#.『古代』の異世界生活

鉄仮面

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N-1:プロローグ 出会いは突然に。

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貴方あなたに生前の記憶はいりませんでしょう」

  
  頭の中に響く声、僕は夢の中にでもいるのだろうか? そこが疑問なのだけども。

  目を閉じているのか、それとも真っ暗闇の中で身動きが取れないのか、手足の感覚がない。

  それよりも、いきなりに『記憶はいりませんね』と言われるのは不思議な話だ。

  「ちょっと、少しくらいは……駄目ですか?」

  生前の記憶というのが曖昧あいまいな線引きであって、どこからどこまでの……ちょっと待てよ。

  『生前』という事は僕は死んだという事?

  「あの、僕は死んだという認識でいいのですか?」

  頭の中に聴こえる声に返答を求めるも、何も返事が返ってこない。

  「そこだけでも教えてくれると助かるのですけど……」

  声の主は不明だ。最初に聴こえた声も、性別の判別がつかないほどに濁っている。

  「あの!」
  「生前というのは少々語弊ごへいがありますね。肉体も魂も生きているのですから、生前と言うよりは、死に目にあったところをすくったと言うべきでしょうか」

  なんともアバウトな……なんだか投げ槍になってないかな?

  「さぁ、お行きなさい。貴方あなたに救いを求める者達を救済きゅうさいするのです」

  ……『と、言われましても』と言い返したくなってしまう程に加減かげんのない言葉だ。

  
  気が付くと僕は空を見上げていた。蒼い空に風に流される雲と太陽の日差しが眩しい。

  両手、両足を広げて地面に大の字に仰向あおむけの状態で気が付くと、上半身を起こす。

 まぁ、お腹の肉が邪魔で起き上がるのには一苦労ひとくろうするのだけど。

  ゆっくりと上半身を起こして、周りを確認してみる。

  なんだか空地みたいなところだな……青々としげっている草もあれば、歳をとったかのようにこうべらして腰のない枯草かれくさ

  ちょっと先に見えるのは家だろうか? それにしてもここから見てもボロボロな外観がいかんで今にも崩れてしまいそう。

  『あなたは?』

  え、誰!? また、頭の中に声が聴こえる……あ、でも、なんだか甲高かんだかくて優しそうな声――いやいやいや! ちょっと待って。まさか、この荒地にむ幽霊とかじゃないよね!?

  『ねぇ……』

  あああああ、聴こえる、確かに聴こえる。

  頭を抱えて心の中で何度も念仏を唱えながら焦っていた。

  そりゃ、焦りもしますよ!

  「ひっ!!」

  僕の背中に何かがれる感触が……。

  ホラーって駄目なんだよ! 助けて、助けて! 僕は神に誓って悪い事はしていません!!

  ゆっくりと背中をなぞるように、感触は背中を登ってくる……。

  すると、僕の右肩にポンッと白く透き通った手がのると、恐怖の限界値は限界を突破する。

  「誰かいるの!?」

  勇気をふり絞って、僕は後ろを振り返る。

  目線の先には霞色かすみいろの髪の少女が一人。

  こちらを不思議そうに見つめる。僕も彼女が不思議に思えて首を右にかたむけるも、少女も真似をしてか左に首を傾ける。

  「えっと……僕はマルって言うんだけど」
  『あなたはマル。私はリコテ』

  取敢とりあえずは自己紹介も済ませておいて……。ん? どうして急に目をらして物悲ものがなしそうな表情をするのだろう?

  もしかして……いや、仮説を立てたとしても、それはあまりも残酷ざんこくな現実を見るわけで、しかし、もし本当だとしたら――それに顔もすすけて汚れている。頬もコケて白く汚れたノースリーブから見える鎖骨さこつやら肩から腕にかけて骨が浮き上がってしまってる。

  もしかしなくても……。

  「リコテ、君はここに住んでるの?」

  するとリコテは僕に抱きついてくる。その速さは音速を超えたといってもいい、それくらいの速さで僕のお腹に頭を擦り付ける。

  『うん……皆と住んでる』

  のどが振るえる声で、弱々しく、今にも泣きそうな――いや、実際には泣いていた。

  お腹の中で静かに泣く少女の姿に僕はうれいた気持ちで頭を撫でる。

  だが、何か感触が……よくよくリコテの頭を見てみると、ワラワラといているシラミ。

  これは何とかしないと。
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