違わなかったのだ。
自分が選んだたった一人の、ときには複数人の魅力的な男性の愛を受けて幸せな結末を約束された物語。
彼女が初めてゲームでハッピーエンドを迎えた時、人目を憚らず声を上げて笑った。
生まれてこのかた一度も自分の身に起こらなかったことが、いとも簡単に手の中で起きたのだ。
馬鹿らしくなる程の手軽さで幸せな結末を手に入れてしまったのだから笑わずにはいられない。
そうした間も病状はじりじりと悪化して、彼女は自分が破れた袋のようだと感じ始めていた。
何かがサラサラと流れ出ていく感覚があった。
自分がどんどん無価値な人間になっていくような気もして恐ろしく、その恐怖を忘れるためにゲームに没頭した。
ゲームの中では、見目が良く地位のある若い男が心地良い言葉をくれる。
いつも自分を気に掛けてくれる。励ましをくれる。ときには心配から叱ってもくれる。
全てのエンディングを見たあとは、他の乙女ゲームにも手を出した。
提示された選択肢の中で正しい選択をするのは簡単だった。
自分を見下していた軽薄な女達がやりそうなことを選べばよかった。
人間も人生もこんな風に単純なら良かったと心から思えたのは、残り時間も僅かとなった頃だった。
振り返れば乙女ゲームばかりやっていた。
以前はあれほど本を買って読み漁ったのに病気をしてから本を手に取ることはなかったのに。
心から笑えるほどの体力は残ってなかったが、彼女は堪えきれずに笑う。きっと一ミリ位、口の端は上がっただろうと思いながら。
誰かに愛されてみたかった。可能なら、あるがままの自分で。
このことを心が認めると、狭い視界が潤んで霞む。薄く開いた目の端から涙が伝う感覚があった。
*
髪色がピンクというデタラメな設定の、愛らしい男爵令嬢として自分が存在するこの世界は、馴染み深い乙女ゲームに似ていた。
正気を失っている可能性も考えたが、前世の記憶が戻ってみれば、死に際見ている夢だと考えた方が妥当と思えた。
けれど、そのどちらでも良かった。
どちらであっても自分の愛される人生が始まることに違いはない。
貴族としての家格こそ低いが、今は女として愛される資質を充分持っている。
実践する勇気と機会がなかっただけで、男の気を惹く方法なら幾らでも知ってた。
その手管で多くの男の心をものにした。
絶えることのない愛と称賛の言葉、好意は高価な贈り物へと形を変えて、受取を懇願された。
指先一つ、目線一つ、ため息、咳払い一つでファイエットの思うように男達は動いた。
前世での雪辱を果たし、多くの男達に愛された。
満足したはずなのに、夜に寝台へ入って目を閉じるとき、ファイエットの心に虚しさが滲む。
前世の自分も同じように虚しさを抱えて毎晩眠った。今は愛されているのに何故? 虚しさを覚える理由に心当たりがない。
彼女は多くの愛を欲しているが、誰のことも愛していないし、信じてもいない。
自分に高い価値があると必死に証明しようとしたのは、それを自分が一番信じられないから。
妖精のようだと呼ばれ男たちに愛されるファイエット。
その精神は前世とそれほど変わっていなかった。
*
気絶して王太子からプロポーズを受ける機会を失ったが、再会すれば結婚を申し込んでくれるとファイエットは信じていた。信じたかった。
次期国王の妃として王宮に住み、綺麗なドレスを身に纏って美しいもの美味しいものに囲まれて過ごすのだ。
And they lived happily ever after.
