38 / 338
1章 異世界突入編
第38話 イーゲルの憎悪
しおりを挟む
「早く来い……」
両刃の剣の腹にイーゲルの怒気の孕んだ瞳が写る。
雨音が外から聞こえてきた。
「雨が降ってきやがったか」
ディックが外を覗いて呟いた瞬間――
屋敷の玄関の扉が吹っ飛んだ。
吹っ飛んだ扉が床を転がり、壁にぶつかってようやく止まる。
「来たな!」
イーゲルは剣を片手に駆け出した。
魔法で身体強化を施し、加速する。
「殺す殺す殺す殺す殺す!」
一気に距離を詰めようとする。
先行するイーゲルに遅れて三人も動き出す。
ミリアのことしか頭になかったバカスも琉海に襲い掛かった。
最初に襲い掛かったイーゲルは剣を横薙ぎに振る。
しかし、それは虚しく空を切り、蹴り飛ばされた。
他三人も手も足も出ず、吹っ飛ばされる。
「やれ!」
イーゲルの号令で四方八方から十数人の男たちが琉海に群がった。
イーゲルもどさくさに紛れようとしたが、十数人の山賊たちは一蹴される。
「ミリアを返してもらう」
琉海は四方八方に倒れている男たちに宣言した。
(あのガキの方が強い!?)
イーゲルの脳裏に琉海を強者と認める思考が過った。
だが――
「認めるかあああぁぁぁ!」
イーゲルは怒りを声に乗せて叫び、再び駆け出す。
剣を片手で持ち、もう片方の手で魔法によって炎の玉を三つ生み出す。
B級まで昇ったヤンばあは五個の火玉を瞬時生み出したのに対し、イーゲルは三つ
が限界だった。
「吹き飛べ!」
三つの火球が炎弾と成って琉海へ襲い掛かる。
琉海はそれを最小限の動きで受け流し、火球は後方で爆ぜた。
「まだまだ!」
次は炎が矢の形になって出現する。
それが三本。
火弾より速いが、殺傷能力は若干劣る速度重視な魔法だ。
火球の後の火矢。
緩急によって体が付いていけず、直撃するという算段だろう。
イーゲルは一気に間合いを詰めて、火矢をくらった瞬間に追い打ちを狙った。
しかし、琉海は火矢を裏拳で一掃。
そのまま、回し蹴りで間合いに入っていたイーゲルを蹴り飛ばした。
「がふッ!」
壁に直撃し、腹と背中に鈍痛が襲う。
床に倒れるも、意識を保つのがやっと。
一瞬の攻防。
しかし、力量さをまざまざと見せられた。
(な、なんでこんなにも差があるんだ……)
これまでの経験で圧倒的に敵わない相手と出会ってきたことはある。
自分より強い者は多くいると理解している。
しかし、その強者たちは皆それ相応の空気――オーラと言い換えてもいい。
そういったものを備えていた。
だが、あのガキからは強者の風格を全く感じない。
(なぜ、こんなに強い……)
いままでの強者を見極める感覚が通用しなかった。
そのせいか、負けることがどうしても納得できない。
弱者に負けている感覚に苛まれる。
イーゲルは懐から人差し指ぐらいの小さい瓶を取り出した。
中身には、紫の毒々しい液体が入っていた。
イーゲルを助けてくれたフードの男の言葉を思い出す。
フードの男はこの瓶を渡すとき――
「命を賭けるのであれば、これを飲んでください。そうすれば、力を手に入れることができます。あなたの望む強者となるでしょう」
強者。
力。
イーゲルにとって今、最も欲しいもの。
「俺は強者だあああぁぁぁ!」
一気に瓶の中身を口の中に流し込んだ。
両刃の剣の腹にイーゲルの怒気の孕んだ瞳が写る。
雨音が外から聞こえてきた。
「雨が降ってきやがったか」
ディックが外を覗いて呟いた瞬間――
屋敷の玄関の扉が吹っ飛んだ。
吹っ飛んだ扉が床を転がり、壁にぶつかってようやく止まる。
「来たな!」
イーゲルは剣を片手に駆け出した。
魔法で身体強化を施し、加速する。
「殺す殺す殺す殺す殺す!」
一気に距離を詰めようとする。
先行するイーゲルに遅れて三人も動き出す。
ミリアのことしか頭になかったバカスも琉海に襲い掛かった。
最初に襲い掛かったイーゲルは剣を横薙ぎに振る。
しかし、それは虚しく空を切り、蹴り飛ばされた。
他三人も手も足も出ず、吹っ飛ばされる。
「やれ!」
イーゲルの号令で四方八方から十数人の男たちが琉海に群がった。
イーゲルもどさくさに紛れようとしたが、十数人の山賊たちは一蹴される。
「ミリアを返してもらう」
琉海は四方八方に倒れている男たちに宣言した。
(あのガキの方が強い!?)
