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本編
一体どうしてこんなことに?―3
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女の子は十歳そこそこでしょうか。顔立ちは丸くとてもかわいらしいのに、わたくしを見つめる目が据わっています。
「星の託宣は神聖なもの……」
女の子はドアの陰に半分隠れたまま、ぶつぶつと独り言のように言いました。
「利用するものには天罰が下る……」
「……え、えっと、あの」
「我は天にかわって罰を下す者。偽巫女にはふさわしき刑を」
天罰? 偽巫女?
何だか……最近同じようなことを何度も聞いているような、いないような。
「痛っ」
思い出しかけて、すぐに思考が四散しました。ここに来てねずみの爪がわたくしの足を引っ掻いたのです。
わたくしは反射的にねずみを蹴飛ばしてしまいました。チィ! という鳴き声と、生き物の感触がしました。罪悪感やら恐怖やらでもう訳が分かりません。
「お願い! このねずみを何とかして……!」
わたくしは女の子に向かって叫びました。どこの誰だかも分かりませんが、もうなりふり構ってはいられません。
……とりあえず騎士本人ではありませんし。
「反省、してる?」
女の子はなおも繰り返します。
「は、反省って何のことですか?」
「偽託宣を下した罪。巫女という立場を利用した罪。そして勇者の片腕たる騎士をだました罪」
「――」
……勇者の片腕である騎士を……
『だました罪』?
(騎士ヴァイスのこと?)
勇者一行に『騎士』の肩書きを持つ者は彼以外におりませんから、きっとそうなのでしょう。
でも……だます?
(わたくしが騎士を?)
そうでした。託宣を下してからこのひと月、わたくしはずっとそんな中傷にさらされているのです。
あの託宣は嘘なんかじゃない。そう叫んだとしたら――今度は困るのはわたくしです。何しろ、託宣に一番反抗しているのは、他ならぬわたくしなのですから。
だから、言われるままになっていました。仕方がないと諦め始めていました。託宣が間違いであったらと、むしろ願ってきました。
ですが……
嘘の託宣と疑われた上で、この身を害されるというのなら、話は別です!
「わたくしは偽託宣を下した覚えはありません。巫女の立場を利用などしていません。そして騎士ヴァイスをだましてもおりません」
だから、反省などできません。
思い切って言ってみると、女の子は目に見えてふくれっ面になりました。とても子どもらしい顔で。
「なぜ言うことを聞かない。これ以上お兄ちゃんにつきまとわないで!」
「お兄ちゃん……?」
驚きました。では、この女の子は――。
『妹は人形遣いなんだ』
騎士ヴァイスはたしかにそう言っていました。さっきからそれが引っかかっていたのです。でも……
目の前の女の子があまりに若かったので、すぐに『妹』とは思い至らなかったのです。
たぶん十五歳くらいは離れているのでしょうか? 少し暴走気味なところなどは、騎士の妹らしいと言えるでしょうか。
それにしても――人形遣いということは。
「このねずみはあなたが動かしているのね。どうか、やめてくれませんか」
「安心して。このねずみの爪に毒はない」
「いえ、そういう問題ではなくて……」
女の子の目つきはわたくしをにらみつけたまま。
困りました、一体どうしたら満足してくれるのでしょうか?
引っかかれた足がちりちりと痛みます。上手に話さなくては、この痛みが増えてしまいます。
(反省、すればいい……?)
