修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

文字の大きさ
34 / 338
1章 異世界突入編

第34話 報酬

しおりを挟む
 翌朝。

 琉海は約束通り、冒険者ギルドにやってきた。

「お待ちしていました。こちらにどうぞ」

 シーラが出迎えて、先導してくれる。

「あれ? 人がいない?」

 琉海はギルド内を見回すが、閑散としていた。

 昨日の光景とは正反対だ。

「ああ、それはですね。貴族の方がいらっしゃるときは、冒険者の方には、遠慮していただいているんです。昨日も言った通り、過去に貴族と冒険者で諍いがあったので、貴族様が来られる際はギルド内に冒険者は入れないようにしています」

「だから、俺は貴族じゃないって言ってるだろ」

「ええ、それは聞きました。ですが、あなた様に今、冒険者と会われますと、騒動になりかねないので、このような対処をさせていただきました」

「騒動? なんで俺が?」

 琉海は自分から冒険者に喧嘩を売る気はない。

 あちらから喧嘩を売られたらどうなるかわからないが、最初は話し合いで解決させたいと思っている。

 昨日は正当防衛だしな。

「C級冒険者を四人も倒してしまったからです」

「…………?」

 琉海はシーラの言いたいことが理解できず、首を傾げる。

「C級冒険者。それも悪名で有名な冒険者四人も倒した者がいる。そんな冒険者でもなく、貴族でもない平民の少年が冒険者ギルドに来たら、冒険者たちは自分たちのチームに入れようと躍起になって大勢で押し寄せてくるでしょう」

 シーラはわかったかしらと言いたげな怖い笑顔で琉海を見る。

「な、なるほど……」

「それに、もう噂になっているので、この町では気を付けた方がいいですよ。まだ顔までは周知されてはなさそうでしたけど、それも時間の問題かもしれませんね」

『さっそく、面倒事に巻き込まれたみたいね』

 頭に直接エアリスの笑い声が聞こえてきた。

 今日は朝から起きているようだが、姿が見えないので琉海の中にいるのだろう。

 エアリスの声を無視して、シーラの案内に従う。

 部屋は昨日と同じ場所。

 琉海が椅子に座ると、シーラも腰を下ろした。

「それで、本日は何の御用でしょうか?」

「えっと、その前にその猫を被った言い方やめないか? 昨日、宿で会ったときの方が接しやすいんだけど……」

「そう? あなたがいいと言うならそうするわ」

 なんともあっさりと口調を変えるシーラ。

「で、冒険者になるつもりのないあなたが、ここになんの用なのかしら?」

 スカウトを断ったからなのか、不機嫌そうな顔を隠そうともしないシーラ。

 猫を被らなくていいとは言ったが、素を出しすぎな気もする。

 だが、琉海はそれを口に出さず、飲み込んだ。

 そして、本題に入る。

「俺は人を探しているんだけど、この町で頬に傷のある金髪で三〇代ぐらいの男を見なかったか?」

 シーラは首を傾げた。

「そういう人は結構いるわよ。冒険者は魔物退治もするから、顔に傷のある人は多いわ。その中で三〇代の男性となると、思いつくだけで十人はいるわね」

『たぶん、あの男たちは冒険者じゃないと思うわよ。ルイが死んでる間の会話を聞いたけど、どっかの国の兵士のような会話をしていたわ。それに十人ぐらいの集団だったから、冒険者だったら、目立つかもしれないわね』

