魔王、育てます! 〜俺のことが大好きな超絶可愛いロリっ子魔王様と一緒に世界征服イチャラブライフ!〜

イルティ=ノア

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第一章 魔王と英雄

#004 魔王、アリシア その2

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『ありがとう! 余はライアが大好きだ!』

 アリシアの言葉を思い出し、一人ニヤリと笑う俺。

「えへへぇ、俺もアリシアのことが大好きだぜ……」

 しかしアリシアとは別行動中である。

 今はアリシアの命令で、街で魔族に襲われてる人間を助けている最中だ。
 ついでに話の通じる魔獣人から”あること”を聞き出さなければならない。

「アリシアに任せられた初めての仕事だ、絶対にやり遂げないとな」

 俺は気合を入れ直して、辺りを見渡す。

 魔獣の指揮は魔獣人レベルでなければ取ることはできない。
 そして魔獣は未だに統率が乱れた様子もなく、街を襲い続けている。
 
「さっきの魔獣人は倒しちまったが、他の奴ボコして話を聞けばまあいっか」

 今後の方針が決まったので、後は動き出すだけだ。
 そう思った瞬間、

「ん?」
「我々の邪魔をしているのは貴様だな?」

 空中から、ドスの効いた恐ろしい雰囲気の声が聞こえてくる。

 見上げると、俺の頭上に空を覆う黒い影を発見した。
 さっきの魔獣人より数倍デカい、翼を広げて空を飛ぶ蝙蝠型の魔獣人だ。

「人間如き下等生物が我々魔族に逆らった罪、万死に値する」

 蝙蝠男が俺の目の前に降り立ち、顔をドアップで近づけながら威圧するように言う、

「さて、どうしてくれようか? 男の肉は不味い、食うなら女の肉が良いのだが……」
「ちょうどいいや。ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、話だけ聞いてくんない?」

 気さくにフレンドリーに俺が尋ねると、

「ふざけるな! なんだその態度は! 人間如きが我と対等に会話できるとでも思っているのか! この間抜けが!」

 ブチギレたように、翼を大きく広げた威嚇の態勢で捲し立てる蝙蝠男。

「蜘蛛男を倒したくらいで調子に乗っているようだが、現実を教えてやろう! 我は奴の十倍は強いぞ? 我はこの街を攻める魔獣と魔獣人を総括する、最強の魔獣人なのだ!」

 言いながら、口を上下にガッと開いて食らい付いてくる蝙蝠男。

「貴様のことは頭から丸齧りにしてやる! 死ねぇい!」

 バクン!
 
 蝙蝠男の強靭な顎が空を食らう。
 口が閉じる直前、俺は後方にステップして捕食を回避した。
 
 それでも諦めず口を大きく開けて、俺めがけて突進してくる蝙蝠男。
 俺は若干焦りつつも、冷静に話を続ける

「悪い悪い、怒らせちまったなら謝るからさ」
「知ったことか! 貴様は黙って我に食われて終えば良いのだ!」

 怒鳴りながら噛み付いてくる蝙蝠男。

「しゃあねぇな……」

 このままじゃ埒が明かないので、少し荒っぽい手を使わせてもらう。

 蝙蝠男が勢いよく口を閉じる瞬間に、横へステップして噛みつきを回避。
 そのまま蝙蝠男のデカい鼻頭を、軽く下へ向けて殴りつけた。

「イデッ!?」

 地面に顎を強打し、マジに痛そうな顔で苦しむ蝙蝠男。

 これでしばらく動き回ることはできないだろう。
 すかさず俺が質問する。

「ちょっとごめんな。、俺ら”黒い魔族”ってのを探してるんだ。この街の近くにいるそうなんだが、何か情報持ってない?」」

 そういやコイツも黒っぽいよなと考えていると、蝙蝠が返答する。
 
「黒い魔族、か……教えてやってもいいが、貴様はそれを知ってどうするつもりだ?」

 ビンゴ、どうやら蝙蝠男は何か情報を持っているらしい。
 
「教えてくれたら生かして見逃してやるけど、どうする?」
「質問を質問で返すなバカ者めがッッッ!」

 蝙蝠男が突然大声を上げたかと思うと、俺の全身を縛り上げるような感覚が襲う。

 見ると、足元の地面から伸びる黒い触手みたいなモノが、俺の全身に絡み付いて動きを制限されていた。

 そんな俺の様子を嘲笑いながら、蝙蝠が続ける。

「それは我の”体毛”だ! 我は全身の体毛を強化し、自在に操ることができる能力を持っている!」
「なんつーか地味な能力だな」

 俺が言うと、更に激昂した様子で蝙蝠が立ち上がる。

「魔族をコケにするにするのもいい加減にしろよ人間がぁ! 我の体毛の真の恐ろしさは、絡み付いた対象から魔力を吸い取ることできるのだ!」

 蝙蝠が言う通り、何だか全身から魔力が抜けていくのを感じる。

「なるほど。ただの人間ならすぐに魔力を全部吸い取られて、動けなくなっていたかもしれないな。けど、今の俺は生前とは一味違うんだ」

 俺がニヤリと笑みを浮かべながら言うと、”それ”に気がついた様子の蝙蝠が驚愕の表情で言葉を発する。

「……待て、この魔力……人間の魔力じゃない! 雰囲気は人間そのものだというのに、貴様……そんな、まさか!」

 ブチィ!

 楽々と蝙蝠の体毛を引き千切って拘束から抜け出す俺。
 
「単純な魔力量なら、人間より魔族の方が上なのは当たり前だよな?」

 吸い取られても尚、全身から溢れんばかりに魔力を滾らせながら俺が言う。

「俺は”魔神《まじん》”だ。魔族の最上位種。つまり、テメェら魔獣人とは生物としての”格”が違うんだよ」
「ま、魔神だと!? バ、バカな! ありえん!」

 驚いた様子で震えた声を出しながら、徐々に後退りする蝙蝠。

「どうして貴様が人間を守る! 魔族は人間を支配するべき存在だ! 魔王様の命を忘れたか!」
「その”魔王様”の命で俺は人間を守ってるんだよ」

 俺が言うと、呆気に取られた顔でキョトンとする蝙蝠。

「……え?」
「ま、理解できないなら本人の口から聞いてみろよ」

 ドォン!

 突然、蝙蝠の背後に何かが落下したような音と衝撃で砂煙が舞った。
 恐る恐る背後を振り返り、落下物の正体を確認した蝙蝠が恐怖で硬直する。

「まっ……ままっまままっ、まままままままま!?」

 震えながら声を出すことしかできない蝙蝠の真横を素通りし、俺の元までやってくる落下物の正体。
  
 それは小さく可愛い女の子、魔王のアリシアだった。

「ライアー!」
「アリシアー!」

 たった数分間の別行動をとっていた俺とアリシアだったが、数年ぶりに再開したような熱い抱擁でお互いに再会を喜び合うのであった。
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