イーゲルの脳裏に琉海を強者と認める思考が過った。
だが――
「認めるかあああぁぁぁ!」
イーゲルは怒りを声に乗せて叫び、再び駆け出す。
剣を片手で持ち、もう片方の手で魔法によって炎の玉を三つ生み出す。
B級まで昇ったヤンばあは五個の火玉を瞬時生み出したのに対し、イーゲルは三つ
が限界だった。
「吹き飛べ!」
三つの火球が炎弾と成って琉海へ襲い掛かる。
琉海はそれを最小限の動きで受け流し、火球は後方で爆ぜた。
「まだまだ!」
次は炎が矢の形になって出現する。
それが三本。
火弾より速いが、殺傷能力は若干劣る速度重視な魔法だ。
火球の後の火矢。
緩急によって体が付いていけず、直撃するという算段だろう。
イーゲルは一気に間合いを詰めて、火矢をくらった瞬間に追い打ちを狙った。
しかし、琉海は火矢を裏拳で一掃。
そのまま、回し蹴りで間合いに入っていたイーゲルを蹴り飛ばした。
「がふッ!」
壁に直撃し、腹と背中に鈍痛が襲う。
床に倒れるも、意識を保つのがやっと。
一瞬の攻防。
しかし、力量さをまざまざと見せられた。
(な、なんでこんなにも差があるんだ……)
これまでの経験で圧倒的に敵わない相手と出会ってきたことはある。
自分より強い者は多くいると理解している。
しかし、その強者たちは皆それ相応の空気――オーラと言い換えてもいい。
そういったものを備えていた。
だが、あのガキからは強者の風格を全く感じない。
(なぜ、こんなに強い……)
いままでの強者を見極める感覚が通用しなかった。
そのせいか、負けることがどうしても納得できない。
弱者に負けている感覚に苛まれる。
イーゲルは懐から人差し指ぐらいの小さい瓶を取り出した。
中身には、紫の毒々しい液体が入っていた。
イーゲルを助けてくれたフードの男の言葉を思い出す。
フードの男はこの瓶を渡すとき――
「命を賭けるのであれば、これを飲んでください。そうすれば、力を手に入れることができます。あなたの望む強者となるでしょう」
強者。
力。
イーゲルにとって今、最も欲しいもの。
「俺は強者だあああぁぁぁ!」
一気に瓶の中身を口の中に流し込んだ。
61
あなたにおすすめの小説
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。
蛇崩 通
ファンタジー
ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。
三千円で。
二枚入り。
手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。
ガイドブックには、異世界会話集も収録。
出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。
おもしろそうなので、買ってみた。
使ってみた。
帰れなくなった。日本に。
魔力切れのようだ。
しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。
それなのに……
気がついたら、魔王軍と戦うことに。
はたして、日本に無事戻れるのか?
<第1章の主な内容>
王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。
魔王軍が、王都まで迫ったからだ。
同じクラスは、女生徒ばかり。
毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。
ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。
しかたがない。ぼくが戦うか。
<第2章の主な内容>
救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。
さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。
どう救出する?
<第3章の主な内容>
南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。
そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。
交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。
驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……
<第4章の主な内容>
リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。
明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。
なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。
三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる