48 / 134
連載
お兄様のトラウマもふもふ2
しおりを挟む
村は王都から馬で二時間ほどかかるところだった。
国境沿いに面した自然豊かなところで、王都のように隣家同士が近くなく離れている。
コルタに案内され、私達が辿り着いたのは村の集会所。
周囲には煌々と明かりが焚かれ、松明を持った村人の姿や騎士の姿があった。
中心にいたのはレイで、彼は私達に気づくと目を大きく見開く。
「ライナス殿……」
「俺も手伝います。一応、医者ですから」
「恩に着ます」
「ラシットに噛まれたり引っ掻かれたりした患者の数はわかりますか?」
「二人です。後は、猫くらいの大きさの鼠だそうです」
「間に合うわ」
私はほっと安堵の息を零す。ワクチンは三本しか持っていないため、二人なら間に合う。
「ライ、お願い。ワクチンは三本入っているわ」
私は肩から下げていた鞄ごとライへと渡せば、彼は大きく頷き傍にいたメディへと視線を走らせる。
すると、二人は頷き合うと建物へと向かって走っていく。
「レイガルド様。動物の捕獲はもう?」
「まだだ。明日の早朝に山狩りをして捜索する。これ以上被害を増やすわけにはいかないからな。これからどのルートで進むか話し合いをするんだ。リストにも加わって欲しい」
「畏まりました」
「私も手伝います!」
「「危険だからティアはだめだ」」
レイとお兄様の声が綺麗に重なった。
「レイガルド様、リスト様」
村人に声を掛けられたお兄様達は、駆け足で村人の輪に入って行き、真剣な眼差しで地図を確認しながら何か話をし始める。
コルタは騎士達と合流しているし、私はライの手伝いでもしようと建物の中へと向かうことに。
集会所は木造の平屋で入口が大きな二枚扉になっており、窓からはぼんやりとした灯が漏れてきている。
女性の姿が確認できないため、もしかしたら山狩りに向かう男性だけ集められているのかもしれない。
扉を開けて集会所の中へと入れば、ベッドが置かれて患者さんが寝ている。
村には病院がないため、集会所を病院代わりにしているのかもしれない。
ライは患者さんの治療しているようで、持ってきたワクチンを注射していた。
メディは薬草を手に持ちながら、村のお医者さんと話し中だ。
――なんか、ライが知らない人みたいだわ。
ライと結構時間を共にしてきて国王やライ個人の姿を見たことがあるけど、医者としての彼は初めて目にした。
見慣れない彼の姿に、私は見入ってしまう。
けれども、すぐに我に返りここに医療に関する知識がない自分が居ても邪魔だと悟り外へと出る。
「何も出来ないなぁ、私……」
手伝いに来たのに、全く出来ることがない。
ライやメディのように医療の知識があるわけでもないし、お兄様のように頭が良いわけでもないし。
捜索の手伝いなら可能かもしれないけど、明日の早朝のためまだだし。
「村を見て軽く探して回ろうかな。畑もあると思うから、ラシットの餌も豊富だろうし」
私は近くを通りかかった村人にラシットを捕獲した場合に使用するケージを借り、建物から離れて捜索することに。
所々に建物があり明かりが灯されているので、やはり女性や子供は家の中にいるのだろう。
月明かりと家々の灯火が頼りの中、私は畑を中心に探していく。
人の気配が全く無いため、ラシットが落ち着いて食事をするにはベストな環境かもしれない。
ラシットが好きな葉物野菜が畑ではちょうど時期らしく、あちらこちらの畑には餌になりそうなものが豊富にある。
なるべく足音を立てないように歩きながら足を進めて行くと、ガサゴソと葉同士の擦れる音が聞こえ、私は足を止めて右手に広がる畑へと顔を向ける。
――ん?
じっと凝視すると、そこには地面から生えている葉物野菜に半分隠れるようにしてこちらを窺っているウサギのような生物がいた。
国境沿いに面した自然豊かなところで、王都のように隣家同士が近くなく離れている。
コルタに案内され、私達が辿り着いたのは村の集会所。
周囲には煌々と明かりが焚かれ、松明を持った村人の姿や騎士の姿があった。
中心にいたのはレイで、彼は私達に気づくと目を大きく見開く。
「ライナス殿……」
「俺も手伝います。一応、医者ですから」
「恩に着ます」
「ラシットに噛まれたり引っ掻かれたりした患者の数はわかりますか?」
「二人です。後は、猫くらいの大きさの鼠だそうです」
「間に合うわ」
私はほっと安堵の息を零す。ワクチンは三本しか持っていないため、二人なら間に合う。
「ライ、お願い。ワクチンは三本入っているわ」
私は肩から下げていた鞄ごとライへと渡せば、彼は大きく頷き傍にいたメディへと視線を走らせる。
すると、二人は頷き合うと建物へと向かって走っていく。
「レイガルド様。動物の捕獲はもう?」
「まだだ。明日の早朝に山狩りをして捜索する。これ以上被害を増やすわけにはいかないからな。これからどのルートで進むか話し合いをするんだ。リストにも加わって欲しい」
「畏まりました」
「私も手伝います!」
「「危険だからティアはだめだ」」
レイとお兄様の声が綺麗に重なった。
「レイガルド様、リスト様」
村人に声を掛けられたお兄様達は、駆け足で村人の輪に入って行き、真剣な眼差しで地図を確認しながら何か話をし始める。
コルタは騎士達と合流しているし、私はライの手伝いでもしようと建物の中へと向かうことに。
集会所は木造の平屋で入口が大きな二枚扉になっており、窓からはぼんやりとした灯が漏れてきている。
女性の姿が確認できないため、もしかしたら山狩りに向かう男性だけ集められているのかもしれない。
扉を開けて集会所の中へと入れば、ベッドが置かれて患者さんが寝ている。
村には病院がないため、集会所を病院代わりにしているのかもしれない。
ライは患者さんの治療しているようで、持ってきたワクチンを注射していた。
メディは薬草を手に持ちながら、村のお医者さんと話し中だ。
――なんか、ライが知らない人みたいだわ。
ライと結構時間を共にしてきて国王やライ個人の姿を見たことがあるけど、医者としての彼は初めて目にした。
見慣れない彼の姿に、私は見入ってしまう。
けれども、すぐに我に返りここに医療に関する知識がない自分が居ても邪魔だと悟り外へと出る。
「何も出来ないなぁ、私……」
手伝いに来たのに、全く出来ることがない。
ライやメディのように医療の知識があるわけでもないし、お兄様のように頭が良いわけでもないし。
捜索の手伝いなら可能かもしれないけど、明日の早朝のためまだだし。
「村を見て軽く探して回ろうかな。畑もあると思うから、ラシットの餌も豊富だろうし」
私は近くを通りかかった村人にラシットを捕獲した場合に使用するケージを借り、建物から離れて捜索することに。
所々に建物があり明かりが灯されているので、やはり女性や子供は家の中にいるのだろう。
月明かりと家々の灯火が頼りの中、私は畑を中心に探していく。
人の気配が全く無いため、ラシットが落ち着いて食事をするにはベストな環境かもしれない。
ラシットが好きな葉物野菜が畑ではちょうど時期らしく、あちらこちらの畑には餌になりそうなものが豊富にある。
なるべく足音を立てないように歩きながら足を進めて行くと、ガサゴソと葉同士の擦れる音が聞こえ、私は足を止めて右手に広がる畑へと顔を向ける。
――ん?
じっと凝視すると、そこには地面から生えている葉物野菜に半分隠れるようにしてこちらを窺っているウサギのような生物がいた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。