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3章 ルダマン帝国編
第328話 王都からの脱出
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「どうでしたか?」
「聞かなくてもわかるでしょ。救いようのない連中だったわ」
「そうですか。では、これからはどういたしましょうか?」
「まずは王都から離れるわ。追いかけ回されるのは鬱陶しいから」
「承知いたしました」
エリザたちが王宮の外に出るところで近づいてくる人影がいた。
アルディが身構えるが、その必要はないと判断したのか、エリザより一歩下がる。
「王都から出られるのですか?」
近づいて来た人影はクレイシア王女だった。
「はい。申し訳ありませんが、約束のお願いについては、少し時間を置いてからになりそうです」
「気に病む必要はありません。今、その約束を果たしていただければ問題ありませんので」
「今ですか?」
「はい。今です」
エリザは周囲を確認する。
周りには誰もいない。
王宮内とはいえ、王女には侍女なり兵士なりが近くにいるものだが、いないことに違和感を覚える。
(罠?)
さっき対立したエリックの妹だ。
何かを企てているのではないかと思ってしまう。
「これ以上、ひどくなる王宮に留まるわけにはいかないんです」
クレイシア王女の目に必死さを感じる。
クレイシア王女も王位継承権を持っている。
エリックが最大の権力である王権を掌握したいと思っているのであれば、クレイシア王女は邪魔な存在なのかもしれない。
「わかりました。一緒に来てください」
エリザはクレイシア王女も連れて行くことにした。
アルディが先行して馬車を王宮の入り口まで持ってくる。
「急いでください。まだ門番には情報が行っていないようですが、時間の問題です」
御者台に座るアルディが言う。
エリザとクレイシアが馬車に乗り込み――
「全速力で構わないわ」
「承知しました」
アルディが手綱で馬に合図を送り、走らせた。
王宮の城門を通る瞬間に兵士に止められるかと思ったが、そんなことは起こらず通り抜ける。
「屋敷に戻る道でよろしいでしょうか」
「ええ、それで良いわ。あと、屋敷に着いたらスタント公爵領にいるタラントに早馬でエリック王子と対立したことを連絡するようにお願いできる?」
「馬もあるので旦那様へ早馬を送れるかと思います」
「じゃあ、それでお願い。あとはティニアたちを回収したらすぐに王都を出るわ。王女殿下、少し寄り道をしてしまいますが、ご容赦ください」
「はい。私も外に出して欲しいと頼んでいる身ですので、構いません」
「ありがとうございます」
「では、お屋敷へ向かってすぐに王都を出ましょう」
アルディはスタント公爵家の屋敷に向かう。
ここからは時間との勝負だ。
王都の防壁門が閉じられたら、出るのが非常に難しくなる。
エリザたちは屋敷に着くなり、ティニア達を呼ぶ。
「無事だったんですね」
無事だったことに喜び、エリザに駆け寄ってくるティニア。
「喜んでいる暇はないわ。すぐに王都を出るから。アンジュ、もう一台馬車を用意して」
「承知しました」
アンジュは馬車を取りに向かう。
「どうしたの?」
騒がしくなったことで静華やトウカが、さらに後ろからクリューカもやってくる。
「3人には悪いけど、王都から出る必要が出来たわ。ここに残ってもいいけど、王宮の連中がここに来るでしょうから、面倒事になりかねないわ」
「事前に王都を離れることは、ティニアから聞いています。ここに留まれば、色々と狙われかねないことも聞きました。三人で相談して、私たちも付いていくことにしました」
静華はティニアから事前に情報を共有してもらっていたようだ。
「だったら、出る準備をして。すぐに馬車を出すから乗り遅れないで」
「わかりました」
静華たちはすぐに自室へ戻っていく。
エリザも屋敷の従事員たちに王都の屋敷から離れて、スタント公爵領の屋敷に行くように説明した。
説明を終えたエリザは馬車に戻る。
全員が馬車に乗り込んでいるのを確認し、エリザたちは王都の防壁門へ向かった。
万が一のためにクレイシア王女にはフードを被ってもらっておく。
馬車2台の御者はアンジュとアルディだ。
防壁門に近づくに連れて緊張感が高まる。
呼び止められれば、エルザは強硬突破も辞さない覚悟でいた。
だが、その覚悟とは裏腹に呼び止められることなく、防壁門を通過した。
まだ防壁門の守衛には情報が入っていないのだろう。
エリザたちは息を深く吐いて緊張を解く。
「このまま、スタント公爵領に向かいます」
「ええ、それでお願い」
馬車はスタント公爵領に向かって走り出した。
スタント公爵領には馬車で4日はかかる。
本来であれば道中は町などで宿泊をしながら向かうのだが、エリックの配下となった者たちがどこまで手を伸ばしているかわからない。
大きな町は避けてできるだけ小規模の町を通るようにした。
小さい町でも狙われる可能性があったが、小さい町に常駐している兵士の数ぐらいなら返り討ちにできる。
そういった目算でスタント公爵領を目指した。
「聞かなくてもわかるでしょ。救いようのない連中だったわ」
「そうですか。では、これからはどういたしましょうか?」
「まずは王都から離れるわ。追いかけ回されるのは鬱陶しいから」
「承知いたしました」
エリザたちが王宮の外に出るところで近づいてくる人影がいた。
アルディが身構えるが、その必要はないと判断したのか、エリザより一歩下がる。
「王都から出られるのですか?」
近づいて来た人影はクレイシア王女だった。
「はい。申し訳ありませんが、約束のお願いについては、少し時間を置いてからになりそうです」
「気に病む必要はありません。今、その約束を果たしていただければ問題ありませんので」
「今ですか?」
「はい。今です」
エリザは周囲を確認する。
周りには誰もいない。
王宮内とはいえ、王女には侍女なり兵士なりが近くにいるものだが、いないことに違和感を覚える。
(罠?)