(そうして彼らはいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし)
この結びの言葉に相応しい時間を生きていく。なんとしても。
おとぎ話のお姫様のように待っていれば誰かが幸せを運んでくれるなら人生は簡単だ。
幸せは奪うもの。座れる席は限られている。
今、ファイエットがここに居るのだって、王太子に婚約破棄させて自分が成り代わるために行動した結果なのだ。
ならば望む結果を生み出すために必要な努力をしなければ。
ファイエットはガラスペンを右手で取ると、置いてあったノートを一冊掴んで片手で乱暴に開いた。
インク壺にペン先を浸して1ページ目に ”雑草は決して死なない” と英語で書きなぐる。
今度こそ幸せになれるのではなかったのか。
予定調和を信じて裏切られたファイエットは怒りに身を震わせた。
「わたしを舐めないで。身を立てるための努力は慣れてるのよ。あんな程度の本の山。遠くない先に平地にしてみせる」
ファイエットは地獄の底を這うような声で宣言した。
気まぐれにピリオドの位置を変えるこの世界の神と、自分をここまで連れてきた運命に。
目覚めれば、視界いっぱいの見覚えのない天井。
右を見る。見知らぬ壁。
左を見る。見知らぬ部屋だった。
部屋の扉の横には椅子が一脚が置いてある。
その椅子に座る部屋の備品のような侍女もやはり見知らぬ者だった。
侍女は目が合うと、すっと立ち上がって寝台の傍に近づいてくる。
「ご気分はいかがですか」
口調こそ丁寧だったが、冷めた眼差し。口元には冷笑が浮かぶ。
誰に説明されなくとも分かる。この女は自分を見下している。
ファイエットは、お前の態度で気分が悪くなったと口に出すのを控えて緩く首を振る。
悪意に気付かぬふりを装ってファイエットは尋ねた。
「ここはどこなのかしら」
侍女は、水のたっぷり入った水差しを軽々と持ち、グラスに水を注ぎ入れながら答える。
「王宮の西塔ですわ。夜会でお倒れ遊ばしたベリナール男爵令嬢をこちらへお運びしてお世話するようにと、王妃殿下から御下命がございました」
グラスを差し出す姿に、こちらへの敬意は全く感じられない。
王宮侍女は大抵伯爵令嬢以上。
男爵令嬢の自分を見下しているのだろうとファイエットは当たりをつけた。
王太子の想い人が誰なのか、この女は知らないらしい。
あとで告げ口したら大層叱られるに違いない。
ファイエットは意地悪い気持ちになって口の両端を僅かに上げた。
差し出されたグラスを受け取って一口飲む。
飲んで気付いたが、とても喉が乾いていた。体が求めるままグラスを傾けて水を飲み干す。
喉の乾きから時間の経過が感じられた。
グラスを返しながら、ファイエットは再び侍女に尋ねる。
「あれから、どれくらい経ったのかしら?」
「今はお倒れになられた翌日で、昼を少し回っております」
通りで空腹を感じる訳だ。ファイエットが自分の胃の辺りを見ると、侍女はすかさず「昼食を支度させます」と言って扉横に設置されたキャビネットの上にあるハンドベルを鳴らした。
「どうして、塔なのかしら」
滞在させるなら王宮内ではいけなかったのか。
このファイエットの疑問は真っ当だった。
けれど、侍女の回答は素っ気ない。
「恐れ多くも王妃殿下の思し召しですわ。わたくしには分かりかねます」
役立たずめ。
ファイエットは心の中で毒づく。
聞かないと答えない。聞かれても答えない。
そもそも侍女風情に詳しい情報が与えられているとも思えない。
どうしたものかとファイエットが思っている間にも、侍女はカーテンと窓を開けてからクロゼットに移動し、テキパキとデイドレス一着とコルセットを持って戻ってくる。
