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タッジー・マッジー1
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(ライナス視点)
ティアが出した案は二か国間で考慮された結果、好意的に受け入れられた。
交流がほどんとなく、現実的と理想的の代表と言われる国同士。
製紙の国・コリナは製紙技術のアピールができるし、芸術の国・レライは新しい芸術家の卵達を売り出すことができる。
この案件はお互いメリットしか生まないので断る理由なんてない。
「ティア、ますます忙しくなっているよな。食事も睡眠も大丈夫って言っていたけど、夢中になると周りが見えなくなるし」
俺は執務室にて休憩中に、ティアのことを考えていた。
空になったティーカップを机上に置き、椅子を引くと執務机の引き出しを開ける。
そこには、リボンで結ばれた三束の便せんが。
ティア、メディ、リストからの手紙で、一番多いのはリストからのものだ。
ティアとメディは多忙らしく、手紙の返事がしばらく送れないと事前に連絡があった。
そのため俺の情報は、リストからの手紙のみ。
ティアもメディも猪突猛進タイプだから、衣食住を忘れて目標に向かって突き進みそうだ。
家はいくら汚しても俺が片付けられるけれども、食事と睡眠をとらないと体に負担がかかってしまう。
ファルマとエタセルが近ければ気軽に様子を窺いに行けるのだが。
「おーい、ライナス」
聞き慣れた声と共に部屋をノックする音が届いてきたため、俺はすぐに入室を許可する返事をすれば、扉がゆっくりと開きマオストの姿が現れる。
「議会の書類を持ってきたぞ」
彼は手にしていた書類をばさばさと振りながら、俺の方へとやって来る。
「どうした? なんか沈んでいるな」
「ティアとメディが食事と睡眠をとっているかが気になって」
「あいかわらずのお母さん系国王だな。ティア嬢、この間転移魔法で来たときに元気だったんだろ? 心配することないさ」
「リストがいるから大丈夫だと思うけど、そのリストの胃も心配だし。ティア達が国内を変えて来ているとはいえ、まだ一年と少し。色々気苦労も多いらしい。この間、ティアが戻る時にガランから取り寄せた蜂蜜セットを送っておいた」
「ガランの蜂蜜はかなり希少だったはず。よく手に入ったな」
「リストが蜂蜜大好きだから伝手を頼って」
「息子の好物を仕送りするお母さんみたいだな! あっ、そうそう。忘れていた。ティア嬢との進捗状況はどんな感じ?」
「どういう意味だ?」
俺はマオストが差し出している書類を受け取りながら訊ねる。
「この間のレライ国のお嬢さんのように、ライナスの妻の座を狙っている国がたくさんある」
「あれは国王がだろ。本人は恋人がいる」
メラブレとチュールはお互いの国に認めて貰えるように、ティアから受けた打診が形になるように主となって色々動いてくれている。
「ライナスはティア嬢のことが好きだし側室は不要だろ。さすがに好きな人がいますから、縁談はちょっとって断れない。進展があるならば、断れるんだよ」
「……静かに見守って下さいといえる状況」
「えっ!? なに、了承して貰えたのか! なら、交際宣言出せよ」
「俺としてはゆっくりティアと歩みたい」
「そんなこと言っても国王だからなぁ……縁談来ているんだぞ」
「ティア、いま大事な時期だから騒がせるわけにはいかない。エタセルのことより、俺とティアに注目が集まってしまう」
「――ならば、匂わせておいたらいかがですか? 僕の大好きな舞台女優も以前より噂があった舞台俳優とお揃いの物を持っていたとスクープされました」
バンッと突然何の前触れもなく執務室の扉が開かれ、リーフデの父であるソシエ侯爵の使い魔・ミトが現れた。
「まさかティアナ様と進展があったとは、おめでとうございます。ね、マスター!」
にこにこと笑っているミトが振りかえれば、頭を抱えている公爵の姿が。
「申し訳ありません、ライナス様。所用があり立ち寄ったところ、うちのミトがご無礼なことを。ちょうど聞こえてきてしまったので……」
「いや、構わないさ」
「ティアナ様との交際を匂わせちゃえばいいじゃないですかー。縁談もライナス様ではなく、ご弟妹にいきますよ」
父母の両方と血が繋がっているのはメディだけだけれども、俺には父の側室達が生んだ腹違いの弟妹がいる。
勿論、一緒には暮らしてない。
暮らせるはずがないのだ。母を死に追いやった禍根とは……
異母弟妹の母親達も健在だ。
全員、離宮で暮らしているので年に数回しか顔を合せることはない。
「大丈夫です。僕に任せて下さい。世界中にさりげなくお伝えできますので」
「「「……」」」
全員、絶対に安心できないという疑惑の瞳をミトへと向けている。
「信じて下さいよー。新聞社にリークするんです。侯爵家ゆかりの人間からのスクープ! ライナス様に恋人発覚。相手は依然から噂のあった……って風に。ついでにティアナ様が手がけているエタセルの保養施設についてもさりげなくリークしたら宣伝になります」
「ティアに聞いてみる」
「僕が聞いてきましょうか? 一応、鷹なんで」
「ミト、お前は転移魔法が使えるだろ」
「マスター、僕だってたまには飛ばないと飛び方忘れちゃいますよ」
「なら、ティアとメディに持って行ってもらいたいものがあるんだ」
