修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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3章 ルダマン帝国編

第284話 帝都の力

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 レオンスが〝暗帝〟の状態を観察していると視線に気づいた。

 〝暗帝〟からの視線だ。

 視線とわずかな指の動きでレオンスは何となくだが、意図を察した。

 レオンスは再び腕を振る。

 さっきと同じようにジャックの周囲を魔法陣が囲む。

「またですか」

 ジャックは嘆息して、直立不動。

 魔法陣から放たれる電撃だったが、ジャックの体をすり抜けた。

「あまり芸がないと簡単に躱されますよ」

 別の場所からジェックの声が聞こえる。

 レオンスもこの攻撃が通用するとは思っていなかった。

「忠告どうも!」

 レオンスは三度、腕を振る。

 魔法陣がジャックを囲む。

 もう、三度目の同じ光景。

 ジャックも首を左右に振って呆れていた。

「だから、言っているじゃないですか。無駄だと――」

 ジャックがそう言ったとき、気づいたようだ。

 自分の片足に鎖が巻かれていることに。

「なるほど……」

 ジャックの視線は鎖に注がれ、その先に目が向く。

「私もただ倒されたわけじゃないのよ」

 〝暗帝〟がしっかりと鎖を握っていた。

「どうやって躱しているのかわからないけど、動けないんじゃ躱しようがないでしょ」

 〝暗帝〟の言葉とともにジャックの周囲に魔法陣から電撃が放たれる。

「はあ、できるだけ余力を残して置きたかったのですが、仕方がないですね」

 ジャックから放たれる気配が一段上がった気がした。

 ジャックは鎖の絡まった片足を上げて地面を踏みつける。

 瞬間、地面が割れ、石畳みが波打ち、周囲を吹き飛ばす衝撃波が放たれた。

「うっ……」

 衝撃波に耐えようとしたレオンスだったが、勢いに抗えず吹き飛ばされる。

 〝暗帝〟も堪えることはできなかった。

 ジャックを包囲していた魔法陣も無残に破壊され、足に絡まっていた鎖も粉々だった。

「色々と気になりますが、まずは目的が先ですね」

 ジャックはレオンスが動けないのを見て、当初の目的であるルジアスに標的を変えたようだ。

「くそ……」

 レオンスは地面に拳を叩きつけた。

 吹き飛んで壁にぶつかった衝撃で体の自由が効かない。

(まだ、色々と聞きたいことがあるんだ。今、殺されるわけにはいかない……)

「わ、私が相手――」

「邪魔をしないでもらいましょう」

 立ちはだかった宰相はジャックの剣で地に伏す。

 宰相では時間稼ぎにもならなかった。

「それでは死んでもらいましょう」

 ジャックがルジアスの眼前に辿り着くと、剣を大振りに振り下ろした。

 しかし、硬質な音が聞こえてきた。

 結界だ。

 ルジアスもレオンス同様、帝都の力を使えるのだろう。

 帝都の力さえあれば、守り切れるかに思われたが、レオンスの目にはその結界は脆弱に見えた。

 自分の頭の中にある結界とルジアスを守る結界には明らかに差があった。

「私も簡単には死ねない」

 ルジアスは強気を見せるが――

「そうですか。でも残念ですね。これぐらいなら――」

 ジャックは剣を突き刺した。

 結界にぶつかり、数瞬、剣の勢いは止まるが、呆気なく結界は砕かれた。

 剣はそのままルジアスの心臓をひと突き。

「ごふッ……継承を剥奪された者の結界では防げないか……」

 ルジアスの口元から血が溢れる。

 ジャックはその姿を見納めると、ルジアスに背を向けて、出口に足を向ける。

「少し気になることはありますが、私はこれで――」

 レオンスに一瞬、視線を向けるが、出口に向かうようだ。

 ジャックがそのままこの場を離れようとしたとき――

 ジャックの足元が吹き飛んだ。

 レオンスは咄嗟に帝都の力で確認するが、わからなかった。

「何が起きてるんだ?」

 土煙で視界が悪い中、聞き覚えのある声が聞こえる。

「やっぱり、お前か」

 土煙の中から姿を見せたのはルイだった。
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