気を失っていた為、湯を浴びずにいたと気付いたファイエットは、首元に手を持ってきて初めて分かった。どうやら拭き清められていたようだ。身体全体にベタつきは感じられない。
もしかしてと思いながら頬に触れるとしっとり潤っている。化粧を落としたあと、化粧水などで整えてくれたらしい。
嫌な女に良い評価を与えたくはないが、ベリナール家の侍女より有能だとファイエットも言わざるを得ない。
洗顔を含めた身支度を済ませ、ドレス着用の手伝いを受けながら、希望しても帰して貰えなさそうだなとドアを一瞥する。それを察して侍女は言った。
「王妃殿下からのお声が掛かるまでは、こちらでお待ちいただくようにと言われております」
まあ予想していたことだと、ファイエットは侍女に頷いて見せる。
理由は不明だが、囚われの身になってしまった。
王妃からの用件が分からない今は助けを待つしか無い。
不安はなかった。塔に囚われた姫を助ける王子様は居る。
しかも本物の――。
*
あれから一週間経過したが、誰も来ず、もちろん説明もない。
不安も不満も抑えに抑えていたファイエットの鬱憤は、ここで爆発した。
「どうなってるの!? 誰も来ないし、連絡もないじゃない!!」
この国の貴族としてあるまじき下衆な振る舞いに、侍女の常に冷たい眼差しは極寒と言える温度に変わる。
侍女は憎しみさえも滲ませて、ファイエットに冷たい視線を向けたまま慇懃に答えた。
「王太子殿下のご婚約者であるベルティーユ様が意識不明の重体で、現在も宮廷医が総出で治療に当たっているのです。王妃殿下はベルティーユ様がご幼少の頃から目を掛けておいででしたから、大変お心を痛めておられます。ご公務の合間を縫って付き添われているので、お時間を割くのが難しいのでしょう」
ファイエットが久しぶりに耳にしたベルティーユの名は、湯だった自身の頭に掛ける冷水の役目を果たした。
意識不明の重体と聞かされれば、余りの後味の悪さに嫌な気持ちにもなる。
大理石の床に散らばった金髪と彼女の唇に塗られた赤。その色に似た血の赤が見る間に広がって行く光景が頭に浮かぶ。
気分が悪くなり、ファイエットは軽く頭を振って思い出したこと自体を無かったことにした。
けれど、まだ婚約破棄にはなっていないことは引っ掛かった。
無意識に人差し指を唇に持っていく。
彼女が沈思する際の動作だった。
結局はベルティーユの容態次第だと結論づけるが思考はその先へ進もうとする。
ファイエットは頭を懸命に左右に振って進行を止めた。
ベルティーユの容態が悪化することで、今より有利なところに駒を進めることが出来る。
その代わり今よりもずっと気分が重く沈むに違いなかった。
嫌な報告は、どこでも歓迎されないもの。
ファイエットは集る虫を払う手付きで侍女に退室を促した。
蔑んだ目を隠しもせず、形式的に頭を下げた侍女は、用がないならとドアへ向かう。
ふと思い出したことがあり、ファイエットはその後ろ姿を目で追った。
王太子はどうしてるのか。
この女には聞きたくなくて、王妃に直接尋ねるつもりだった。
ところが、王妃どころか誰からも何の音沙汰なく一週間が経過した。
知る術がないなら、やはり侍女に聞いておくべきかと考え直したのだ。
今のファイエットにとって情報源は元より一つしか無い。
呼び止める段になってファイエットは侍女の名前を知らないことを思い出した。
どう呼ぶべきか考えている間に侍女は部屋を出ていった。
こういう時こそ、いつもの察しの良さを発揮すべきじゃないのか。
ファイエットは勝手な考えで侍女を心の中で詰る。
あの侍女は初めて会ったときも名乗らなかったし、ファイエットも今更名前を聞くつもりもない。
もはや聞いたら負けのような気さえしている。