さっき対立したエリックの妹だ。
何かを企てているのではないかと思ってしまう。
「これ以上、ひどくなる王宮に留まるわけにはいかないんです」
クレイシア王女の目に必死さを感じる。
クレイシア王女も王位継承権を持っている。
エリックが最大の権力である王権を掌握したいと思っているのであれば、クレイシア王女は邪魔な存在なのかもしれない。
「わかりました。一緒に来てください」
エリザはクレイシア王女も連れて行くことにした。
アルディが先行して馬車を王宮の入り口まで持ってくる。
「急いでください。まだ門番には情報が行っていないようですが、時間の問題です」
御者台に座るアルディが言う。
エリザとクレイシアが馬車に乗り込み――
「全速力で構わないわ」
「承知しました」
アルディが手綱で馬に合図を送り、走らせた。
王宮の城門を通る瞬間に兵士に止められるかと思ったが、そんなことは起こらず通り抜ける。
「屋敷に戻る道でよろしいでしょうか」
「ええ、それで良いわ。あと、屋敷に着いたらスタント公爵領にいるタラントに早馬でエリック王子と対立したことを連絡するようにお願いできる?」
「馬もあるので旦那様へ早馬を送れるかと思います」
「じゃあ、それでお願い。あとはティニアたちを回収したらすぐに王都を出るわ。王女殿下、少し寄り道をしてしまいますが、ご容赦ください」
「はい。私も外に出して欲しいと頼んでいる身ですので、構いません」
「ありがとうございます」
「では、お屋敷へ向かってすぐに王都を出ましょう」
アルディはスタント公爵家の屋敷に向かう。
ここからは時間との勝負だ。
王都の防壁門が閉じられたら、出るのが非常に難しくなる。
エリザたちは屋敷に着くなり、ティニア達を呼ぶ。
「無事だったんですね」
無事だったことに喜び、エリザに駆け寄ってくるティニア。
「喜んでいる暇はないわ。すぐに王都を出るから。アンジュ、もう一台馬車を用意して」
「承知しました」
アンジュは馬車を取りに向かう。
「どうしたの?」
騒がしくなったことで静華やトウカが、さらに後ろからクリューカもやってくる。
「3人には悪いけど、王都から出る必要が出来たわ。ここに残ってもいいけど、王宮の連中がここに来るでしょうから、面倒事になりかねないわ」
「事前に王都を離れることは、ティニアから聞いています。ここに留まれば、色々と狙われかねないことも聞きました。三人で相談して、私たちも付いていくことにしました」
静華はティニアから事前に情報を共有してもらっていたようだ。
「だったら、出る準備をして。すぐに馬車を出すから乗り遅れないで」
「わかりました」
静華たちはすぐに自室へ戻っていく。
エリザも屋敷の従事員たちに王都の屋敷から離れて、スタント公爵領の屋敷に行くように説明した。
説明を終えたエリザは馬車に戻る。
全員が馬車に乗り込んでいるのを確認し、エリザたちは王都の防壁門へ向かった。
万が一のためにクレイシア王女にはフードを被ってもらっておく。
馬車2台の御者はアンジュとアルディだ。
防壁門に近づくに連れて緊張感が高まる。
呼び止められれば、エルザは強硬突破も辞さない覚悟でいた。
だが、その覚悟とは裏腹に呼び止められることなく、防壁門を通過した。
まだ防壁門の守衛には情報が入っていないのだろう。
エリザたちは息を深く吐いて緊張を解く。
「このまま、スタント公爵領に向かいます」
「ええ、それでお願い」
馬車はスタント公爵領に向かって走り出した。
スタント公爵領には馬車で4日はかかる。
本来であれば道中は町などで宿泊をしながら向かうのだが、エリックの配下となった者たちがどこまで手を伸ばしているかわからない。
大きな町は避けてできるだけ小規模の町を通るようにした。
小さい町でも狙われる可能性があったが、小さい町に常駐している兵士の数ぐらいなら返り討ちにできる。
そういった目算でスタント公爵領を目指した。
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