猫と異世界 〜猫が絶滅したこの世界で、ウチのペットは神となる〜

CHAtoLA

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第一章 冒険の始まり編

第8話 魔力とスキル

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「……すまなかった」

「……………」




 ヨシタカの目の前に、煌めく銀髪を頭の高い位置で一つに結った少女がいる。
 その顔は、トマトの様に真っ赤になっていたかと思えば、今は青くなっている。
 

 そんな彼女をヨシタカは見下ろす形で見ている。
 なぜか? 彼女が正座しているからだ。


「あぁ、いや、大丈夫ですよ。それよりそんな正座なんかしてないで立ってください。俺も驚いただけで、別にちょっとしか引いてないんで!」

「ぐっ……!」


 ヨシタカの言葉にまたしてもダメージを受けたようだ。


「とりあえず、前向きな話をしませんか? むしろ過去の事とか教えて貰って感謝しているんですから! おかげで何となくこの世界の事がわかりましたし!」


「そ、そうだな。うむ、これからどうするか考えるとしよう」


 そう言いながら少女が立ち上がる。膝下に着いた土や枯葉を払いながらヨシタカに向き直る。


「まず、近くに人間や獣人がいる村や街は無い。私の住む……エルフとハイエルフの里がこの森を進んだ先にあるが……人族のお前を入れてくれるかはわからない」


 少女は申し訳無さそうな顔でヨシタカに伝えた。


「そう……ですか」

(オタク知識で想像はしてたけど、実際に言われると結構寂しいな……)


「いや、人族のと言うと語弊があるな。身元の分からない人族の、と言った方がいいか。閉鎖的と言われるエルフの民も生活の為に人族と交流自体はあるからな」

「わかりました。でも、いつかは是非エルフの里へお邪魔してみたいですね」

「そうか。……その時は私が案内する。これも何かの縁だ。それに、ヨシタカとひなた様に私はすごく興味が有る」

(興味が有るって言われた。くっ……、治まれ……俺の動悸! 意味が違うことはわかってる!)

「はい。その時は是非。あ、そろそろお名前を伺っても?」


 そこでヨシタカは、結局ひなたの登場で有耶無耶になっていた少女の名前を聞く。


 ちなみに。そんなひなたはと言うと、散々彼女に撫でられたせいか、最初こそ微妙に引いていたが、最終的には気持ちよさそうにヨシタカの膝の上で眠り始めたのだ。


「そうだな。私はハイエルフのサティナ・スーだ。サティと呼んでくれ」

(まさかの……ハイ! エルフ!)


 ヨシタカは驚愕する。
 エルフなのは見た目で予想していたが、殆どのアニメやラノベではそのエルフの上位と言われている種族だ。


(まぁ、エルフとハイエルフの違いって正直よく分かってないけど、魔力が高いとかそんなだった気がする)

 
「サティさん! 綺麗な名前ですね。宜しくお願いします。ハイエルフというと、エルフよりも魔力が強いとかそういう感じですか? 失礼に当たったらすみません、詳しくなくて……」

「きれ……! ん、まぁそうだな。この世界の事がわからないと言う割にはよく知っているじゃないか。あとさん付けはいらん。呼び捨てでいい」


 少女……サティナが少し照れている。
 名前を褒めたのは少なからずヨシタカの作戦である。もちろん本音でもあるのだが、ここは紳士に行くべきだ。


「いや、まぁ、あはは。物語で知っていた、というか何というか。ではサティ……魔法は使えますか?」

「ふむ、そうなのか。魔法か、当たり前だろう。丁度いい、その肩の傷を見せてみろ」

 サティナが指を向けたのは、ヨシタカがひなたを探している時に樹に引っ掛けて切った場所だ。


「え? あ、はい」


 サティナに促され、ヨシタカは右肩を彼女に向ける。


「痛っ……」


 意識した途端、ヨシタカの肩はジクジクと痛み出す。呑気に話をしていたが、結構ザックリいってたせいで、少しずつ血は流れ続けていたのだ。
 ヨシタカの足元には血が滴ったせいで草が赤黒く染まっていた。

 ヨシタカの膝の上からひなたが彼の顔を見上げている。日本にいた頃からこの仕草はよくしていたが、今はどことなく心配そうにしている様にも見える。


 ――その時。


「――母なる神樹よ。その葉に宿る生命の…………」
 
「!!」

(うお! 詠唱! 生の詠唱! 本当にするんだなぁ。それにしてもやっぱり声かわいいなぁ。さっきまでとまた違った神秘さもあるし。めっちゃ動画に撮りたい! 感動する!)


