修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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2章 スティルド王国編

第69話 1日目終了

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 琉海の試合の熱気が冷めないうちに次の試合に進んだ。

 一通り一回戦が終わると、二回戦が始まる。

 他の試合をやっている間は休憩できるとはいえ、この大会のシステム上、組み合わせの運は重要そうだ。

 強い相手に何とか勝っても次の対戦相手が余力を残していれば、勝ち目が薄くなってしまうからだ。

 だが、そんな計算は琉海には関係なかった。

 琉海の二回戦の対戦相手はザドフと同じぐらいの力量。

 二回戦でのオッズは琉海が若干人気だった。

 マグレだろうと思っている者もいるのだろう。

 そして、対戦相手も観戦者と同じように、一回戦はマグレだろうと思っているのが、表情から読み取れた。

 先行は相手に譲る。

 相手の攻撃を避けて再び掌打で沈めた。

 一回戦と同じパターンだ。

 一瞬、静寂が包み込み、誰かの声を皮切りに会場は大歓声となった。

 一回戦はマグレじゃないと観客たちは理解したのだろう。

     ***


 二回戦を終え、琉海はティニアたちと馬車で屋敷に戻る。

「ルイ様はすごいですね。私の想像を遥かに超える強さでした」

 ティニアが琉海の戦いぶりに称賛を送る。

 そのときのティニアの表情は満面の笑みたった。

「ありがとうございます」

 琉海は頭を下げた。

「私もルイ様の戦いぶりは素晴らしいと思いました。特に一回戦でのザドフとの試合のあの一撃は、私でも避けれたかどうか」

 アンジュも琉海を褒めてくる。

「あれは、最初に大振りの攻撃をしてきたので、チャンスを拾っただけですよ」

 琉海の言っていることをアンジュも理解できていた。

 たしかに、ザドフの初撃は大振りで隙だらけだった。

 だが、それは鎧という盾があったからだろう。

 それだけ防げる自信のある鎧だったのなら、造るのに使用した金属も硬質の高い物を使用しているはずだ。

 そんな鎧を素手の一撃で破壊されるとは思っていなかっただろう。

 アンジュも昨日の早朝に手合わせをする機会があったが、あの時は投げられただけで、力の一端すら見ることができなかった。

(今日の試合を見る限りだと、昨日の早朝の手合わせは、ただ私が動きに付いていけていなかっただけ。だから、理解できなかった)

 今日の試合で琉海がどれだけ強いのか、客観視することができた。

(本気ではなさそうだったから、まだ片鱗なのだろうけど)

 アンジュは頭の中で琉海との戦闘を想像してみた。

 しかし、まず自分では勝負にならないだろうと推測する。

 ザドフの斬撃を避けたときの動きは、アンジュのトップスピードより速い。

 そして、あの掌打は鎧を破壊する威力。

 そんな凄まじい威力を防ぐ術をアンジュは持っていなかった。

 すべてを躱そうにも速さで負けてしまったら、どうにもできない。

 琉海と速さで勝負できる今回の大会で言うと、予選決勝で当たるシェイカーだろうか。

 彼は、スピード重視の騎士だ。

 手数で相手を圧倒していくのが、得意の戦闘スタイル。

 シェイカーと戦うことで、琉海の真の力を見ることができるかもしれないと思うアンジュだった。
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