311 / 338
3章 ルダマン帝国編
第311話 王都から脱出と新たな国境
しおりを挟む
琉海は風の精霊術で上昇したことで外壁を軽々と超える。
外壁の上で監視をしている兵士たちも上空を見ている者などいない。
監視に見つかることもなく、琉海は王都から脱出できた。
風の精霊術の効力を切ると上空から高度が落ちていく。
(この辺でいいか)
落下地点は誰もいない草原。
落下時もできるだけ音を立てないように風の精霊術で落下速度を減速。
ゆっくりと足を地面に着けた。
しばらくすると、リーリアがやってくる。
「大丈夫だった?」
「ああ、そっちは?」
「何も問題なかったわ」
念のため外傷がないかエアリスに確認してもらう。
『大丈夫そうよ』
『ありがとう』
上手く外壁を超えることができたようだ。
「さて、さっさと向かおうか」
思いがけない邪魔が入ってしまったが、琉海たちは目的のエルフの里へ向かう。
途中でスタント公爵領に立ち寄るのも頭に過ったが、兵士たちに包囲されていることが本当なら、余計に時間を取られるかもしれない。
琉海は、まずマルティアに会うことを優先した。
マルティアに会えば、ルダマン帝国へマルティアとリーリアに向かってもらい、琉海がスタント公爵領に向かうこともできる。
リーリアに案内されながら、休憩を挟みつつも走り続けてエルフの里に向かった。
スティルド王国を横断すると、その先の獣人の国――デトラル連合国との関所が見えてくる。
だが、琉海たちはそこを通れない。
指名手配されているようだからだ。
指名手配されていることを知らなければ、関所を通っていたかもしれない。
琉海たちは山岳部を挟むように建てられた関所から離れた場所から国境を超える予定だ。
リーリアが言うにはこの山岳部には獰猛な魔物がいるため、あまり関所以外の場所を通ることはしないようだ。
とはいえ、琉海たちに選択肢はない。
獰猛な魔物がいようとも、人通りの少ない山岳部を通るしかなかった。
琉海たちは誰も通らないような獣道からデトラル王国に入国する。
獣道を歩くだけの時は琉海がリーリアを背負っていた。
できるだけリーリアに魔力を温存してもらうためだ。
魔物がいつ襲ってくるかわからない獣道では、戦闘になった時にリーリアがガス欠では大けがを負うリスクがある。
最初は断っていたリーリアだが、琉海の説得で仕方なく首を縦に振った。
ケガをしているわけでもない状態で背負われているリーリアの顔は、若干赤くなっていた。
険しい道のりも琉海の膨大な魔力で乗り越えていく。
様々な魔物も襲てきたが、琉海の精霊術で撃退する。
魔物との戦闘でマナの生成に使う魔力の消耗が激しい。
休憩を挟みつつ山を登っていくが、魔力だけでなく精神力の消耗も激しかった。
1日で山を越えることは断念し、野宿することを選択した。
野宿する時はエアリスにも見張りを頼んだ。
実態化しなければそこまで魔力を消費しないからだ。
そうして野宿を過ごし、日が昇ればリーリアを背負って再び走り出す。
山の頂上にはデトラル連合国の砦がある。
琉海たちはそこから遠く離れた場所から山道を下った。
「ここからはデトラル連合国の村を渡ることになるんだけど……」
リーリアは琉海に視線を向ける。
「なんだ?」
「あんまり人間は好まれないのよ」
リーリアはそう言って自分の腕に付けているブレスレットを取り外して琉海に渡す。
「これって人間に化ける魔道具じゃなかったか?」
「正確には使用者が思った種族に姿を変えられる魔道具なのよ」
「へえ、そうだったのか」
「だから、これを使って。デトラル連合国ならエルフはあっちに比べて動きやすいから」
リーリアはそう言ってスティルド王国やルダマン帝国のある方へ視線を向ける。
「そうなのか……」
琉海はブレスレットを受け取り、自分の腕に付けてみる。
(さて、何に姿を変えればいいのか)
琉海はこの国の獣人族にはまだ会ったことがなかった。
元の世界で様々なキャラクターとして獣人族が描かれていたから想像はできるが、この世界で同じような獣人族が存在するかはわからない。
(となると、一番わかりやすい種族はこれしかないか)
琉海は変化の魔道具を起動する。
「どうだ?」
自分では効果がわからないので、リーリアに聞いてみる。
「ええ、ちゃんとエルフの姿に変わっているわ。これなら変に絡まれることもないわね」
「そうか、なら良かった」
ひとまず問題にならずにデトラル連合国内を動けそうだ。
琉海はエルフの姿を維持してリーリアと共にエルフの里を目指す。
外壁の上で監視をしている兵士たちも上空を見ている者などいない。
監視に見つかることもなく、琉海は王都から脱出できた。
風の精霊術の効力を切ると上空から高度が落ちていく。