自分を嫌っているのは肌で充分に感じるが、口惜しいことに彼女は大変優秀で仕事ぶりに文句はない。
そのお陰もあってか、ここの生活はファイエットにとってそう悪くなかった。
出される料理はどれも美味しいし、午後のお茶も用意してくれる。
供されるお菓子も趣向が凝らされたもので毎回違う。
入浴も毎晩出来る。
部屋に多く置かれた花瓶の花は、毎朝取り替えられている。
クロゼットに揃えられたドレスも既製品ながら自分で持っている物よりずっと高価だ。
退屈を紛らわせるものは一通り揃っている。
けれど、当然と言おうか良いことばかりでもない。
自分が囚人のようだとファイエットが自覚する瞬間は度々ある。
侍女の目を盗んでここから出ようとしても塔の1階には屈強な騎士が複数名立っていて、許可の無い人の出入りを許さなかった。
散歩も出来ない。体を動かしたければ階段の昇り降りをする位しかない。
せめて景色でも楽しめたら良かったが、階段の途中にある小さな窓から見えるのは、鬱蒼とした森だけ。
これがファイエットのいつ終わるとも知れない優雅な囚人生活の全てだった。
*
更に3日が過ぎた頃、ファイエットは手紙を二通侍女に渡した。
「これを出してきて」
侍女は封筒の裏表を確認すると、一旦受け取った手紙を差し返した。
「国王陛下と王妃殿下のご命令により王太子殿下への連絡は禁じられています。ただいま王太子殿下は、どなたであっても連絡の取次の一切を受けられないご状況です」
ファイエットは不満げにしながらも、王太子宛のものを膝に載せて、一通だけ封筒を侍女に押し付ける。
「それならアルベルク様宛のだけでいいわ」
だが侍女は、その手紙も受け取らなかった。
片眉を上げるファイエットを見ても表情すら変えない。
「グライエ卿も同じく、お父上の宰相のご命令により、連絡の取り次ぎを止められているご状況だと聞いています」
頼みにしていた二人の状況がなんとなく読めた。
怒鳴りたい気持ちをグッと堪えて、ファイエットは淑女らしく微笑んでみせた。
「じゃあ、それ以外の方宛なら手紙を送ってくれるの?」
侍女は無言のまま、にこりと笑顔を返す。見下げ果てた目で。
それが答えだった。
「何度も申し上げておりますが、ご家族宛でしたら、いつでも何通でもお送りします」
ベリナール家の事情が分かった上で付け足した言葉だった。
ファイエットは実父、義母とは折り合いが悪い。
彼女は実母が病気で亡くなると、世間体が悪いという理由から三年前に引き取られた。
血の繋がりの有無に関わらず、突然同じ屋根の下で生活を共にし始めたからといって家族になれる訳じゃない。
元々の相性や歩み寄る姿勢や努力が必要だった。
残念ながらそのいずれも互いになかった。
そして、そのことを理解しながら関係の改善を希望しなかった。
ファイエットは父親のベリナール男爵の助けを当てにしていない。
そもそも男爵家が王家に意見して何か変わるなんて思っていない。
親の情もこれまで期待したことがないし、前世の記憶が戻ってからは、余計に親という認識が薄れた。
だから入学してから一度も実家へは連絡をしなかったし、義母からは苦情らしき手紙が山と来ていたがファイエットは封を切ったことはない。
目に入るところに居るのは愛想のない侍女だけ。
人を招くことは禁じられている。
居ないも同然の家族にしか手紙を出すことは許されていない。
話し相手も事欠く、刺激のない優雅で単調な繰り返しの日々。
気が変になりそうだった。
暇つぶしに日記でも書こうかとノートを取ってガラスペンを持つ。
インク壺にペン先をたっぷり浸して、ペンを持ったまま書き出しを考えているときに、彼女にとって余り良くない考えが浮かぶ。
あれは――イベントではなかった?
