#.『古代』の異世界生活

鉄仮面

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N-2:まずは身だしなみから、驚きの事実。

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  僕のお腹の中で泣くリコテ。

  「リコテ、ちょっと待ってね。聞いてもいいかな?」
  『……なに?」
  「うん、お風呂に入ったのはいつかな?」
  『お、おふろ……おふろって何?』

  そうきたかぁ! それは想定外そうていがいだ。

  「いや、あの、ほらね、『あー、いい湯だなぁ』ってやつ」

  人差し指を立てて、こういう事ねと説明するけども、リコテは不思議そうにこちらを見つめる。

  『意味がわからない』
  「うん、ごめん。言ってる僕も意味が分からない……」

  リコテは考える様子で空に視線を向けると。何かを察したのか、頷いてみせる。

  『水浴び?』

  おお、ドンピシャな答えが返ってきたぞ!

  「そう! それ!」
  『水浴びは冷たいからあまり好きじゃない』

  確かに暖かいのだけど、全身を水で洗うのは少々こくかもしれない。

  「そうだなぁ……じゃぁ、髪だけ洗うのはどうだろう?」
  『それなら……うん、大丈夫かも』
  「そかそか――! ちょっと待ってよー」

  僕は自分のだと知っている緑色の登山用のリュックを開いて石鹸とタオルを取り出した。

  この辺の記憶は残っているのか。取敢とりあえず、名前とリュックの中身は知っているだけでもありがたい。

  「リコテ、水ってあるかな?」
  『うん、井戸があるから』
  「それは助かるよ、井戸を教えてくれるかな?」

  リコテは立ち上がり、手を差し伸べて来ると、僕はその手をとって立ち上がるも、僕があまりにも重すぎたために、リコテを引き寄せて一緒に倒れ込んでしまう。

  いたた……、リコテは僕の脂肪がクッションになって怪我けがはないようだ。

  「ごめんね、僕が重すぎたせいだ」
  『ううん、この柔らかいお肉があった』

  ふふ……そうね『お肉』ね。うん、そうだよ100キロもある体重でポヨンポヨンの柔らかクッションだよ。

  リコテが先に立ち上がると、僕も一緒になって立ち上がり、リコテは手を広げて僕に手をつなぐことを求めてくる。

  手を繋いで、僕はリコテにみちびかれるように井戸のある方向へ歩いて行った。

  その間にも思う事も沢山あった。繋がれた手から感じる感触は柔らかくなく、骨が皮越かわごしに伝わってくる。それに井戸へ向かう道筋の端に見える家はどう見ても住むには難しい廃屋はいおくだ。半壊し、納屋なやみたいな箇所はかろうじて原型をとどめている。

  井戸に辿り着くと、リコテは手を放して、井戸の水を汲み上げようと必死につなを引っ張るが、どう見ても今のリコテにとっては重労働だ。

  「リコテ、僕がするから」

  急いでリコテの元に駆け寄って綱を引き、水を汲み上げると、地面に置かれた幾つもの空のおけに水を入れて、髪を洗う準備をする。

  「これで良し、とはいったものの……どうやって髪を洗うかとういう難点が存在する」
  『髪を洗うのなら……頭から水を――』
  「うん! それはやめようね!」

  即答でした。

  「えっと、頭を前にだす姿勢だから……」

  僕は膝を折り曲げて、頭を差し出すように首を伸ばして、リコテに手本を見せるとリコテは頷いて、同じポーズで待機してくれる。

  「うん、ちょっと苦しいかもしれないけど、そのままの姿勢でいてね」
  『わかった』

  すぐにこの体勢から解放してあげたい。だけど、シラミの卵が残らないようにしないと、今の生活を見るかぎりでは、また直ぐにシラミが沸いてしまう。

  両手を水にひたして、髪にペタペタと水をつけていき、髪の毛全体が水っぽく湿ると、石鹸を泡立てる。今度は泡を同じ要領ようりょうで泡を着けていき、もう一度石鹸を泡立たせて、ゆっくり髪を洗っていく。

  ゆっくり、丁寧に……石鹸だけでは髪をいためてしまうけど、今は清潔にして髪の毛だけでも。

  「リコテ、大丈夫かな?」
  『大丈夫』

  よしよし、全体が洗えてきたぞ。これでまずは濡らした手で軽く泡を落としていって――。ここで、一気に洗い流す。

  泡を落とした後に、水を少量だけ髪にチョロチョロと流して、タオルを頭にかける。

  「うん、これで綺麗になった」

  満足気まんぞくげに浸る中で、リコテは頭に掛けられたタオルで髪を拭きながら見せる表情は、どこか不思議そうだ。

  「どうしたの?」
  『ん、これ、ふわふわして気持ちいい』
  「タオルの事?」
  『たおる……うん、この布が気持ちいい』

  タオルという意味は通じない、なるほど。

  まぁ、それはいいとして、髪を洗った後の感想はどうだろうか? 憶測おくそくではあるけど、頭はかゆかったのだと思う。

  「あのリコテ、髪はスッキリした? 痒みとかは無くなったかな?」
  『うん、なんだかすーすーして気持ちいい』
  「それは良かった。よく拭いてね」
  『わかった』

  リコテは髪を拭き終えると、今度は濡れた顔をタオルで拭いて、こちらに顔を見せた。

  顔を拭き終わったリコテの顔を見た瞬間に僕の体にビリビリとした電流が走る。

  頬はコケていても、ハッキリとした輪郭りんかくに、つやのある綺麗な霞色かすみいろの髪の毛。大きな目に二重ふたえの効果でさらに強調される栗色の瞳。痩せてはいるけど白く透き通った肌――。

  間違いなく『美少女』といった言葉が似合うリコテの姿。年齢は推定すいていで16歳程度の外見。

  「リコテは美人さんだね」
  『びじん? びじんってなに?』

  そこからかぁ……んー、という事はこの外見で、それなりの年齢での語力ごりょくという事は教育というもの? 教養? どちらでもいいけど。何か教えられる事は出来ないだろうか。
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