なぜわたくしが、と思った直後、名案が天啓のように閃きました。
わたくしは顔を輝かせ、言いました。
「分かりました、もう今後一切お兄様とは関わりません! 心から反省してそれを守ろうと思うので、どうかお兄様にもそうお伝えください」
「嘘くさい」
びし、と妹さんはわたくしに指をつきつけました。「星の巫女が嘘をつくとは何事か」
「そんな。嘘なんかじゃ」
「そんなにお兄ちゃんが好きなの」
「いえ全くこれっぽっちも」
「嘘をつくんじゃない」
ええええ……
この子は結局何を求めているのでしょう? お兄さんを好きと言わせたいのか、お兄さんから引き離したいのか。
妹さんはようやくドア陰から姿を現しました。
胸に、人形のようなものを抱いています。人型の人形でしょうか? ねずみの精巧さとは打って変わって、まるで藁束をたばねて四肢と胴体を作っただけのような怪しい人形です。
それをしっかり抱きしめたまま、わたくしのほうまで近づいてきます。どことなく足下がおぼつかないのですが、大丈夫なのでしょうか。
「あくまでしらをきるつもりなのね。こうなればもう一つ刑を追加します」
「ちょ、ちょっと待って。わたくしの話も聞いて」
「天国のお母様お許しください。ソラは鬼になります。お兄ちゃんに近づく悪女を今ここで祓います」
突然上空に顔を向けて祈る妹さん。お名前はソラさんと言うのでしょうか。
「――?」
わたくしはふと、その言葉の内容が気になりました。
不謹慎とは思いつつ……おずおずと尋ねてみます。
「あの……お母様は?」
すると、ソラさんはわたくしをにらみつけました。
「母は五年前に魔物に殺された。それが勇者一行が旅立つきっかけだった。この国の常識、そんなことも知らないの」
「――」
五年前と言えば、わたくしはまだ隣町の実家で暮らしていました。だから王都のことには詳しくありません。
けれど、
(そう言えば……勇者様の近しい人が亡くなって、それが魔王討伐のきっかけになったって)
シェーラから、そんな話は聞いていました。
勇者様にはご両親がいません。だから、幼なじみの騎士の親御さんが、親代わりのようなものだったとか。
でも彼女はそれ以上詳しく話してくれませんでした。気まぐれなのか、何かを遠慮していたのか――。
「そう……」
わたくしは急激に心が落ち込むのに気づきました。
(騎士ヴァイスにお母上はいない。……そんなことも知らなかった)
それどころかわたくしは騎士のことをほとんど知りません。
当然と言えば当然です。知ろうと思うどころか、縁を切ろうとしてきたのですから。
二度と顔を見たくないと何度思ったことか。そんな相手の事情など知る必要はありません。知ってはいけません。
知れば――情が湧きます。
(あ、あの人だって、わたくしのことをろくに知ろうとしていない。修道院のしきたりさえ知らなかったんだから、おあいこで――)
……いつの間にか。
言い訳じみた言葉ばかり連ねていることに気づき、わたくしははたと止まりました。
そして、さらに落ち込みました。――相手をおとしめてまで、なんてみっともない心の動き。
もう認めてしまいましょう、罪悪感を覚えている、と。
たとえ一方的につきまとわれただけとは言え、このひと月、ずっと関わってきました。その相手のことをかけらも知ろうとしなかったのは……やはり少し、少しだけ悪かったような気がします。
知らず、ため息が出ました。
目を伏せると、見えるのは足下に群がるねずみたち。わたくしの足を引っ掻こうとするねずみはいません。少しはソラさんの怒りも鎮まってきたのでしょうか――
「これより偽巫女を刑に処す」
全然鎮まっていませんでした! わたくしは顔を上げ、ぎょっと身をすくめました。
ソラさんが空中に掲げた謎の藁人形。それが見る間に大きくふくれあがっていきます。狭い店内の空間を埋め尽くし、天井をつくほどの背丈へと――
巨大な藁人形。心なしか、色合いがどす黒く変化しました。四肢を不自然にまげ、目も鼻も口もない顔がのっぺりとわたくしを見ます。
ソラさんは藁人形の背後に隠れ、わたくしに指をつきつけました。
「行け、我が配下よ! 偽巫女に天罰を!」
藁人形が大きく手を振り上げます。わたくしはぎゅっと目をつぶりました。ああ故郷のお父様お母様、先立つ不孝をお許しください――。
「きゃああああ!」
「……?」
悲鳴に目を開き、わたくしは仰天しました。
巨大な藁人形は、なぜかソラさんを両手で抱えると、その小さな体を空中へ持ち上げていました。
「ち、違う! 私じゃない、あっちだ――きゃあああっ! ふるな! 動かすな……!」
これは――人形が暴走した?