ペンを握っているファイエットの手に力が入る。
無理やりフラグは立てた。イベントは発生しファイエットが考えていた通りに進んだ。途中までは。
思い違いをしていただけで、もしもあれがイベントでないのなら、ファイエットが望んでいたエンディングは恐らく来ない。
そもそも物語の終わりなんてピリオドを打つ位置で変わるものだ。
始まりと終わりを決めて人生の一部を切り取り、不都合は霞ませて時には無かったことにする。
事実や他人の心情までも捏造し、大衆が望む味付けをしたものが物語と呼ばれる。
そんな当たり前のことに今更気づいたファイエットは強張った指先からペンを取り落とす。
ファイエット・ベリナールの物語は、自分が望まぬ流れで続いていた。今はどうだ。囚人のように塔に押し込められている。
倒れたペンの先からはインクが垂れて、真新しいノートの1ページ目に黒い染みを作って拡がった。
それは不吉な未来を暗示しているように見えた。
ファイエットは頭を抱えて目を固く閉じる。
これからハッピーエンドを迎えられるはずだ。悪役令嬢を婚約者の座から引きずり下ろしたのだから、王太子を筆頭に自分へ愛を捧げた男たちと幸せに暮らせるはずなのだ。そう決められている。
婚約したら王太子が20歳の成人を迎えたとき、何の苦もなく王太子妃になれるはずだ。
筈だ、筈だと推定を重ねてしまうのは、断言できない理由が幾つもあったから。
ファイエットは恐ろしくてその事実から目を逸らしていた。
*
王妃がファイエットの前に現れたのは、塔の住人になって1ヶ月が過ぎた頃だった。
王宮には呼ばれず、王妃が塔まで態々出向いた。
どうあってもここから出さないつもりらしい。
この日は王妃訪問の準備で人の出入りが多くあった。
多くの使用人の手で、塔内で一番広い部屋と、そこへ至る石階段と通路に赤絨毯が敷かれた。
部屋の上座にあたる所に高い段が据えられ、その上に一国の王妃が座るに相応しい美しい椅子が置かれた。
当日の王妃の装いを聞かれてもファイエットには答えられない。
入室する直前に平伏するように命じられたファイエットは、国で最も高貴な女性を前に頭を下げたまま動けない。
その頭上に思いのほか優しげな声が降ってくる。
「ベリナール男爵令嬢は親しい友人が多い中、シルヴァンとは特に親しくしてくれていたと多くの者から聞いていました。礼を言いますよ」
決して言葉通りに受け取ってはいけない。
多くの子息と不適切な距離での付き合いが噂になっている。
そもそも男爵令嬢の分際で婚約者が居る王太子に他人の口の端に乗る位、大っぴらに粉を掛けるなんて身の程知らずにも程があるだろう。
恥を知れという批難と罵倒の長い意味が込められた貴族的な言い方だった。
ファイエットも嫌味を言われた位は分かっている。
悔しいが言い返すことの出来ない相手だ。耐えるしか無い。
更に一歩王妃は踏み込んだ質問をしてくる。
「シルヴァンが好きなの?」
王妃の声は上品で優しげだった。
王太子から聞いていた印象と違いファイエットは戸惑ってしまう。
「ベリナール男爵令嬢。妃殿下は返答をお求めです」
いつも無礼な態度を表情に余すことなく乗せる侍女の聞き慣れた声だった。
この女に自分が王太子の想い人だと知らしめる良い機会だとファイエットは思った。
「はい。お慕いしております。王太子殿下におかれましては、恐れ多くもわたくしと同じ気持ちを返してくださいました」
「あの子と添いたげたい?」
王妃に畳み掛けるように問われて、ファイエットは答えて良いのか悩み、顔を上げないまま先程聴こえた声の方向。右の壁側に控える侍女を見る。
彼女は動かない。喋らない。軽蔑を隠さない目でファイエットを見つめ返すだけだった。
何かを答える必要にかられた。何かしなければならないと。それは強迫観念のようなものだったかもしれない。
ファイエットは苦し紛れに顔を伏せたまま無言で深く頷いた。
「本当に? 廃嫡されて王太子でなくなっても? 除籍されて王子ですらなくなって、一文無しで城から追い出されたとしても?」
同じく優しげな声だったが、不穏な言葉が幾つも含まれていて、ファイエットはギクリと身体を固まらせる。
返答に失敗したら全てが終わってしまう可能性を秘めた重要な問いだと思った。
