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VSルルディナ・ウェスター2

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「当然でしょう。そもそもライと貴方では比べる価値もない。ウェスター様ではライと同じ舞台に立つことが出来ないのですから」
「俺は侯爵家生まれだぞ!」
「ライはファルマの国王。王族です」
「ル、ルルディナ様と結婚したから俺も似たようなものだ」
「えぇ、そうですよね。でも、侯爵家のウェスター様とご結婚したのでルルディナ様は臣籍に降家したはず」
「ち、血筋は変わらないじゃないか!」
 絶対にこの方とは話がかみ合うことはない気がしてきた。
 疲れ始めてしまった私は、こっそり溜息を吐き出す。

「ルルディナ様、ウェスター様。落ち着いて下さい! ライナス様達に失礼ですよ」
「おい、誰か陛下と宰相を呼んで来い。陛下は別室にいるはずだ」
「だから言ったんだ。ルルディナ様達にだけこの場を任せるのは問題があるって」
 良心があるリムスの貴族や騎士達が止めに入ったが、二人が止まるはずがない。

「そう言えば、ファルマ王って王太子時代に追放されて廃太子になった身でしょう? 私、同じ王族というくくりに入れられたくないわ。私は代々この地を守っている高貴な身分なの。本当の王族よ」
「追放……? なら、ティアナとお似合いだな。ティアナも追放されて名もない田舎国のエタセル行ったし」
 クスクスと笑い始めたルルディナ様達を見て私は腸が煮えくり返った。
 私の事はなんと言われようと良いけど、ライの事を侮辱するのは許せない!
 唇を動かそうとしたら、ライに「ティア」と制止されてしまう。

 ――どうして止めるの?

 と、ライの顔を見れば、優しく背中をポンポンと叩かれた。
 彼はルルディナ様達を見据え口を開く。

「お前達は国を背負っているという自覚がないんじゃないのか? 周りを見てみろ。皆、どんな顔でお前達を見ているのかを」
 ライの言葉に対して私もウェスター様達と一緒に見回せば、皆冷めた視線を王女達に向けている。中には明らかに不愉快だという表情を浮かべている人達もいた。

「どうしてみんなそんな目で私達を見ているの!? さっきまでお祝いムードだったのに」
 震えるルルディナ様をウェスター様が抱きしめたが彼も顔が真青だ。
 それはそうだろう。来客者を始め記者まで全員、二人へ不快感を前面に押し出しているのだから。

「世界にどれくらいの国があるかわかっているのか? リムスのように代々継いでいる国もあれば新興国もあるし、エタセルのように新しい王が国起こしを頑張っている国もある。先ほどのルルディナ王女の発言は君達の結婚を祝いに集まってくれた人々すらも侮辱するものだ。それから、お前達はティアを侮辱しているがティアの立場をわかっているのか? ティアはもうお前達が知っているティアではない。二年という月日を経って、地位も権力も手に入れたんだ」
 ライの台詞を聞き、私は「あぁ」と納得。

 そうか、ルルディナ様達は私の事をあの頃のティアナだと思っているのか。
 だから、あの頃と同じように私を下に見ている。
 なんだか、かわいそうな人達に思えてきた。

「私は二年前に貴方達に追放されたあの頃のティアナではもうないんですよ。お二人共、少しは成長して下さい。リムスの民に迷惑がかかります」
「何よ! ティアナのくせに私達にお説教するの!?」
 ルルディナ様の絶叫に近い台詞に対して、一斉にフラッシュが焚かれ始める。
 これ明日の一面はルルディナ様とウェスター様の醜態に決定だなぁ。

 ――話にならないし時間の無駄だからもう帰ろうかな。

「ティア、退席しよう。これ以上ここにいるのは時間の無駄だ」
「そうね。帰ってお茶が飲みたいわ」
 ライが私の背に手を添え促がしたので、私が帰るために身を翻して出入り口へと向かって行く中で、「どうして!?」という王女の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
 なにかしら? と振り返れば、周りの人々も私達と同様に出入り口へと向かっていた。どうやら皆、パーティーを退席するらしい。

 そりゃあ、そうだろう。
 二年前ならば、ルルディナ様達よりも身分も地位も低い私を敵にしていたけど今の私は前と違う。
 商会を背負っているし、ライの婚約者となる。

 それに、今回は諸外国から要人達が集まっているのだ。彼らだって馬鹿ではない。利益が生まない相手とは付き合うはずがない。

 ――明日の新聞一面はルルディナ様達ね。ある意味歴史に名を残す二人だわ。陛下からお叱りを受けて少し反省すればいいんだけど。



 私の予想通り、翌日の全新聞の一面はルルディナ様達の結婚式での大醜態。
 リムスの信頼は地に落ちた。各国を敵に回したルルディナ様達の処遇は!? など、センセーショナルな見出しばかり。
 王女自ら記者を呼んでいたため、写真もばっちりだった。






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