それとも暴走したのはソラさんの魔力?
細かいことなどどうでもいい。わたくしはねずみを踏み越え――ねずみたちはすっかり動かなくなっていました――巨大藁人形の足に組み付きました。
「放して! その子を放して……!」
がむしゃらでした。理由などありません。とにかく助けなくてはいけないと思ったのです。
足に組み付くだけでは意味がありません。わたくしは近場の魔術具を使って藁人形を殴りつけたりしてみました。
けれど藁でできた体には役に立ちません。平気な様子で、抱き上げたソラさんをがくがく振るいます。
「お、落ちる。巫女……っ!」
「大丈夫ですよ、落ちたらわたくしが受け止めますから。絶対に受け止めますから!」
わたくしはソラさんに呼びかけながら、もっといい道具はないかと焦って視線を滑らせました。
魔術具を正しく使えれば効果的なのでしょうが……あいにく、使い方の分かる道具は見当たりません。
(ああ隣国の勉強より前に魔術具の勉強をしておけばよかった!)
わたくしは必死に藁人形を攻撃しました。効き目がない、不毛な時間が一体どれだけあったのか……
「巫女、引いてくれ」
「……!」
わたくしははっとして数歩退きました。
巨大藁人形の背後、一条のきらめきが奔ります――そして、
ゴバアッ!
形容しがたい音とともに、藁人形は縦に真っ二つに割れました。
「きゃああああっ!」
掴む手がなくなり、ソラさんの体が空中に放り出されます。いけない、わたくしも届かない――! それでも思い切り手を伸ばしたわたくしでしたが、その必要もなく。
藁人形が煙となって消滅します。そして、
「まったく」
気がつけばソラさんの体は、抜き身の剣を片手に持った騎士ヴァイスに抱き留められていました。
よ、良かった……。
わたくしはソラさんの無事をたしかめ、へなへなとその場に崩れ落ちました。
「星の託宣は神聖なもの……」
女の子はドアの陰に半分隠れたまま、ぶつぶつと独り言のように言いました。
「利用するものには天罰が下る……」
「……え、えっと、あの」
「我は天にかわって罰を下す者。偽巫女にはふさわしき刑を」
天罰? 偽巫女?
何だか……最近同じようなことを何度も聞いているような、いないような。
「痛っ」
思い出しかけて、すぐに思考が四散しました。ここに来てねずみの爪がわたくしの足を引っ掻いたのです。
わたくしは反射的にねずみを蹴飛ばしてしまいました。チィ! という鳴き声と、生き物の感触がしました。罪悪感やら恐怖やらでもう訳が分かりません。
「お願い! このねずみを何とかして……!」
わたくしは女の子に向かって叫びました。どこの誰だかも分かりませんが、もうなりふり構ってはいられません。
……とりあえず騎士本人ではありませんし。
「反省、してる?」
女の子はなおも繰り返します。
「は、反省って何のことですか?」
「偽託宣を下した罪。巫女という立場を利用した罪。そして勇者の片腕たる騎士をだました罪」
「――」
……勇者の片腕である騎士を……
『だました罪』?
(騎士ヴァイスのこと?)
勇者一行に『騎士』の肩書きを持つ者は彼以外におりませんから、きっとそうなのでしょう。
でも……だます?
(わたくしが騎士を?)
そうでした。託宣を下してからこのひと月、わたくしはずっとそんな中傷にさらされているのです。
あの託宣は嘘なんかじゃない。そう叫んだとしたら――今度は困るのはわたくしです。何しろ、託宣に一番反抗しているのは、他ならぬわたくしなのですから。
だから、言われるままになっていました。仕方がないと諦め始めていました。託宣が間違いであったらと、むしろ願ってきました。
ですが……
嘘の託宣と疑われた上で、この身を害されるというのなら、話は別です!