どう答えたものか悩むファイエットの背中に冷たい汗が伝う。
今度は答えを求めて侍女の顔を見なかった。
心の動きを読んだのか王妃は、くつくつと笑う。
顔を上げて確認しなくとも王妃が淑女の仮面を脱いで、素を晒したのが気配で分かった。
「ベルティーユとの婚約は無くなるよ。シルヴァンには、また婚約者候補を見繕わねばならん」
先程よりもずっと低い声。武人のような覇気を感じさせる物言い。
王妃というよりも戦いを好む女王のようだった。
これまでプレイしてきた乙女ゲームには、王太子の妃になるまでの道程で王妃が立ち塞がり、結婚を阻もうとするエピソードはない。
ファイエットは唇を噛む。こうなっては認めるほかない。
やはり、あのイベントは無理やり起こそうとしたから失敗したのだと。
好きだとは言われた。愛しているとも。
守りたい。大事にしたい。
容姿を褒める言葉。笑顔や手に触れることを乞う言葉。
王太子に限ったことじゃない。男は似たようなことしか言わない。聞いても聞かなくてもどちらでも良いような。
それでもファイエットは幸せな結末を迎える為に、王太子の口からは絶対に聞きだしたい言葉があった。
彼女は、まだ王太子から結婚を求められていない。
「婚約者候補に名を連ねたくば、これから積み上げる本の山を消化してごらん。妃教育を既に終了していたベルティーユが読み終えた物のほんの一部。話はそれからだ。だが、シルヴァンを諦めるなら、今すぐここから出てもいい。――選べ」
選べと言われても、ここまで来たからには引き返す訳がない。その覚悟だって、とうの昔に出来ている。
だからファイエットはこう答えた。
「王妃殿下のご命令に従い、すべきことを済ませて王太子殿下のお迎えをこちらで待ちたいと思います」
「そうか……」
椅子から立ち上がり王妃が衣擦れの音とともに去っていく気配がする。
もう頭を上げて良いだろうかと、頭を下げたまま侍女が立っていた方を見る。
軽蔑を込めた見慣れた眼差しとぶつかった。
今更取り繕うのも面倒だとファイエットは口の右端だけを上げてニヤリと笑ってみせた。
幸せになる道を模索した。労力だってかけた。可能な限り上に手を伸ばして、届く所にあるものを掴もうとして何が悪い。
誰であっても自分に幸せになるなと言う権利は無い。
唖然としている侍女の顔をファイエットは睨みつける。
「エマ! もういい。戻ってこい!」
犬を呼ぶような王妃の声に侍女が即座に反応した。
もう彼女はファイエットを意識しない。ファイエットに礼を取ることもせず、挨拶の一言もなく、エマは部屋を足早に出ていった。
ファイエットは理解した。やっと名前を知ることが出来たあの侍女は、恐らくこの部屋には二度と来ない。
彼女は王妃の侍女の一人でファイエットの監視役。仕事に関して有能なのは王妃付きの侍女だからで、悪感情を隠さなかったのも王妃側の人間だったから。
ぶるり。襲ってくる危機感に震えがくる。
もうこの先が安全でないと認識したことで、ファイエットの頭は危機回避に忙しく動き出す。
ばたん。
その思考を遮るように扉が開き、本の山を持った男たちが次々と入ってくる。
どんどん運び込まれ、積み上げられて、出来上がっていく書籍の山。
唖然として眺めていたので気付くのが遅れた。
いつの間にか、この塔が出来た時からここに居たような顔をして、見知らぬ侍女が壁側に立っていた。
命令を待っているような顔をしているが、若い男が多く部屋を出入りするのに気を取られている様子。
ファイエットは自然と湧き上がる溜息を何とか出さずに飲み込んだ。
誰に説明されなくとも分かる。この女は仕事ができない。
今後不自由になるだろう塔生活を思ってファイエットは失望の余り緩く首を振る。
壁際に控える侍女を無視して塔内で使用できる全室を確認して回った。
予想通り全ての部屋の空いていた壁が本で埋まった。
これら全てを消化しない限り婚約者候補として名を連ねることさえ許さないと言われたのだ。予想していた量を遥かに越えていた。
王太子に選ばれたのではなく、自分が王太子を選んだという意識がファイエットにはあった。
差し伸べてくる王太子の手を取って、あと一歩のところまで来ていた。