「構いませんよ」
「作ったら連絡する」
俺は頭の中で仕事のスケジュールを組み直し、ティアとメディに渡すプレゼントを作る時間を捻出した。
ティアが出した案は二か国間で考慮された結果、好意的に受け入れられた。
交流がほどんとなく、現実的と理想的の代表と言われる国同士。
製紙の国・コリナは製紙技術のアピールができるし、芸術の国・レライは新しい芸術家の卵達を売り出すことができる。
この案件はお互いメリットしか生まないので断る理由なんてない。
「ティア、ますます忙しくなっているよな。食事も睡眠も大丈夫って言っていたけど、夢中になると周りが見えなくなるし」
俺は執務室にて休憩中に、ティアのことを考えていた。
空になったティーカップを机上に置き、椅子を引くと執務机の引き出しを開ける。
そこには、リボンで結ばれた三束の便せんが。
ティア、メディ、リストからの手紙で、一番多いのはリストからのものだ。
ティアとメディは多忙らしく、手紙の返事がしばらく送れないと事前に連絡があった。
そのため俺の情報は、リストからの手紙のみ。
ティアもメディも猪突猛進タイプだから、衣食住を忘れて目標に向かって突き進みそうだ。
家はいくら汚しても俺が片付けられるけれども、食事と睡眠をとらないと体に負担がかかってしまう。
ファルマとエタセルが近ければ気軽に様子を窺いに行けるのだが。
「おーい、ライナス」
聞き慣れた声と共に部屋をノックする音が届いてきたため、俺はすぐに入室を許可する返事をすれば、扉がゆっくりと開きマオストの姿が現れる。
「議会の書類を持ってきたぞ」
彼は手にしていた書類をばさばさと振りながら、俺の方へとやって来る。
「どうした? なんか沈んでいるな」
「ティアとメディが食事と睡眠をとっているかが気になって」
「あいかわらずのお母さん系国王だな。ティア嬢、この間転移魔法で来たときに元気だったんだろ? 心配することないさ」
「リストがいるから大丈夫だと思うけど、そのリストの胃も心配だし。ティア達が国内を変えて来ているとはいえ、まだ一年と少し。色々気苦労も多いらしい。この間、ティアが戻る時にガランから取り寄せた蜂蜜セットを送っておいた」
「ガランの蜂蜜はかなり希少だったはず。よく手に入ったな」
「リストが蜂蜜大好きだから伝手を頼って」
「息子の好物を仕送りするお母さんみたいだな! あっ、そうそう。忘れていた。ティア嬢との進捗状況はどんな感じ?」
「どういう意味だ?」
俺はマオストが差し出している書類を受け取りながら訊ねる。
「この間のレライ国のお嬢さんのように、ライナスの妻の座を狙っている国がたくさんある」
「あれは国王がだろ。本人は恋人がいる」
メラブレとチュールはお互いの国に認めて貰えるように、ティアから受けた打診が形になるように主となって色々動いてくれている。
「ライナスはティア嬢のことが好きだし側室は不要だろ。さすがに好きな人がいますから、縁談はちょっとって断れない。進展があるならば、断れるんだよ」
「……静かに見守って下さいといえる状況」
「えっ!? なに、了承して貰えたのか! なら、交際宣言出せよ」
「俺としてはゆっくりティアと歩みたい」
「そんなこと言っても国王だからなぁ……縁談来ているんだぞ」
「ティア、いま大事な時期だから騒がせるわけにはいかない。エタセルのことより、俺とティアに注目が集まってしまう」
「――ならば、匂わせておいたらいかがですか? 僕の大好きな舞台女優も以前より噂があった舞台俳優とお揃いの物を持っていたとスクープされました」
バンッと突然何の前触れもなく執務室の扉が開かれ、リーフデの父であるソシエ侯爵の使い魔・ミトが現れた。
「まさかティアナ様と進展があったとは、おめでとうございます。ね、マスター!」
にこにこと笑っているミトが振りかえれば、頭を抱えている公爵の姿が。
「申し訳ありません、ライナス様。所用があり立ち寄ったところ、うちのミトがご無礼なことを。ちょうど聞こえてきてしまったので……」
「いや、構わないさ」
「ティアナ様との交際を匂わせちゃえばいいじゃないですかー。縁談もライナス様ではなく、ご弟妹にいきますよ」
父母の両方と血が繋がっているのはメディだけだけれども、俺には父の側室達が生んだ腹違いの弟妹がいる。
勿論、一緒には暮らしてない。
暮らせるはずがないのだ。母を死に追いやった禍根とは……
異母弟妹の母親達も健在だ。
全員、離宮で暮らしているので年に数回しか顔を合せることはない。
「大丈夫です。僕に任せて下さい。世界中にさりげなくお伝えできますので」
「「「……」」」
全員、絶対に安心できないという疑惑の瞳をミトへと向けている。
「信じて下さいよー。新聞社にリークするんです。侯爵家ゆかりの人間からのスクープ! ライナス様に恋人発覚。相手は依然から噂のあった……って風に。ついでにティアナ様が手がけているエタセルの保養施設についてもさりげなくリークしたら宣伝になります」
「ティアに聞いてみる」
「僕が聞いてきましょうか? 一応、鷹なんで」
「ミト、お前は転移魔法が使えるだろ」
「マスター、僕だってたまには飛ばないと飛び方忘れちゃいますよ」
「なら、ティアとメディに持って行ってもらいたいものがあるんだ」
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