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3章 ルダマン帝国編
第270話 時間切れ
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ルイは目端から後方を覗き見る。
そこには、外皮が外れた装置が見えた。
まるでパンパンになった風船のようだ。
もう、破裂寸前なのは明らか。
前方に視線を向ければ、荷車を押しているリーリアたちが見える。
荷車はまだ、歪んだ空間に辿り着いていない。
「リーリア! スミリア! 全力で荷車を押して早く入れ!」
「「押してるわよ!」」
重心を傾けて必死に押しているのだろうが、無情には荷車はガラガラとゆっくり進む。
追いついた琉海は荷車を押すのを手伝う。
しかし、マナの出力が落ちたせいで精霊術が満足に使えない。
最初に荷車を引いた時は重いと感じなかった。
それが今では全く動かせられない岩かと思うほど重かった。
現状の琉海では助けになっているかわからない。
そして、迫るタイムリミット。
(これじゃ、間に合わない!)
「エアリス、マナの伝導率をなんとかできないか!」
『やってるけど、全身を問題なく動かせるようにするので手一杯なのよ』
「ダメか……」
出力の上がらない精霊術では荷車を押してもあまりにも力不足だった。
進みの遅い荷車を爆発寸前の装置は待ってくれない。
「少しでも時間を稼げれば……」
琉海は辺りを見回す。
この状況を打開するために。
そして、視界に入る爆発寸前の装置。
その装置は魔力の供給が止まっても自然力を吸収し続けていた。
「原因がこれならいけるか?」
琉海は荷車から手を離した。
「リーリア、俺のことは気にせず、進んでくれ」
「わかったわ」
「エアリス、大雑把でも構わないから、壊れることのないように頼む」
『な、なにをするつもり!?』
「なにって――」
琉海は瞑想をするかのように目を瞑る。
そして、周囲の自然力を取り込んでいく。
普段は精霊術でマナを使用するときに必要な分だけマナを生成していた。
生成する量は最低限。
だから、知らない。
自分がどれだけのマナを生成して体の中に貯蓄できるのか。
琉海は一気に周囲の自然力を体に取り込んでいく。
「周囲の自然力を取り込むんだ」
『自然力を取り込んだままにしないでよ。異形の化物になってもおかしくないわよ』
「ああ、わかってる」
琉海は吸収した自然力を魔力と掛け合わせて、マナに変換していく。
魔力が尽きれば、魔薬を服用した奴らと同じように異形な怪物に変化してしまうだ
ろう。
ただし、琉海は無尽蔵な魔力がある。
自然力をどんどん吸収して、マナを作り続けた。
周囲の自然力の流れが変わる。
大河のように装置へ向かっていた自然力が琉海へと流れる。
琉海へ流れた分、装置への供給量が減っていく。
自然力の供給量が減ったせいか装置の膨張が緩やかになった気がする。
その対価として琉海に影響が出始める。
「ぐっ……」
琉海は苦悶の表情をする。
体の中に異物が溜まっていく感覚がある。
最初は食べ物の食べ過ぎで腹いっぱいかのような感覚を覚えるが、すぐに腹痛へ変わる。
(マナを留めるのはきついな……)
『マナを溜めるにも限界があるわよ』
「わかっている。大丈夫だ。まだいける……」
琉海は目端でリーリアたちを見る。
(あと少し……)
もう、荷車の前半が歪んだ空間に入った。
マナが膨張しないように体内で圧縮して許容量を増やす。
増やしたスペースに膨大な自然力を取り込んで生成したマナを入れていく琉海。
苦しさは変わらなかった。
自然力を取り込み続けた時間稼ぎが功を奏したのか、荷車の半分が歪んだ空間の中に入った。
「もう少しで……」
琉海がここからの退避を考えた瞬間――
「ピキッ!」
装置から不吉な音が聞こえた。
これは装置の限界の音だ。
留めていた容器に少しでもヒビが入れば一気にそのヒビをこじ開けて爆発する。
「リーリア! スミリア! 早く入れ!」
苦しい中、琉海は声を張り上げる。
『ルイ、あなたも早く逃げないと――』
「わかっている……」
装置にヒビが入ってしまえば、この時間稼ぎは意味をなさない。
琉海は動こうとしたが、あまりにも多いマナ量に体が痛む。
このマナを吐き出さないと動けないほど溜め続けてしまったようだ。
「賭けにはなるが……」
眼前にはヒビが広がっていく装置の姿が見える。
そして、遂に装置は原型を保てなくなった。
マナの大爆発。
一瞬で辺りを更地にする衝撃波。
だが、琉海は怯まなかった。
一瞬を見極めて手を伸ばした。
「ここだ!」
琉海はため込んだマナを圧縮し、玉状にして爆発と衝突させた。
そこには、外皮が外れた装置が見えた。
まるでパンパンになった風船のようだ。
もう、破裂寸前なのは明らか。
前方に視線を向ければ、荷車を押しているリーリアたちが見える。
荷車はまだ、歪んだ空間に辿り着いていない。
「リーリア! スミリア! 全力で荷車を押して早く入れ!」
「「押してるわよ!」」
重心を傾けて必死に押しているのだろうが、無情には荷車はガラガラとゆっくり進む。
追いついた琉海は荷車を押すのを手伝う。
しかし、マナの出力が落ちたせいで精霊術が満足に使えない。
最初に荷車を引いた時は重いと感じなかった。
それが今では全く動かせられない岩かと思うほど重かった。
現状の琉海では助けになっているかわからない。
そして、迫るタイムリミット。
(これじゃ、間に合わない!)