それなのに婚約者候補の一人として選ばれるのを待たなければいけない身に落ちた。
ファイエットの口から悔しさを含んだ溜息が漏れる。
いいや、そうじゃなかった。今は候補の一人ですらもないのだったと思い出したファイエットは重い足取りで部屋に戻った。
この塔へ来たばかりの頃は危機感など微塵も持たなかった。
そのうちに王太子かその側近の誰かが慌ててやってきて、ここから救い出してくれると疑わなかったから。
1ヶ月過ぎた今も誰からの連絡もないことで、ファイエットは厳しい現実に向き合わなくてはならなくなった。
学園に入学して以降、何もかも上手く行っていた。
今はもう全てが自分の制御外とファイエットも認めざるを得ない。
自分のこの後の人生を誰も保証してくれない。
脳内の花畑が一瞬で荒野に変わる恐ろしい事実だった。
ファイエットはふらりとライティングビューローの前まできて、とさりと椅子に腰を落とす。
憂鬱な気持ちでファイエットは考える。
どこで間違えてしまったのか。
前世の自分の死に際の願いを叶えたかっただけなのに。
*
彼女は物心ついた頃からひたすら勉強してきた。
将来幸せを掴む為に必要なことだと彼女の親が、親戚が口々に言ったから。
良い大学に入り、良い会社に就職すれば、その後の人生はおのずと幸せに包まれる。
あたかも善人に対して開く天の国の扉の如く。
約束された幸せな未来のため、彼女は大人に指し示されたバーを飛び続けた。
彼女は時に嘲笑を受けながらも努力を重ねた。
世の中の全てには原因と結果がある。因果性を考えたら努力しないという選択肢はない。
遊び呆けている同級生。長じてからは同僚を心の中で嘲りながら、彼女は為すべきことを為した。
『努力は裏切らない』
大人になって彼女はこの言葉は嘘だと知った。
方向性の誤った努力が彼女の期待を散々裏切ってきたからだった。
人生を楽しむこと。
自分を魅力的に見せること。
他人と良い関係を築き維持すること。
愛し愛されること。
他人を許すこと。
本当はそんなものが必要だったのだ。
人に傷つけられても、他人との比較で自分が勝手に傷ついても、痛みを無かったことにし続けて、長く虚勢を張り続けた末。彼女がこの真理にたどり着いた頃には三十も半ばを過ぎていた。
自分が描いた完璧な幸せと一片も変わらぬものを望んだ。
存在不明の幸せを得ようとしても探して見つかるものじゃない。
彼女がそのことにもっと早く気付いていたら、きっと結果は違った。
今頃伴侶を得て自分の産んだ子を抱えて、周囲とそれ程違わぬ幸せに酔いながら笑っていたのかもしれない。
自分の努力に見合った報酬。社会的評価。お金で引き換えられる贅沢な時間。値札を見ずに欲しい物を買える生活。
同じ年頃の女と比べ、自分の優れた所、恵まれている所を列挙して心を慰めていた。
こんな虚しい人生も自分の意志次第で変えることは出来るのだ。残りの人生の長さを考えたら、今の自分が一番若い。
そんな境地にようやく辿り着き、これから変わるのだという前向きな気持ちを嘲笑うように、運命は人生の残り時間を彼女に教えた。
彼女が人生の多くを引き換えに得た地位や権力は、大病を患ったせいであっという間に人手に渡った。
急に身に降り掛かった不幸を前にして、現実感が伴わず彼女が病室のベッドでぼんやりしている時、同室だった少女が暇つぶしに勧めてくれたのが乙女ゲームだった。
ゲーム。勉強の邪魔になるからと許して貰えなかった多くの内の一つだった。
人生の残り時間が少ない彼女の行動をもう誰も抑止しない。
なんとなく始めたゲームだったが、ヒロインの言動と行動があざと過ぎて呆れてしまい、思わず鼻を鳴らしてしまう。
ヒロインは、彼女がずっと嫌ってきた女達と寸分違わなかったのだ。
自分が選んだたった一人の、ときには複数人の魅力的な男性の愛を受けて幸せな結末を約束された物語。
彼女が初めてゲームでハッピーエンドを迎えた時、人目を憚らず声を上げて笑った。
生まれてこのかた一度も自分の身に起こらなかったことが、いとも簡単に手の中で起きたのだ。
馬鹿らしくなる程の手軽さで幸せな結末を手に入れてしまったのだから笑わずにはいられない。
そうした間も病状はじりじりと悪化して、彼女は自分が破れた袋のようだと感じ始めていた。
