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3章 ルダマン帝国編
第280話 継承する覚悟
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「覚えているようだな。そして、帝都の要塞化についてだが、これはルダマン帝国の初代皇帝が作り出した魔具だ。当時は大戦争が起きた戦乱だったようだ。その時に民を守るため作り上げたのが、この帝都だ。完全防御と迎撃機能が備わっているようだ。だが、そんな兵器を誰でも使用できるようにするわけにはいかなかったから、権限を持たせる者を自分の血筋のみに限定し、継承の証で継承された者のみがその魔具を使用できるようにしたとのことだ。ルデアの防御装置については知っているだろ」
「ああ、それは調べたからな」
レオンスはあの情報を手に入れるのにかなりの労力を費やしていた。
「ルデアの防御装置は、この帝都の仕組みから着想を得て作り上げている。だからと言って帝都の要塞化がどんな機構なのかはわからないのだがな。この帝都自体が魔具であり、起動させることができるのは継承の証に認められたルダマンの血筋のみだ」
ルデアの防御装置の元ネタが帝都だったことには驚いたが、帝都自体が魔具であるという話にも驚きだ。
(そんなものが必要になることなんてあるのか……?)
永遠に起動しない物であるのなら、継承しなくても良いのではないかと思ってしまう。
「大戦争がいつ起きるかはわからない。明日かもしれないし、100年後かもしれない。だが、その時になって守れる手段を放棄して後悔するよりも手段を残しておいたほう何倍もいいと思わないか」
「それは大戦争が起きた場合の話だろ。起きなければ無用の長物だ」
「大戦争は再び起きる。これは確定事項だ」
「なぜ言い切れる」
「初代皇帝が《未来視》の《トランサー》だからだ。初代皇帝は大戦争を乗り越えた後に未来を視たそうだ。その時に再び大戦争が起きるのを視たそうだ。その時、初代皇帝はこの装置を残すことを決意したと記されている日記が残っている」
そんなことがあったのか。
「これを知っているのは皇帝を引き継ぐ者と信頼できる者のごく一部のみ。ここにいる者は皆知っているから問題ない。私が死んでも二人が口伝として残る」
宰相はルジアス皇帝に一礼して謝意を示す。
「これでお前に引き継ぐことができる」
ルジアス皇帝が言いたかったことは言い終えたようだ。
だが、レオンスはまだ整理できていなかった。
自分が皇帝になるという重圧。
反乱軍として行動するのとは訳が違う。
「俺は……」
「今のお前の周りには頼れる者が多いはずだ」
ルジアスは言外に自分とは違うと伝えたいのだろう。
たしかにレオンスに協力しているのは、イラス王国民が多いがルダマン帝国民もいた。
4年前にルジアス皇帝から受け取った信用できる者のリストを辿って協力関係を築けたルダマン帝国の貴族もいる。
ルジアス皇帝の言う通り、レオンスの周りには信頼できる者が多かった。
「私を処断すると同時に現在の中央貴族や腐った貴族どもも一緒に処断すれば、皇城に蔓延る膿を一斉に出すことができる。この機会を逃す手はない。それに私よりもルダマン帝国内を熟知している者が皇帝になる方が国のためにもなるはずだ。どうしようもない貴族もいただろう。そいつらを罰するには彼らより強い権力が必要だ」
ルジアス皇帝の言っていることが一番得なのはわかる。
レオンス自信が皇帝になれば、法律を改正することもできる。
皇城内だけでなく、排除するべき馬鹿貴族も多く知っている。
彼らも一掃できるだろう。
だが、自分が皇帝になるという踏ん切りがつかなかった。
「これは4年前に出した手紙の時から計画していたことか?」
「そうではないと言ったら嘘になるが、渡せると確信したのは、ここ1年ばかりのことだ」
1年前からレオンスたちの動きが活発化していた。
下準備がある程度完了して動き方が変わったころだ。
「皇帝を引き継ぐのにすぐに答えを出すことはできないだろうが、こちらもあまり時間がないのでな。すぐに覚悟を決め、継承の証に自分の血を垂らしてくれ」
覚悟。
レオンスがどうするか決めかねていると――
大きな爆発音と建物を揺らすほどの地響きが起きる。
「ああ、それは調べたからな」
レオンスはあの情報を手に入れるのにかなりの労力を費やしていた。
「ルデアの防御装置は、この帝都の仕組みから着想を得て作り上げている。だからと言って帝都の要塞化がどんな機構なのかはわからないのだがな。この帝都自体が魔具であり、起動させることができるのは継承の証に認められたルダマンの血筋のみだ」
ルデアの防御装置の元ネタが帝都だったことには驚いたが、帝都自体が魔具であるという話にも驚きだ。
(そんなものが必要になることなんてあるのか……?)