「エアリス、マナの伝導率をなんとかできないか!」
『やってるけど、全身を問題なく動かせるようにするので手一杯なのよ』
「ダメか……」
出力の上がらない精霊術では荷車を押してもあまりにも力不足だった。
進みの遅い荷車を爆発寸前の装置は待ってくれない。
「少しでも時間を稼げれば……」
琉海は辺りを見回す。
この状況を打開するために。
そして、視界に入る爆発寸前の装置。
その装置は魔力の供給が止まっても自然力を吸収し続けていた。
「原因がこれならいけるか?」
琉海は荷車から手を離した。
「リーリア、俺のことは気にせず、進んでくれ」
「わかったわ」
「エアリス、大雑把でも構わないから、壊れることのないように頼む」
『な、なにをするつもり!?』
「なにって――」
琉海は瞑想をするかのように目を瞑る。
そして、周囲の自然力を取り込んでいく。
普段は精霊術でマナを使用するときに必要な分だけマナを生成していた。
生成する量は最低限。
だから、知らない。
自分がどれだけのマナを生成して体の中に貯蓄できるのか。
琉海は一気に周囲の自然力を体に取り込んでいく。
「周囲の自然力を取り込むんだ」
『自然力を取り込んだままにしないでよ。異形の化物になってもおかしくないわよ』
「ああ、わかってる」
琉海は吸収した自然力を魔力と掛け合わせて、マナに変換していく。
魔力が尽きれば、魔薬を服用した奴らと同じように異形な怪物に変化してしまうだ
ろう。
ただし、琉海は無尽蔵な魔力がある。
自然力をどんどん吸収して、マナを作り続けた。
周囲の自然力の流れが変わる。
大河のように装置へ向かっていた自然力が琉海へと流れる。
琉海へ流れた分、装置への供給量が減っていく。
自然力の供給量が減ったせいか装置の膨張が緩やかになった気がする。
その対価として琉海に影響が出始める。
「ぐっ……」
琉海は苦悶の表情をする。
体の中に異物が溜まっていく感覚がある。
最初は食べ物の食べ過ぎで腹いっぱいかのような感覚を覚えるが、すぐに腹痛へ変わる。
(マナを留めるのはきついな……)
『マナを溜めるにも限界があるわよ』
「わかっている。大丈夫だ。まだいける……」
琉海は目端でリーリアたちを見る。
(あと少し……)
もう、荷車の前半が歪んだ空間に入った。
マナが膨張しないように体内で圧縮して許容量を増やす。
増やしたスペースに膨大な自然力を取り込んで生成したマナを入れていく琉海。
苦しさは変わらなかった。
自然力を取り込み続けた時間稼ぎが功を奏したのか、荷車の半分が歪んだ空間の中に入った。
「もう少しで……」
琉海がここからの退避を考えた瞬間――
「ピキッ!」
装置から不吉な音が聞こえた。
これは装置の限界の音だ。
留めていた容器に少しでもヒビが入れば一気にそのヒビをこじ開けて爆発する。
「リーリア! スミリア! 早く入れ!」
苦しい中、琉海は声を張り上げる。
『ルイ、あなたも早く逃げないと――』
「わかっている……」
装置にヒビが入ってしまえば、この時間稼ぎは意味をなさない。
琉海は動こうとしたが、あまりにも多いマナ量に体が痛む。
このマナを吐き出さないと動けないほど溜め続けてしまったようだ。
「賭けにはなるが……」
眼前にはヒビが広がっていく装置の姿が見える。
そして、遂に装置は原型を保てなくなった。
マナの大爆発。
一瞬で辺りを更地にする衝撃波。
だが、琉海は怯まなかった。
一瞬を見極めて手を伸ばした。
「ここだ!」
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