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3章 ルダマン帝国編
第242話 夜更けの侵入者
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夜が更け、辺りが静かになったころ。
収容所の外壁の上では2人1組で十数人が巡回していた。
少し離れた森からは夜行性の魔物たちの鳴き声が聞こえてくる。
毎日のことだからか、警備兵は反応しない。
慣れている者たちにとってはこれぐらいのことは異変には値しないのだろう。
「バトラー様が来た以外には特に何も起きないな」
「ああ、静かなもんだ」
外壁の内側でもランプを腰に下げた者たちが巡回しているのが見える。
平常通り問題はなさそうだった。
ジャック・バトラーが来るという珍しいことが起きたが、それ以外は今のところ平常通り何も起きていない。
というよりも、この収容所が建設されてから誰もここへ近づこうと思うような者はいなかった。
ルダマン帝国の戦力は絶大であり、〝帝天十傑〟という最高戦力も控えているせいか救出しようなんて考える者はいない。
つまり、ここにいる警備兵たちは実践が著しく乏しいのだ。
だから、微かな異変に気づけない。
夜闇を利用して外壁の傍まで近づかれてもわからない。
そして、外壁の上で警備を行っている者たちの頭の中に、外壁を一足飛びで飛び込んでくるような者がいるとは思っていなかった。
普段通り外を警戒しながら会話をしていた二人の眼前に突然フードを被った男が姿を現す。
「なッ――」
「どこから――」
一瞬だった。
微かに声を出しただけで首が飛ばされる。
下に落ちそうになる死体を風の精霊術で支えて静かに横たえる琉海。
「来て大丈夫だぞ」
琉海が外壁の下に合図を送る。
すると、下からリーリアとスミリアが上がってきた。
琉海は自分たちの周りに風の結界を張ることで物音を消す。
「簡単に登れたわね」
「問題はここからだ」
琉海たちは姿勢を低くして外壁の中を覗く。
「あれが内壁か……」
琉海たちがレオンスに教えてもらった情報はここまでだった。
反乱軍の情報収集能力でも収容所の詳細な情報を入手することはできなかったようだ。
警戒レベルの高い収容所は近づくこともできないとのことだった。
さすがに守りは固いようだ。
「さて、ここからはアドリブになるんだが……」
『あの内側の壁を境に魔力障壁が展開されているわね』
粒子化して周囲を確認していたエアリスが戻ってきたようだ。
「あの壁を越えては無理か」
『力尽くで突破するならできなくはないと思うけど、侵入がバレるわよ』
「だよな……さて、どうしたもんか」
バレると捕虜を救出した後、庇いながらの戦闘になってしまう。
それだけは避けたい。
「そうなると、先に全滅させておくべきか」
琉海は自然力の波を発生させて警備兵が何人いるのか探る。
エアリスほど完璧ではないが、大体の人数であれば把握できる。
(ざっと30人以上はいるか……それにしてもあの壁の先は全くわからないな)
琉海は内壁の中にも自然力の波を放ってみたが、内壁に阻害されて中を索敵することは叶わなかった。
一番気になる所がわからない。
だからといって、諦めるという選択肢はない。
「まずは外側を制圧する。二人はそこで援護を頼む」
琉海はそう言って塀から飛び降りた。
収容所の外壁の上では2人1組で十数人が巡回していた。
少し離れた森からは夜行性の魔物たちの鳴き声が聞こえてくる。
毎日のことだからか、警備兵は反応しない。
慣れている者たちにとってはこれぐらいのことは異変には値しないのだろう。
「バトラー様が来た以外には特に何も起きないな」
「ああ、静かなもんだ」
外壁の内側でもランプを腰に下げた者たちが巡回しているのが見える。
平常通り問題はなさそうだった。
ジャック・バトラーが来るという珍しいことが起きたが、それ以外は今のところ平常通り何も起きていない。
というよりも、この収容所が建設されてから誰もここへ近づこうと思うような者はいなかった。
ルダマン帝国の戦力は絶大であり、〝帝天十傑〟という最高戦力も控えているせいか救出しようなんて考える者はいない。
つまり、ここにいる警備兵たちは実践が著しく乏しいのだ。
だから、微かな異変に気づけない。
夜闇を利用して外壁の傍まで近づかれてもわからない。
そして、外壁の上で警備を行っている者たちの頭の中に、外壁を一足飛びで飛び込んでくるような者がいるとは思っていなかった。
普段通り外を警戒しながら会話をしていた二人の眼前に突然フードを被った男が姿を現す。
「なッ――」
「どこから――」
一瞬だった。
微かに声を出しただけで首が飛ばされる。
下に落ちそうになる死体を風の精霊術で支えて静かに横たえる琉海。
「来て大丈夫だぞ」
琉海が外壁の下に合図を送る。
すると、下からリーリアとスミリアが上がってきた。
琉海は自分たちの周りに風の結界を張ることで物音を消す。
「簡単に登れたわね」
「問題はここからだ」
琉海たちは姿勢を低くして外壁の中を覗く。
「あれが内壁か……」
琉海たちがレオンスに教えてもらった情報はここまでだった。
反乱軍の情報収集能力でも収容所の詳細な情報を入手することはできなかったようだ。
警戒レベルの高い収容所は近づくこともできないとのことだった。
さすがに守りは固いようだ。
「さて、ここからはアドリブになるんだが……」
『あの内側の壁を境に魔力障壁が展開されているわね』
粒子化して周囲を確認していたエアリスが戻ってきたようだ。
「あの壁を越えては無理か」
『力尽くで突破するならできなくはないと思うけど、侵入がバレるわよ』
「だよな……さて、どうしたもんか」
バレると捕虜を救出した後、庇いながらの戦闘になってしまう。
それだけは避けたい。
「そうなると、先に全滅させておくべきか」
琉海は自然力の波を発生させて警備兵が何人いるのか探る。
エアリスほど完璧ではないが、大体の人数であれば把握できる。
(ざっと30人以上はいるか……それにしてもあの壁の先は全くわからないな)
琉海は内壁の中にも自然力の波を放ってみたが、内壁に阻害されて中を索敵することは叶わなかった。
一番気になる所がわからない。
だからといって、諦めるという選択肢はない。
「まずは外側を制圧する。二人はそこで援護を頼む」
琉海はそう言って塀から飛び降りた。
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