何かがサラサラと流れ出ていく感覚があった。
自分がどんどん無価値な人間になっていくような気もして恐ろしく、その恐怖を忘れるためにゲームに没頭した。
ゲームの中では、見目が良く地位のある若い男が心地良い言葉をくれる。
いつも自分を気に掛けてくれる。励ましをくれる。ときには心配から叱ってもくれる。
全てのエンディングを見たあとは、他の乙女ゲームにも手を出した。
提示された選択肢の中で正しい選択をするのは簡単だった。
自分を見下していた軽薄な女達がやりそうなことを選べばよかった。
人間も人生もこんな風に単純なら良かったと心から思えたのは、残り時間も僅かとなった頃だった。
振り返れば乙女ゲームばかりやっていた。
以前はあれほど本を買って読み漁ったのに病気をしてから本を手に取ることはなかったのに。
心から笑えるほどの体力は残ってなかったが、彼女は堪えきれずに笑う。きっと一ミリ位、口の端は上がっただろうと思いながら。
誰かに愛されてみたかった。可能なら、あるがままの自分で。
このことを心が認めると、狭い視界が潤んで霞む。薄く開いた目の端から涙が伝う感覚があった。
*
髪色がピンクというデタラメな設定の、愛らしい男爵令嬢として自分が存在するこの世界は、馴染み深い乙女ゲームに似ていた。
正気を失っている可能性も考えたが、前世の記憶が戻ってみれば、死に際見ている夢だと考えた方が妥当と思えた。
けれど、そのどちらでも良かった。
どちらであっても自分の愛される人生が始まることに違いはない。
貴族としての家格こそ低いが、今は女として愛される資質を充分持っている。
実践する勇気と機会がなかっただけで、男の気を惹く方法なら幾らでも知ってた。
その手管で多くの男の心をものにした。
絶えることのない愛と称賛の言葉、好意は高価な贈り物へと形を変えて、受取を懇願された。
指先一つ、目線一つ、ため息、咳払い一つでファイエットの思うように男達は動いた。
前世での雪辱を果たし、多くの男達に愛された。
満足したはずなのに、夜に寝台へ入って目を閉じるとき、ファイエットの心に虚しさが滲む。
前世の自分も同じように虚しさを抱えて毎晩眠った。今は愛されているのに何故? 虚しさを覚える理由に心当たりがない。
彼女は多くの愛を欲しているが、誰のことも愛していないし、信じてもいない。
自分に高い価値があると必死に証明しようとしたのは、それを自分が一番信じられないから。
妖精のようだと呼ばれ男たちに愛されるファイエット。
その精神は前世とそれほど変わっていなかった。
*
気絶して王太子からプロポーズを受ける機会を失ったが、再会すれば結婚を申し込んでくれるとファイエットは信じていた。信じたかった。
次期国王の妃として王宮に住み、綺麗なドレスを身に纏って美しいもの美味しいものに囲まれて過ごすのだ。
And they lived happily ever after.
(そうして彼らはいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし)
この結びの言葉に相応しい時間を生きていく。なんとしても。
おとぎ話のお姫様のように待っていれば誰かが幸せを運んでくれるなら人生は簡単だ。
幸せは奪うもの。座れる席は限られている。
今、ファイエットがここに居るのだって、王太子に婚約破棄させて自分が成り代わるために行動した結果なのだ。
ならば望む結果を生み出すために必要な努力をしなければ。
ファイエットはガラスペンを右手で取ると、置いてあったノートを一冊掴んで片手で乱暴に開いた。
インク壺にペン先を浸して1ページ目に ”雑草は決して死なない” と英語で書きなぐる。
今度こそ幸せになれるのではなかったのか。
予定調和を信じて裏切られたファイエットは怒りに身を震わせた。
「わたしを舐めないで。身を立てるための努力は慣れてるのよ。あんな程度の本の山。遠くない先に平地にしてみせる」
ファイエットは地獄の底を這うような声で宣言した。
気まぐれにピリオドの位置を変えるこの世界の神と、自分をここまで連れてきた運命に。
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