(この辺でいいか)
落下地点は誰もいない草原。
落下時もできるだけ音を立てないように風の精霊術で落下速度を減速。
ゆっくりと足を地面に着けた。
しばらくすると、リーリアがやってくる。
「大丈夫だった?」
「ああ、そっちは?」
「何も問題なかったわ」
念のため外傷がないかエアリスに確認してもらう。
『大丈夫そうよ』
『ありがとう』
上手く外壁を超えることができたようだ。
「さて、さっさと向かおうか」
思いがけない邪魔が入ってしまったが、琉海たちは目的のエルフの里へ向かう。
途中でスタント公爵領に立ち寄るのも頭に過ったが、兵士たちに包囲されていることが本当なら、余計に時間を取られるかもしれない。
琉海は、まずマルティアに会うことを優先した。
マルティアに会えば、ルダマン帝国へマルティアとリーリアに向かってもらい、琉海がスタント公爵領に向かうこともできる。
リーリアに案内されながら、休憩を挟みつつも走り続けてエルフの里に向かった。
スティルド王国を横断すると、その先の獣人の国――デトラル連合国との関所が見えてくる。
だが、琉海たちはそこを通れない。
指名手配されているようだからだ。
指名手配されていることを知らなければ、関所を通っていたかもしれない。
琉海たちは山岳部を挟むように建てられた関所から離れた場所から国境を超える予定だ。
リーリアが言うにはこの山岳部には獰猛な魔物がいるため、あまり関所以外の場所を通ることはしないようだ。
とはいえ、琉海たちに選択肢はない。
獰猛な魔物がいようとも、人通りの少ない山岳部を通るしかなかった。
琉海たちは誰も通らないような獣道からデトラル王国に入国する。
獣道を歩くだけの時は琉海がリーリアを背負っていた。
できるだけリーリアに魔力を温存してもらうためだ。
魔物がいつ襲ってくるかわからない獣道では、戦闘になった時にリーリアがガス欠では大けがを負うリスクがある。
最初は断っていたリーリアだが、琉海の説得で仕方なく首を縦に振った。
ケガをしているわけでもない状態で背負われているリーリアの顔は、若干赤くなっていた。
険しい道のりも琉海の膨大な魔力で乗り越えていく。
様々な魔物も襲てきたが、琉海の精霊術で撃退する。
魔物との戦闘でマナの生成に使う魔力の消耗が激しい。
休憩を挟みつつ山を登っていくが、魔力だけでなく精神力の消耗も激しかった。
1日で山を越えることは断念し、野宿することを選択した。
野宿する時はエアリスにも見張りを頼んだ。
実態化しなければそこまで魔力を消費しないからだ。
そうして野宿を過ごし、日が昇ればリーリアを背負って再び走り出す。
山の頂上にはデトラル連合国の砦がある。
琉海たちはそこから遠く離れた場所から山道を下った。
「ここからはデトラル連合国の村を渡ることになるんだけど……」
リーリアは琉海に視線を向ける。
「なんだ?」
「あんまり人間は好まれないのよ」
リーリアはそう言って自分の腕に付けているブレスレットを取り外して琉海に渡す。
「これって人間に化ける魔道具じゃなかったか?」
「正確には使用者が思った種族に姿を変えられる魔道具なのよ」
「へえ、そうだったのか」
「だから、これを使って。デトラル連合国ならエルフはあっちに比べて動きやすいから」
リーリアはそう言ってスティルド王国やルダマン帝国のある方へ視線を向ける。
「そうなのか……」
琉海はブレスレットを受け取り、自分の腕に付けてみる。
(さて、何に姿を変えればいいのか)
琉海はこの国の獣人族にはまだ会ったことがなかった。
元の世界で様々なキャラクターとして獣人族が描かれていたから想像はできるが、この世界で同じような獣人族が存在するかはわからない。
(となると、一番わかりやすい種族はこれしかないか)
琉海は変化の魔道具を起動する。
「どうだ?」
自分では効果がわからないので、リーリアに聞いてみる。
「ええ、ちゃんとエルフの姿に変わっているわ。これなら変に絡まれることもないわね」
「そうか、なら良かった」
ひとまず問題にならずにデトラル連合国内を動けそうだ。
琉海はエルフの姿を維持してリーリアと共にエルフの里を目指す。
20
あなたにおすすめの小説
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
スキル生成で異世界ハーレム冒険
仙道
ファンタジー
行宗 冬夜(ゆきむね とうや)は、異世界に転移した。そして気付いた。
「スキル生成……?」
村娘、女剣士とハーレムを作りながら、このスキルを使って冒険を楽しむことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる