虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜

サメ狐

文字の大きさ
74 / 141
五章 血脈の奪還

残党

しおりを挟む
———最後に存在が消滅したバッコスの元に置土産があった。地面に落ちているバッコスの物だった刀。俺は刀の元まで歩み腰を曲げて取り上げる

「———これは貰っといてやる。先にそっちに逝ってな。俺もどうせ同じとこへ逝く‥‥」

そのまま辺りを見渡し彼女達の無事を確認する。幸い魔障壁とは反対方向に向けて放ったのだが、ヒビが入りいつでも割れそうな状態だ。女王陛下の方もなんとか持ち堪えた様子

終わっても尚、未だに魔力を放出している

更にはバッコスを消滅させた天まで昇り詰める斬撃は黒い魔力の壁となりそこに存在していた

通称、黒い壁は世界を二つに隔てる領域を創っている。またこの国を囲う山々の一山が黒い壁に呑み込まれていた

それは外の海まで続き、海までも二つに隔てる、

「ありえぬ‥‥‥空が、大地が、山が、世界が二つに裂けるだと!?‥‥こんなこと‥‥神のみにしか為し得ない御技っ‥‥‥」

「お母様っこれが魔法なのでしょうか‥‥?あまりにも魔法と言う器からかけ離れすぎています。国を、世界を滅す恐ろしい魔法‥‥」


———そう、この魔法は魔法と呼んでいい代物では無い。黒い斬撃で斬られた空間は存在せず空虚になり、ただ虚の片鱗が広がり続ける無限の牢獄

一度空間に立ち入れば二度と此方には戻ってこられない

虚無の空間

「‥‥黒い壁が‥‥空まで‥‥」

「‥‥山を断ち斬った‥‥大地が‥‥」

「‥‥俺は一体何を見ているんだ‥‥」

「‥‥はは、これは夢だ‥‥なあ?そうだろう‥‥」

「‥‥あれは人なのか‥‥」

誰もが初めて目にする黒い壁に、目を白黒とさせる軍人達。血の気が失せ、表情の色素が薄くなる。まるで魂を体から引き抜かれたかのようにただ佇んでいた

俺はそんな驚いている軍は無視しある人物の元へと歩みを進めた
バラトロの残党を後にし、ファシーノ達の元に向かい謝罪をする

「すまない。心配をかけてしまった。許してくれ」

「ほんとよ‥‥もう‥‥心配したんだからっ‥‥」

「うぅぅ‥‥無事で良かったですぅ」

「主よ。余り女に心配をさせるでない。我も心配したぞっ」

ファシーノの目を見ると涙が出ていたのか少し赤く色づいていた。そんなファシーノに俺は頭をよしよしと撫でる

デリカートは大粒の涙を子供のように流している
デリカートも頭よしよしする

ヴァルネラは珍しく心配をしていたようだ。よーく顔を見詰めるとファシーノと同じく目の周りが赤く色付いている。よしよしはしない

そして4人目の人物に視線を向ける。デリカートに背におぶられながらしっかりと見据えていた

「もう、安心してくれ。君を狙う者はもういない。——自由だ」

「———っ!‥‥‥自由。そう、私はやっと自由になれたのねっ‥‥‥」

そしてデリカートの衣服を濡らしてしまう程の大量の涙が零れ落ちる

「———ありがとぉっ」

糸が切れた真珠の首飾りのように散らばる大粒の涙

溜まりに溜まっていた泉が堅い地を破って、崩壊するように流れる

それは、彼女の歩んできた道がどれ程過酷な物だったのか推し量るには十分だった。女の身でこの非情な人生でひたすら生き抜き、そして今に至るまで自身を見失わず、どれ程の苦難に襲われたか

花魁と呼ばれたエリーはここには存在せず、他愛もなく泣き続ける少女が存在しているだけだった

俺と3人はその光景をただ見守っていた。いつ泣き止むかも分からない彼女をただじっと見守る

そんな中、俺は大事な事に気づく。足を反転させ無言で歩みを進める先には、体をガタガタと震わせ、座り込んでいるマイアーレがいた。マイアーレの背後には残党が残っているが、全員膝を崩し俺に怯えている


———俺は残党諸共睨み殺す


マイアーレ、こいつは一人の女性の人生を踏みにじった下衆だ。生かしておいてもまた悪を企てるだろう。しかし、こいつは一度バラトロと繋がっていた経歴がある。

こいつを利用して情報を探る事もできる‥‥‥か 

それにファシーノ達が殺したと思われるバラトロの残党も残っている。まあ、もう闘いを挑む者など存在しないが。こいつらもどうせバラトロに消されるだろう、それならばこいつらも一緒に利用する手もあるな

さて、聞いてみるとするか‥‥

「———おいっ、お前達に特別に選択肢をやろう。ここで死ぬか、俺の元で働くか。どっちだ?」

「あ、あ、ああなた様の元で働きますっ!だから、命だけはどうか‥‥」

「お、俺も働きます!」

「私もっ!この命を捧げます!」

「お、俺もっ貴方様の下で働かせて下さいっ!」

「「俺もっ! 私もっ!」」

マイアーレを含む全員が死ではなく働くことを選んだ。俺からの最大の慈悲をくれてやった。これでこいつらは下手に俺を裏切れないだろう。バラトロの元へと戻ればどうせ死ぬ運命だったのだ

その命を救ったのだから恩は計り知れない。こういうとこで売るのも悪くわない

「———ネロ様!そいつらを加えるつもりで?!」

「ああ、こいつらは利用価値がある。バラトロと繋がっていたなら情報を探らせようと思ってな。わがままを言ってすまない」

ファシーノが素早く噛み付いてきたが、俺の考えを聞くと一応は納得してくれた様子だ。しかしその目はとても怖く俺でさえ凝視できない

「貴方がそう言うなら仕方ないわ。———下郎供、もしネロ様に仇なしたならば地獄よりも苦しい苦痛が待ってると思いなさい?返事は?」

「「「は、はぁいっ!!」」」

「‥‥‥全員で50と数名か、まずまずだな。感謝しろ、お前達はどの道組織に殺される運命だったところを俺が仲間にしてやると言っているんだ。充分に働けよ?」

俺の核心をつく言葉が彼らの心を抉りだす。どうやら全員がそのことを予想していたようだった。 

その最中に俺からの助け舟だ。乗らない筈がなかった
そしてファシーノの忠告と殺気を前にもう後戻りは出来ないだろうな‥‥
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...