修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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3章 ルダマン帝国編

第234話 攻戦一方

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 さっきまで飄々としていた雰囲気から絶対に通さないという壁のような圧力。

 エリの額から汗が流れる。

 対立が確定したのなら、やることは一つだけ。

(速攻で片づけるしかない!)

 覚悟を決めたエリは――

「《フルエンチャント》」

 エリの体が雷気を帯びる。

 そして――

 姿を消す。

 雷電の如く一瞬で女性の死角に回る。

 消えたエリを探す暇さえ与えない。

 死角から剣を横薙ぎに振った。

 しかし、カンッという甲高い音が鳴る。

「なッ!?」

 エリの剣を握る手からは硬質な手応えが返ってきた。

「まだまだね。その程度なら追えるわ」

「くッ! なら――」

 エリは《先読み》の能力も駆使して連撃を放つ。

 数十の斬撃と共に稲妻が女性の周囲で乱舞する。

 しかし、そのすべてが防がれた。

(《先読み》をしているはずなのに――)

 対処できない場所を狙ったはずなのに完璧に防がれる。

(こちらの動きを誘導されている!?)

 エリは《先読み》の能力で相手の動きを見てから攻撃する場所を決めていた。

 しかし、女性はフェイクを混ぜてエリの動きを誘導してくる。

 それも巧みなフェイント。

 フェイントに飛び込めば、すぐにそのまま対応してくる。

 エリの動きは完全に掌握されていた。

「力任せで直線的。技術はまだまだね」

 女性の言葉はエリの耳には入らなかった。

 その後も剣を振り続けた。

 フェイントで誘導されているとはいえ、ここまで完璧に防ぐことができるだろうか。

 フェイントに逆らった動きをしても攻撃が当たらないのだ。

 ここまで来ると何かを見透かされているのだろうとエリは思う。

(何を見ている? 私の癖? それとも私と同じ能力を持つ《トランサー》?)

 エリは何を見ているのか様々な動きで探った。

 手を休めることなく、相手の動きを注視する。

 どれだけ攻撃しただろうか。

 エリの攻撃はすべて防がれ、何も得られずにいた。

(これだけ探してもわからないということは何かの能力で――)

「…………ッ!」

 エリは女性の妙な視線の動きに気づいた。

(今のは何?)

 エリは女性の視線を注視した。

 そして、何を見られていたのか気づく。

(まさか、これを見ていたの!)

 知ることはできた。

 しかし、気づくのに時間がかかり過ぎた。

 エリの体に帯びた雷気が微かに明滅する。

 十数分の戦闘だというのに、集中力と魔力がかなり消耗していた。

「はあはあ……」

 エリは一度、息を整えるために後ろに下がる。

「もう、終わり?」

 女性は変わらず余裕の表情。

 片やエリは苦しさが表情に出ていた。

「はあはあ……」

(まさか、私の《フルエンチャント》が目印になっていたなんて)

 エリが目にしたのは《フルエンチャント》で雷化した体から放電する電気がエリの  行先を先行して放電していた所だった。

 雷化したとはいえ、純粋な電気の速度には劣る。

 エリが向かう先に微かに放電していたのが目印となっていたのだ。

 わかってしまえば、簡単なことだ。

 ただ、放電されるのはほんの一瞬。

 それを見逃してしまうのがほとんどだろう。

 だが、この女性は見逃さなかった。

 これはエリの熟練度の問題だった。

《フルエンチャント》の理想は身体を属性と同化させて留める。

 完璧に制御できていれば放電することはない。

 放電する時点で身体に留められていないということだ。

「自分の未熟さを痛感させられるわね」

 とはいえ、《フルエンチャント》を扱えるだけでかなりの熟練者だ。

 それを完璧にできる人間となるとどれだけいるだろうか。

 そこまで多くはないだろう。

「ふう、動揺を表にださないようにしなきゃ」

 エリは浅く息を吐いて、眼前に立ちはだかる女性を睨む。
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