「わたくしは偽託宣を下した覚えはありません。巫女の立場を利用などしていません。そして騎士ヴァイスをだましてもおりません」
だから、反省などできません。
思い切って言ってみると、女の子は目に見えてふくれっ面になりました。とても子どもらしい顔で。
「なぜ言うことを聞かない。これ以上お兄ちゃんにつきまとわないで!」
「お兄ちゃん……?」
驚きました。では、この女の子は――。
『妹は人形遣いなんだ』
騎士ヴァイスはたしかにそう言っていました。さっきからそれが引っかかっていたのです。でも……
目の前の女の子があまりに若かったので、すぐに『妹』とは思い至らなかったのです。
たぶん十五歳くらいは離れているのでしょうか? 少し暴走気味なところなどは、騎士の妹らしいと言えるでしょうか。
それにしても――人形遣いということは。
「このねずみはあなたが動かしているのね。どうか、やめてくれませんか」
「安心して。このねずみの爪に毒はない」
「いえ、そういう問題ではなくて……」
女の子の目つきはわたくしをにらみつけたまま。
困りました、一体どうしたら満足してくれるのでしょうか?
引っかかれた足がちりちりと痛みます。上手に話さなくては、この痛みが増えてしまいます。
(反省、すればいい……?)
なぜわたくしが、と思った直後、名案が天啓のように閃きました。
わたくしは顔を輝かせ、言いました。
「分かりました、もう今後一切お兄様とは関わりません! 心から反省してそれを守ろうと思うので、どうかお兄様にもそうお伝えください」
「嘘くさい」
びし、と妹さんはわたくしに指をつきつけました。「星の巫女が嘘をつくとは何事か」
「そんな。嘘なんかじゃ」
「そんなにお兄ちゃんが好きなの」
「いえ全くこれっぽっちも」
「嘘をつくんじゃない」
ええええ……
この子は結局何を求めているのでしょう? お兄さんを好きと言わせたいのか、お兄さんから引き離したいのか。
妹さんはようやくドア陰から姿を現しました。
胸に、人形のようなものを抱いています。人型の人形でしょうか? ねずみの精巧さとは打って変わって、まるで藁束をたばねて四肢と胴体を作っただけのような怪しい人形です。
それをしっかり抱きしめたまま、わたくしのほうまで近づいてきます。どことなく足下がおぼつかないのですが、大丈夫なのでしょうか。
「あくまでしらをきるつもりなのね。こうなればもう一つ刑を追加します」
「ちょ、ちょっと待って。わたくしの話も聞いて」
「天国のお母様お許しください。ソラは鬼になります。お兄ちゃんに近づく悪女を今ここで祓います」
突然上空に顔を向けて祈る妹さん。お名前はソラさんと言うのでしょうか。
「――?」
わたくしはふと、その言葉の内容が気になりました。
不謹慎とは思いつつ……おずおずと尋ねてみます。
「あの……お母様は?」
すると、ソラさんはわたくしをにらみつけました。
「母は五年前に魔物に殺された。それが勇者一行が旅立つきっかけだった。この国の常識、そんなことも知らないの」
「――」
五年前と言えば、わたくしはまだ隣町の実家で暮らしていました。だから王都のことには詳しくありません。
けれど、
(そう言えば……勇者様の近しい人が亡くなって、それが魔王討伐のきっかけになったって)
シェーラから、そんな話は聞いていました。
勇者様にはご両親がいません。だから、幼なじみの騎士の親御さんが、親代わりのようなものだったとか。
でも彼女はそれ以上詳しく話してくれませんでした。気まぐれなのか、何かを遠慮していたのか――。
「そう……」
わたくしは急激に心が落ち込むのに気づきました。
(騎士ヴァイスにお母上はいない。……そんなことも知らなかった)
それどころかわたくしは騎士のことをほとんど知りません。
当然と言えば当然です。知ろうと思うどころか、縁を切ろうとしてきたのですから。
二度と顔を見たくないと何度思ったことか。そんな相手の事情など知る必要はありません。知ってはいけません。