 琉海の頭の中でエアリスが否定する。

「たぶんだけど、冒険者じゃないかもしれない。どこかの国の兵士だと思うんだけど、十人ぐらいの集団でこの町に入ってきた奴らの中に顔に傷がある男っていなかった?」

 エアリスから聞いたことをそのままシーラに伝えた。

「いないわね。十人の団体で兵士ぐらいの力量のある人がこの町に入れば、ギルドにすぐ情報が入ってくるわ。そんな噂もないからここには来てないと思うわよ」

「そうか……」

 この町は、はずれのようだ。

「それだけ? なら、もういいかしら? 冒険者になる気のない人に情報をほいほいあげるつもりもないのよ。これは、昨日のお礼みたいなものだからね」

 そう言ってシーラは席を立とうとする。

「ちょっと待ってくれ! もう一つ聞きたいことがある」

「なに?」

 シーラは浮きかけた腰を再び下ろす。

「金を稼ぐ方法を聞きたい」

 琉海のまさかの質問にシーラはため息を吐く。

 そして――

「それなら、冒険者になれば、あなたならすごい額を稼げるわよ」

「それは断る。人を探すのに枷は邪魔になる」

「そう。じゃあ、ないわね」

「いや、あるはずだ。その方法の一つが『賊狩り』だろ」

「…………」

 シーラは反応を示さない。

 だが、無言は肯定に等しい。

 『賊狩り』の噂を聞いたとき、最初に思ったのは『賊狩り』と呼ばれている者は冒険者ギルドに登録しているのだろうか。

 もし、登録されていないのならば、賊を捕まえたときの懸賞金は得られていないのだろうか。

 いや、それはないだろう。

 ギルドに来て懸賞金を得る姿を誰かが見ているから、『賊狩り』の風貌まで広まっているのだろう。

 風貌と言っても素顔を見た者はいない。

 男か女かもわからないように体形を隠すほどゆったりとしたローブを被った者。

 姿がわかっているということは、見ている人物がいるということ。

 そして、その者が『賊狩り』と断定されていること。

「おそらく、冒険者ギルドに『賊狩り』がやってきて、賊を引き渡しているんだろ。そして、懸賞金を得ている」

 シーラは琉海を冒険者に勧誘することを諦めたのか、大きく息を吐いてから口を開いた。

「ええ、その通りよ。ちなみに、冒険者にならずに多くのお金を稼ぐ唯一の方法でもあるわね」

 C級冒険者を四人相手に無傷で勝てる琉海なら、懸賞金のかかっている賊にも勝てるだろう。

 シーラは琉海にそこを気づかれたくはなかったようだ。

 冒険者しか稼ぐ方法はないと思い込ませて、ギルドに加入してもらおうと考えていたのだろう。

 しかし、その思惑は失敗に終わった。

「はい。じゃあ、これはついでの報酬よ」

 シーラは机の上に何枚かの紙を広げた。

 そこには、特徴と似顔絵が書かれていた。

「これって手配書?」

「ええ、これが、この町の近くで悪さをしている賊たちよ。懸賞金のかかる賊たちは手口も陰湿だけど、逃げ足と潜伏がうまいのよ。見つけるのが、大変だと思うけど、まあ、頑張ってみなさい。無理そうだったら、いつでもギルドに登録しに来ていいわよ。そしたら、割のいい依頼を融通してあげるわ」

 シーラは最後まで琉海のスカウトを諦めなかった。

 複数の手配書を懐にしまう。

「ありがとう」

 琉海は礼を言って立ち上がろうとする。

「ああ、それと昨日の一件であなたに喧嘩を売った四人のC級冒険者はライセンス剥奪になったから、逆恨みで夜襲とかされないように気を付けてね。あなたはギルドに加入してないから、ギルドからのサポートはできないけど、注意しといた方がいいわよ」

 柄の悪い冒険者が腹いせに夜襲をかけたり、乱闘になることはよくあるらしい。

 気を付けた方がいいのかもしれない。

 ただ、今はそれよりも気になることがあった。

「なんでそんなに楽しそうに話しているんだ?」

「いつ泣きついてくるか楽しみだから」

 笑顔で送り出すシーラ。

 昨日の一件で面倒事が増えてしまったかもしれない。

 まあ、考えても仕方がないだろう。

 警戒だけは怠らず、今後のことを考えよう。

 必要なものは手に入れたのだから。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...