 と、ヨシタカがそんな事を考えている間に十秒無い程度の詠唱が終わったようだ。


「――ヒール」


 サティナが手をヨシタカに向けそう唱えると同時、彼の右肩がエメラルド色に光り始める。


「うお! まぶし!」


 瞬間、肩の傷は見る見るうちに消えていく。
 後に残るのは血の跡と、熱を帯びたような感覚だけだ。


「ニャ!」


 どうやら寝ていたひなたが光に驚いた様子で、ヨシタカの膝の上から飛び降りた。だが、特に逃げもせず彼の足元に寄り添っている。


「すっっっっご! ありがとうございます! 初めて見ました! めっちゃ綺麗! 感動!」


 ヨシタカは目をキラキラさせながら、本心からそう告げる。
 肩を触ったり、回したりして確認してみるが、本当に何ともない。


「む、そ……そうか? それなら良かった。口振りから察するに、ヨシタカのいたニホン? という所には魔法を使える者は居なかったのか」

「そうですね。居ませんでした。全て物語、資料の中の知識ですよ」


 肩の確認を終わらせ、サティナに向き直る。


「ヨシタカは勉強熱心なのだな。そういう男は嫌いじゃないぞ」

「ありがとうございます」

(と、言うことにしておこう)


 そしてここで、ヨシタカは遂に、憧れていたあの言葉を、期待に満ちた目でサティナに向かって放つ。


「――俺にも使えますかね?」


 そう、魔法だ。魔法なのだ。
 オタクなら誰もが憧れるだろう。しかも目の前にはハイエルフの美少女だ。こんなファンタジー要素、ワクワクせずに居られるだろうか。

 ――否。答えは否である。

 そんな期待を顔いっぱいに見せたヨシタカの問いに、サティナは、当たり前のように淡々と答えた。


「魔力が有れば使えるし、無ければ使えない。この世界にはその二種の生物しかいない。魔力が有るか、無いかだ。だからまず……」

「な、なるほど! それで! 俺は有りますかね!?」


 つい、食い気味で話してしまう。
 紳士はどこ行ったのか。


「声がデカいわ! 順に説明するから落ち着いて聞け!」


 怒られた。
 

「申し訳ありません……」

(怒った顔と声、超可愛い……)

「だから、まずは魔力があるかどうかを調べる。今の私の魔法、その効果が現れたときの熱はわかるな?」

「はい!」


 そう、彼女がヒールと唱えた瞬間に光った肩、その付近が、熱くなったのだ。


「その熱を思い出せ。それから、その熱が体中を巡り、手の先へと移動していくのを想像する。そのまま手から放出されるイメージを作れ。手の先が少しでも光れば魔力持ちだ」


 サティナが分かりやすく説明してくれた。
 ヨシタカは早速実践する。


「魔力……熱……」


 目を瞑り、集中する。


 「まぁ、魔力持ちだろうと初めは光らない。何度かやってようやく光るし、魔力が無ければ一生光らん。想像力が大切だからな」

「はい……」


 肩の熱がお腹を通って足先へ、そのまま胸へとまた上がり、手の先へ……

 それを何度も頭の中で繰り返す。


 集中……集中……
 


 ――その時。


 パアアアアアアッと


 ヨシタカの手の先が、眩しい程に輝いた。


「なっ……」
 
「やったあああぁ! サティ! 光った! めっちゃ光った! これ結構光ってる方? チート!?」


 サティナが唖然としている。
 足元のひなたも、口から舌が少し出たまま固まっている。


(あ、ひな毛繕いの途中だったかな、ごめん)

「う、うむ。チート……というのは分からんが、すごいな。一発か……それにこの光量。魔導師クラスだな。いやそれ以上か……?」

(魔導師がこの世界でどれくらいすごいかは分からないけど、強そう! テンプレなチート展開くる!?)

 
 遂に魔力や魔法に触れたヨシタカ。
 その喜びは尋常じゃない。オタクとして憧れていたからこそ、尚更その感情は昂る。


(あとは……「俺に」どんな魔法が使えるのか「知りたい」な……)



 ヨシタカがそう考えた瞬間。


 パッ、と視界の中に、光で出来た文字が羅列し始めた。

――――――――――――
 名前:ヨシタカ
 種族:人
 称号:世界を渡る者
 スキル:無し
――――――――――――


(うおおおおお! きたああああ! お約束のヤツ! アニメだと見やすいけど、実際こうして出ると感動! でもちょっと邪魔!)


 視界を動かしてもその文字の羅列は定位置にあるため、邪魔である。
 

 魔力を意識しながら、自分を知りたいと思うと表示されるのかと、オタク知識を活用し、そう考えた。

 ヨシタカは目を見開きその内容を確認する。


(ふむふむ……力とか知力とかのステータスは出る訳じゃないのね。結構少な……あ、あれ? スキル無し?)
 

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