神子様の捧げ物が降らす激雨の愛

岡本波瑠

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第一章 ルシュディーと俺

上向く心に落ちる一雫

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 それは、俺の心とリンクしていて、外から聞こえる雨音が段々と小さくなる。
 緩やかな雨と夕日。

 使用人の言葉によって傷つけられた心に、痛みをいやしてくれるような言葉の雨が降り注ぐ。
 鼻の奥がツンと痛くなって、ずっと燻っていた悲しみが消えていく。

「ああ、さすが神子様だな。美しい陽の光だ」

 心がいっぱいになって話せないでいた俺に、ニヤリと笑った殿下が言った。

「殿下、ありがとうございます。とても……ええ、とても嬉しいです」

 殿下の悪い笑みにつられて、俺も笑みを向ける。どんよりした気分が、たちまち明るくなった。
 
国を背負う第二王子にとって、俺の機嫌取りなど児戯に等しいのだろう。

 それでも嬉しくて、ルシュディーとして神子として褒めて貰った事が、嬉しかった。
 自分はなんて単純な男なのだろう、と思わず苦笑いを浮かべてしまうほどに。きっと殿下には扱いやすい神子だと思われただろうが、それでも構わないくらいに今の俺は浮かれていた。


「もし……宮殿が窮屈ならば、次の社交界シーズンが終わった後、領地の視察に同行するか?」

 突然、殿下が提案してきた。

「視察ですか?」
「ああ、隣国の国境付近を領地に持つ辺境伯領と、貿易の要を担う伯爵領へ視察に向かうのだが、お前の息抜きにもなるだろう」

 威風堂々とした殿下の態度の中に、少しだけ気遣いが見受けられる。
 俺を誘うなんて、きっと何か頼み事か厄介ごとが隠れているはずだ。俺は数年間、殿下に放置されている神子。何か使える手立てが見つかったから、こうして声をかけてくれたのだろう。

 俺は少しだけ残念に思いながら、その誘いを受けることにした。心を救われた礼はしなければならない。

「喜んでお受けいたします。自分の知見を広げるため、このような機会を与えていただいたこと、感謝申し上げます」
「そうか、ならば。大人数になるな。手配は此方で済ませておこう。お前は今日はゆっくりと休むがよい」

 そう言って、颯爽と立ち上がり部屋から去っていく。大事そうに手元へ抱えた袋には、俺の編んだレースが丁寧に仕舞われていた。

 すっかり晴れてしまった窓の外には、上機嫌な俺の心のように七色の虹がかかっていたのだった。


1章 [完]
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