永遠に起動しない物であるのなら、継承しなくても良いのではないかと思ってしまう。
「大戦争がいつ起きるかはわからない。明日かもしれないし、100年後かもしれない。だが、その時になって守れる手段を放棄して後悔するよりも手段を残しておいたほう何倍もいいと思わないか」
「それは大戦争が起きた場合の話だろ。起きなければ無用の長物だ」
「大戦争は再び起きる。これは確定事項だ」
「なぜ言い切れる」
「初代皇帝が《未来視》の《トランサー》だからだ。初代皇帝は大戦争を乗り越えた後に未来を視たそうだ。その時に再び大戦争が起きるのを視たそうだ。その時、初代皇帝はこの装置を残すことを決意したと記されている日記が残っている」
そんなことがあったのか。
「これを知っているのは皇帝を引き継ぐ者と信頼できる者のごく一部のみ。ここにいる者は皆知っているから問題ない。私が死んでも二人が口伝として残る」
宰相はルジアス皇帝に一礼して謝意を示す。
「これでお前に引き継ぐことができる」
ルジアス皇帝が言いたかったことは言い終えたようだ。
だが、レオンスはまだ整理できていなかった。
自分が皇帝になるという重圧。
反乱軍として行動するのとは訳が違う。
「俺は……」
「今のお前の周りには頼れる者が多いはずだ」
ルジアスは言外に自分とは違うと伝えたいのだろう。
たしかにレオンスに協力しているのは、イラス王国民が多いがルダマン帝国民もいた。
4年前にルジアス皇帝から受け取った信用できる者のリストを辿って協力関係を築けたルダマン帝国の貴族もいる。
ルジアス皇帝の言う通り、レオンスの周りには信頼できる者が多かった。
「私を処断すると同時に現在の中央貴族や腐った貴族どもも一緒に処断すれば、皇城に蔓延る膿を一斉に出すことができる。この機会を逃す手はない。それに私よりもルダマン帝国内を熟知している者が皇帝になる方が国のためにもなるはずだ。どうしようもない貴族もいただろう。そいつらを罰するには彼らより強い権力が必要だ」
ルジアス皇帝の言っていることが一番得なのはわかる。
レオンス自信が皇帝になれば、法律を改正することもできる。
皇城内だけでなく、排除するべき馬鹿貴族も多く知っている。
彼らも一掃できるだろう。
だが、自分が皇帝になるという踏ん切りがつかなかった。
「これは4年前に出した手紙の時から計画していたことか?」
「そうではないと言ったら嘘になるが、渡せると確信したのは、ここ1年ばかりのことだ」
1年前からレオンスたちの動きが活発化していた。
下準備がある程度完了して動き方が変わったころだ。
「皇帝を引き継ぐのにすぐに答えを出すことはできないだろうが、こちらもあまり時間がないのでな。すぐに覚悟を決め、継承の証に自分の血を垂らしてくれ」
覚悟。
レオンスがどうするか決めかねていると――
大きな爆発音と建物を揺らすほどの地響きが起きる。
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