知れば――情が湧きます。
(あ、あの人だって、わたくしのことをろくに知ろうとしていない。修道院のしきたりさえ知らなかったんだから、おあいこで――)
……いつの間にか。
言い訳じみた言葉ばかり連ねていることに気づき、わたくしははたと止まりました。
そして、さらに落ち込みました。――相手をおとしめてまで、なんてみっともない心の動き。
もう認めてしまいましょう、罪悪感を覚えている、と。
たとえ一方的につきまとわれただけとは言え、このひと月、ずっと関わってきました。その相手のことをかけらも知ろうとしなかったのは……やはり少し、少しだけ悪かったような気がします。
知らず、ため息が出ました。
目を伏せると、見えるのは足下に群がるねずみたち。わたくしの足を引っ掻こうとするねずみはいません。少しはソラさんの怒りも鎮まってきたのでしょうか――
「これより偽巫女を刑に処す」
全然鎮まっていませんでした! わたくしは顔を上げ、ぎょっと身をすくめました。
ソラさんが空中に掲げた謎の藁人形。それが見る間に大きくふくれあがっていきます。狭い店内の空間を埋め尽くし、天井をつくほどの背丈へと――
巨大な藁人形。心なしか、色合いがどす黒く変化しました。四肢を不自然にまげ、目も鼻も口もない顔がのっぺりとわたくしを見ます。
ソラさんは藁人形の背後に隠れ、わたくしに指をつきつけました。
「行け、我が配下よ! 偽巫女に天罰を!」
藁人形が大きく手を振り上げます。わたくしはぎゅっと目をつぶりました。ああ故郷のお父様お母様、先立つ不孝をお許しください――。
「きゃああああ!」
「……?」
悲鳴に目を開き、わたくしは仰天しました。
巨大な藁人形は、なぜかソラさんを両手で抱えると、その小さな体を空中へ持ち上げていました。
「ち、違う! 私じゃない、あっちだ――きゃあああっ! ふるな! 動かすな……!」
これは――人形が暴走した?
それとも暴走したのはソラさんの魔力?
細かいことなどどうでもいい。わたくしはねずみを踏み越え――ねずみたちはすっかり動かなくなっていました――巨大藁人形の足に組み付きました。
「放して! その子を放して……!」
がむしゃらでした。理由などありません。とにかく助けなくてはいけないと思ったのです。
足に組み付くだけでは意味がありません。わたくしは近場の魔術具を使って藁人形を殴りつけたりしてみました。
けれど藁でできた体には役に立ちません。平気な様子で、抱き上げたソラさんをがくがく振るいます。
「お、落ちる。巫女……っ!」
「大丈夫ですよ、落ちたらわたくしが受け止めますから。絶対に受け止めますから!」
わたくしはソラさんに呼びかけながら、もっといい道具はないかと焦って視線を滑らせました。
魔術具を正しく使えれば効果的なのでしょうが……あいにく、使い方の分かる道具は見当たりません。
(ああ隣国の勉強より前に魔術具の勉強をしておけばよかった!)
わたくしは必死に藁人形を攻撃しました。効き目がない、不毛な時間が一体どれだけあったのか……
「巫女、引いてくれ」
「……!」
わたくしははっとして数歩退きました。
巨大藁人形の背後、一条のきらめきが奔ります――そして、
ゴバアッ!
形容しがたい音とともに、藁人形は縦に真っ二つに割れました。
「きゃああああっ!」
掴む手がなくなり、ソラさんの体が空中に放り出されます。いけない、わたくしも届かない――! それでも思い切り手を伸ばしたわたくしでしたが、その必要もなく。
藁人形が煙となって消滅します。そして、
「まったく」
気がつけばソラさんの体は、抜き身の剣を片手に持った騎士ヴァイスに抱き留められていました。
よ、良かった……。
わたくしはソラさんの無事をたしかめ、へなへなとその場に崩れ落ちました。
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